表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/9

ラウンド1:「アウトローへの道・なぜ、その選択をしたのか?」

(スタジオ内。オープニングの興奮が少し落ち着き、対談者たちがそれぞれの席で司会者あすかに注目している。)


あすか:「さて、皆さま、ウォーミングアップは済みましたでしょうか?最初のラウンドにまいりましょう!改めまして、ラウンド1のテーマは…こちら!」


(背景モニターに「ラウンド1:アウトローへの道・なぜ、その選択をしたのか?」という文字が映し出される)


あすか:「皆さまが、その輝かしい…あるいは、ちょっぴりダークな?キャリアをスタートさせたきっかけ、その原点に迫りたいと思います。どんな時代に生まれ育ち、何が皆さまを、法を踏み越えるその道へと突き動かしたのでしょうか?」


あすか:「まずは…ジェシー・ジェイムズさん、あなたから伺ってもよろしいでしょうか?あなたの生きた時代は、アメリカが南北に分かれて戦った、あの南北戦争の直後。その大きな時代のうねりが、あなたの人生に決定的な影響を与えたと聞いています」


ジェシー・ジェイムズ:(帽子のつばに指をかけ、少しだけ持ち上げる。鋭い目がスタジオのライトを反射する)「……戦争、か。そうだな」


(ジェシーは、ゆっくりと、だが確かな口調で語り始める。その声には、抑えきれない感情が滲む)


ジェシー・ジェイムズ:「俺はミズーリの生まれだ。若かった頃、クァントリル…ウィリアム・クァントリルの部隊に加わった。南軍のゲリラだ。北軍…ヤンキーどもと戦った」


(ジェシーの脳裏には、当時の光景が蘇っているかのようだ。遠い目をして、言葉を続ける)


ジェシー・ジェイムズ:「俺たちは故郷を、家族を、南部の誇りを守るために戦ったつもりだった。だが…結局、負けた。そして戦後、俺たち南部の人間は『反逆者』のレッテルを貼られ、ヤンキーどもに全てを奪われたも同然だった。土地も、財産も、そして何より…尊厳もな」


石川五右衛門:(腕を組み、興味深そうに頷く)「ほう、負け戦か。そりゃあ、辛酸を舐めたろうな」


ジェシー・ジェイムズ:(五右衛門を一瞥し、再び前を向く)「……普通の生活なんて、望むべくもなかったのさ。ヤンキーどもが作った法律、ヤンキーどもが経営する銀行や鉄道会社が、俺たちから搾り取るばかりだった。俺たちに残された道は…そう多くはなかった。奪われたものは、奪い返す。俺たちは、銃でそうするしかなかったのかもしれん…」


あすか:「戦争という大きな悲劇が、その後の人生を決定づけた…重いお話、ありがとうございます、ジェシーさん。……一方、ロビン・フッド様。あなたの時代、中世イングランドもまた、民衆が圧政に苦しんでいたと聞きますが、そのあたり詳しくお聞かせいただけますか?」


ロビン・フッド:(ジェシーに同情的な視線を向けた後、姿勢を正して語り始める。その声には、確固たる信念が感じられる)「そうだとも、ミス・アスカ。我らが偉大なるリチャード獅子心王が、聖地奪還のため十字軍遠征に出ておられた間、その弟であるジョン王子や、ノッティンガムの代官のような強欲な貴族たちが、好き放題に権力を振るっていたのだ」


鼠小僧次郎吉:(小声で)「へぇ、どこの国でも役人ってのは似たようなもんだねぇ…」


ロビン・フッド:(鼠小僧の声が聞こえたのか、少し笑みを浮かべて)「彼らは重い税を取り立て、庶民が森で狩りをすることさえ禁じる『森林法』で人々を縛り付け、苦しめていた。私自身も、些細なことで濡れ衣を着せられ、不当に貴族の地位と領地を奪われ、お尋ね者としてシャーウッドの森へ逃れるしかなかったのだ」


(ロビンは拳を軽く握りしめる)


ロビン・フッド:「だが、森で私と同じように虐げられた仲間たち…リトル・ジョンや、ウィル・スカーレットといった『メリーメン(陽気な仲間たち)』と出会い、共に立ち上がることを決意した。飢え、嘆く人々の涙を見過ごすことは、私にはできなかったのだ。我々が奪うのは、貴族や悪徳な聖職者が不当に蓄えた富だけ。そして、それを本当に必要としている貧しい人々に分け与えることこそ、我々の信じる真の正義なのだよ」


