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鍛治王・トラゴルド


サテンたちはグランバルド王国の重厚な門をくぐり、国王・鍛治王トラゴルドに謁見する許可を得た。

この国には昔から妙な噂があった。「王は不在だ」と。しかし、どの時代を見ても常に鍛治王は存在し続けていた──まるで不変の存在のように。


閉鎖的な国と聞いていたが、街並みは意外にも活気に溢れていた。石造りの家々が並び、金属を打つ音が至るところから響く。だが道を歩けば、酔い潰れたドワーフたちが絡んでくる。

「おい、人間の坊主!酒の一杯くらい奢ってけ!」

「お前の連れの娘、可愛いな! 俺と一緒に来い!」


言いたい放題だが、同行していた門番はまるで見て見ぬふりをしていた。殴り合い寸前になると、ようやく割って入る程度だ。

サテンたちは眉をひそめながらも進み、やがて城へと辿り着いた。


城は壮大で、岩をも削り鍛えたような荘厳な建造物だった。まさに鍛治の民の誇りを象徴する要塞のような城だ。

その光景を目にし、サテンたちは圧倒される。

「……やはり変わらぬな。」

ドルガンは懐かしげに呟いた。彼がこの国を後にしてから、すでに二千年の時が経っていた。


謁見に先立ち、まずは持ち物検査を受けることになった。体を服越しにくまなく調べられ、武器があれば取り上げられる。

しかし、奇妙なことにドルガンとセレナだけは検査もなく、そのまま謁見の間へ通された。


サテンが検査を受けている時、胸元から一つの品が見つかった。

──ドルガンから託された紋章のペンダント。


憲兵の目が釘付けになった。

「こ、これは!この紋章は……!」

ざわめきが広がり、一人の憲兵が慌てて駆け出す。報告に行ったのだろう。


次の瞬間、武装した憲兵たちがなだれ込むように押し寄せた。

「貴様ら! このペンダントをどこで盗み出した!」

サテンたちは抵抗する間もなく押さえ込まれ、縄で縛られた。


「ま、待ってくれ! それは盗んだものじゃない、ドルガンから──」

必死に弁明するも、憲兵たちは耳を貸さなかった。

「黙れ! 罪人め!」


そのままサテン、サナ、ユール、マイナは地下牢へと引き立てられ、鉄格子の奥へ放り込まれた。


残されたドルガンとセレナの行方は──まだ誰にも分からなかった。


冷たい石の床に閉じ込められたサテンたち。地下牢は湿った空気と鉄錆の匂いで満ちていた。灯りはわずかな松明だけで、影が不気味に揺れている。


「……な、何がどうなってるの?」

マイナが怯えた声を漏らす。


「さっきのペンダント……あれが原因だろうな。」

ユールが低い声で答えるが、その顔も困惑に満ちていた。


サナは鉄格子を掴みながら叫ぶ。

「どうしてなの! 盗んだなんて言われて……私たちは何もしてないのに!」


サテンも理解できなかった。

(ドルガンから確かに受け取った。……だが、あの憲兵たちの態度は尋常じゃなかった。まるで禁忌の品を見たかのように……)


重い沈黙が流れる。状況が読めないまま、心の中には焦りと不安だけが募っていく。


しばらくすると、牢の前に憲兵が現れた。

「尋問の時間だ。まずはお前だ。」


憲兵の指がサテンを指し示す。鉄格子が軋みを立てて開かれ、サテンは腕を掴まれながら引き立てられていった。


「サテン!」

「気をつけて!」

仲間たちの声を背に、サテンは重い扉の向こうへと連れて行かれる。


暗い通路を進んだ先には、粗末な木の机と椅子だけが置かれた部屋があった。

そこに待ち構えていたのは、無表情な憲兵たち。そして中央に座る一人の審問官。


「名を名乗れ。」

低く冷たい声が響く。


サテンは深呼吸をして、名を告げた。

だが、審問官の視線はその胸元に突き刺さる。

「そのペンダント……どこで手に入れた?」


重い尋問が、いま始まろうとしていた。


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