表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/9

ラウンド4:権力への反逆・誰と、どう戦ったのか?

(スタジオ内。幕間の休憩が終わり、対談者たちはそれぞれの席に戻っている。先ほどの激論の熱気は少し和らいだが、どこか互いへの理解が深まったような、それでいて緊張感も残る空気が漂っている。)


あすか:「さて、『SalondesÉtoilesPerdues』でのひととき、いかがでしたでしょうか?時空を超えた語らいで、少しはリラックスできましたか?」


(あすかは、にっこりと微笑みかける)


あすか:「激しい議論を経て、皆さまの様々な側面が見えてまいりましたが…いよいよ、この歴史バトルロワイヤルも最終ラウンドへと向かいます」


あすか:「最後のテーマは、こちらです!」


(背景モニターに「ラウンド4:権力への反逆・誰と、どう戦ったのか?」という文字が重々しく映し出される)


あすか:「皆さまは、それぞれの時代で、強大な『権力』と対峙してきました。それは、皆さまの人生を大きく揺さぶり、そして歴史にその名を刻む決定的な要因となりました。最終ラウンドでは、その『権力』との戦いについて、そして『反逆者』として生きたことへの思いを、改めて伺いたいと思います」


あすか:「まずは…やはりこの方からでしょう。五右衛門殿!あなたは時の天下人、豊臣秀吉に真っ向から喧嘩を売った…少なくとも、世間からはそう見なされたわけですが、あなたにとって『権力』とは、そして最大の敵とされた秀吉とは、一体どのような存在だったのでしょうか?」


石川五右衛門:(杯に残った濁り酒をくいっと飲み干し、不遜な笑みを浮かべる)「権力?ハッ!そんなもん、力で奪い取るか、力でねじ伏せられるかのもんだろうが。難しく考えるこたぁねぇ」


(五右衛門は、足を組み、ふてぶてしい態度で続ける)


石川五右衛門:「秀吉が天下人?だからどうしたってんだ。元は尾張の百姓上がり、成り上がり者の猿じゃねぇか。たまたま運が良かっただけよ。俺から見りゃ、図体がデカくなっただけの、同じ穴のムジナだ。奴が大名どもから巻き上げた宝を、俺がちょいと横取りしたところで、何の不思議もねぇだろう?反逆?違うね、嬢ちゃん。俺はただ、俺よりデカいツラしてる奴が気に食わなかった。ただそれだけのことよ!」


鼠小僧次郎吉:(苦笑しながら)「親分は、相変わらず怖いもんなしでさぁ…」


ロビン・フッド:(呆れたような、しかしどこか面白そうな表情で)「君のその豪胆さ、ある意味では羨ましい限りだな…」


あすか:「五右衛門殿らしいですねぇ…。では、鼠小僧さん。あなたは武家屋敷専門の盗人でしたが、これは幕府という、当時の日本の『権力』そのものへの反抗心からだったのでしょうか?それとも、もっと個人的な理由が?」


鼠小僧次郎吉:(少し困ったように頭を掻きながら)「いやいや、反抗心だなんて、そんな大層なもんじゃねぇですよ、案内人さん。あっしは五右衛門の親分みてぇに、天下国家をどうこうしようなんて、これっぽっちも考えちゃいねぇですから」


(鼠小僧は、少し照れくさそうに続ける)


鼠小僧次郎吉:「ただ、まあ…威張り散らしてるお武家様ってのが、どうにもこうにも気に食わなかっただけでさぁ。こちとら毎日汗水たらして働いても、その日食べるのがやっとだってのに、お武家様方はろくに働きもしねぇで、良い着物着て、偉そうにしてる。それがシャクに障った。だから、ちょいと意趣返ししてやろう、鼻を明かしてやろう、くらいのもんよ。幕府をひっくり返そうだなんて、そんな恐ろしいこと、考えたこともねぇや。まあ、結果的に、お上の面子を丸潰れにしちまったかもしれねぇがね、へへっ」


石川五右衛門:(小さく呟く)「意気地がねぇ野郎だ…」


ロビン・フッド:(考察するように)「いや、あるいはそれこそが、名もなき民衆の、ささやかだが切実な抵抗の形なのかもしれないな…」


あすか:「鼠小僧さんらしい、ある意味で等身大の反抗、ですかね。一方、ロビン様は、明確にノッティンガムの代官やジョン王子といった『権力者』と敵対されました。その戦いは、先ほども熱く語られましたが、まさに『正義』のため、『民衆』のためだった、ということでよろしいですね?」


ロビン・フッド:(迷いなく、力強く頷く)「そうだとも。彼らは正当な王の名を騙り、法を捻じ曲げ、私利私欲のために民を苦しめていた。それは断じて許されることではない。我々の戦いは、単なる個人的な復讐や、盗賊行為ではないのだ。不当な権力に対する『抵抗』であり、奪われた人々の権利と自由を取り戻すための、正義の戦いなのだ」


(ロビンは、スタジオの全員に語りかけるように続ける)


ロビン・フッド:「たとえ時の権力者から『反逆者』と呼ばれようとも、我々はこの戦いをやめるわけにはいかない。我々が諦めれば、虐げられた民衆の最後の希望は潰えてしまうのだから。私は、その一点において、決して信念を曲げるつもりはない」


ジェシー・ジェイムズ:(ロビンの言葉を聞きながら、静かに目を伏せる)「……正義、か…」


石川五右衛門:(興味なさそうに、軽く欠伸をする)


あすか:「ロビン様の揺るぎない信念、しかと受け止めました。では最後に、ジェシーさん。あなたは南北戦争に敗れた南部の人間として、勝利した北部政府や、その意を受けたピンカートン探偵社、そして銀行や鉄道会社といった、ある意味で近代的な『権力』、あるいは『システム』そのものと対峙しました。その孤独な戦いは、あなたにとって、どのような意味を持っていたのでしょうか?」


ジェシー・ジェイムズ:(ゆっくりと顔を上げ、ウィスキーグラスをテーブルに置く。その声には、深い疲労と、しかし消えない炎のようなものが宿っている)「意味、か…」


(ジェシーは、遠い過去を振り返るように語り始める)


ジェシー・ジェイムズ:「最初は、ただの復讐だったのかもしれん。戦争で仲間を殺され、故郷を蹂躙したヤンキーどもへの、どうしようもない怒りだ。だが、それだけじゃなかった。俺たち…破れた南部の人間としての、最後の意地…プライドもあったんだろう。俺たちは、ただ奪われるだけの存在じゃないんだと。俺たちのやり方で、この理不尽な現実に抵抗する力があるんだと、示してやりたかったのかもしれん。たとえそれが、血塗られた法に背く道であったとしてもな」


(ジェシーは、握りしめた拳を見つめる)


ジェシー・ジェイムズ:「だが…その代償は、あまりにも大きかった。多くの仲間を失い、愛する家族までも危険に晒した…。結局、俺たちは、システムに抗うことなどできない、ただの『無法者』として追われ、犬死にする運命だったのかもしれん…。権力という巨大な壁の前では、個人の力など、あまりに無力だ…」


(彼の言葉には、深い諦念と、しかしどこか誇りのような響きも含まれている。)


あすか:(静かに頷き、問いかける)「権力への反逆…それは、皆さまの人生に大きな影を落としたと同時に、良くも悪くも、皆さまを歴史に名を刻む特別な存在へと押し上げました。『反逆者』として、あるいは『アウトロー』として語り継がれることについて、今、改めて、皆さまはどう思われますか?」


石川五右衛門:(即座に、いつもの不遜な笑みで)「反逆者?結構じゃねぇか!大悪党として、末代まで名を残す方が、そこいらのつまらねぇ凡俗で終わるより、よっぽど面白い人生ってもんだろうよ!俺の名を聞いて、震え上がる奴がいる限り、俺は生き続けるのさ!」


鼠小僧次郎吉:(照れくさそうに)「反逆者ねぇ…どうも大袈裟で、しっくりこねぇなぁ。まあ、名前が残っちまったのは、悪い気はしねぇけどよ。ただの盗っ人って言われるよりは、ちっとは格好がつくかねぇ」


ロビン・フッド:「『反逆者』というレッテルは、決して本意ではない。だが、もし我々のささやかな行いが、後の世の人々が不正な権力に立ち向かう、ほんの少しの勇気や希望となったのなら…我々の森での戦いは、決して無駄ではなかったのだろう。そう信じたい」


ジェシー・ジェイムズ:(静かに、しかし強い意志を込めて)「どう思おうと、俺たちがやってきた事実は変わらん。俺は法を破り、多くの血を流した。それが『反逆者』と呼ばれる所以なら、甘んじて受け入れよう。だがな…俺たちの物語が、いつも勝者によってのみ語られる歴史の、ほんの少しの『異議申し立て』になったのだとしたら…それで、いい」


あすか:(深く頷き、ゆっくりと全員を見渡す)「ありがとうございます…。天下人、幕府、領主、そして近代的な国家と資本…。皆さまが対峙した『権力』の形は様々でした。そして、その『反逆』に込められた動機も、意味合いも、それぞれに深く、重く、そして複雑なものでした」


あすか:「皆さまの生き様は、単なる犯罪者の記録として片付けられるものではなく、それぞれの時代の社会や権力のあり方に対する、痛烈な問いかけであったのかもしれません。そして、その問いは、形を変えながらも、あるいは今もなお、この現代を生きる私たちにも、強く響き続けているのではないでしょうか…」


(あすか、感慨深い表情で、最終ラウンドの終わりを告げる)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