石川五右衛門:(フン、と鼻で笑う)「正義、ねぇ…。綺麗事を言うじゃねぇか、異国の旦那」


ロビン・フッド:(五右衛門を真っ直ぐ見据え)「綺麗事ではない。我々の信念だ」


あすか:「正義のための戦い…ロビン様、熱い思い、ありがとうございます。さて、ところ変わって、江戸の日本へまいりましょう。鼠小僧さん!あなたの場合は、ロビン様のような大義名分というよりは、もっとこう…身近な、日常的な不満がきっかけだったりするのでしょうか?」


鼠小僧次郎吉:(ポリポリと頭を掻きながら、江戸っ子口調で)「へへっ、正義だの信念だの、そんな大層なもんじゃねえよ、あっしの場合は。ロビンのお大尽には悪いがね」


(鼠小僧は、少し身を乗り出して語り始める。その口調は軽いが、当時の生活感が滲み出ている)


鼠小僧次郎吉:「生まれかい?そりゃあ、江戸の裏長屋よ。どこにでもあるような、ごちゃごちゃしたとこさ。若い頃は鳶やら芝居小屋の大道具方やら、日雇いの仕事でなんとか食いつないでた。けどよぉ、いくら真面目に汗水たらして働いたって、暮らしは一向に楽にならねぇ。その日暮らしだ。一方で、御城勤めの武士の旦那方はどうだい?偉そうにふんぞり返って、綺麗な着物着て、毎日美味いもん食ってやがる」


(少し皮肉っぽい笑みを浮かべる)


鼠小僧次郎吉:「ある晩、大きな武家屋敷の塀を見上げながら、ふと思ったんだよ。『あのいかめしい蔵の中には、俺たちが一生かかっても稼げねぇような大金が、ゴロゴロ眠ってるんじゃねぇか』ってね。…で、まあ、出来心ってやつよ。ちょいとその夜、腕試しに…と忍び込んでみたら、思ったよりあっさり拝借できちまったってわけよ。いやぁ、あの時のドキドキは忘れられねぇなぁ!スリルってやつかい?癖になっちまったのさ!」


石川五右衛門:(ニヤリと笑う)「ほう、テメェ、見所があるじゃねぇか。その度胸、気に入ったぜ!」


鼠小僧次郎吉:(五右衛門にそう言われ、まんざらでもない表情)「へへ、親分に褒められちゃ光栄でさぁ」


あすか:「なるほど、江戸の世知辛さと、ほんの少しの出来心、そしてスリルがきっかけ…人間味あふれるお話ですねぇ。では、最後に!真打ち登場、五右衛門殿!あなたの生きた安土桃山時代は、まさに戦国乱世。昨日の友は今日の敵、下剋上が当たり前の時代でした。その激動の時代そのものが、あなたを『天下の大泥棒』へと駆り立てたのでしょうか?」


石川五右衛門:(待ってましたとばかりに、どかっと椅子にふんぞり返り、豪快に笑う)「ハッハッハ!下剋上、結構じゃねぇか!力がなけりゃ生き残れねぇ、実に分かりやすい、いい時代だったぜ!」


(五右衛門は、他のメンバーを見回し、その声は自信に満ち溢れている)


石川五右衛門:「俺の出自なんざ、どうだっていいだろうよ。伊賀の抜け忍だとか、どっかの武家の落とし胤だとか、後世の奴らが好き勝手に言ってるだけだ。そんなこたぁどうでもいい!確かなのは、この俺には力が、そして誰にも真似できねぇ技があったってことだ!」


(自分の腕を叩く)


石川五右衛門:「弱い奴は強い奴に食われる。それが戦国の世の習いよ。虫けらみてぇに死んでいく奴らを散々見てきたわ。だったら、俺は誰よりも強い『盗人』になって、この世の全てを食い物にしてやろうと思っただけよ!欲しいものは力ずくで奪う!大名の城だろうが、南蛮渡来の宝だろうが、天下人の黄金の茶釜だろうがな!小せえことでクヨクヨ悩んでる奴らを見ると、反吐が出るぜ!」


鼠小僧次郎吉:(目を丸くして)「ひえー…スケールが違いやすねぇ、親分は…」


ロビン・フッド:(少し眉をひそめ、五右衛門の言葉に複雑な表情を見せる)「力こそが全て、か…」


ジェシー・ジェイムズ:(それまで無表情だったが、初めて五右衛門を真正面からじっと見つめる。その目には、ある種の共感か、あるいは警戒の色が浮かんでいる)「…………」


あすか:(感嘆の息を漏らしながら)「ありがとうございます、五右衛門殿!まさに乱世が生んだ怪物…いえ、英雄と呼ぶべきでしょうか…!」


(あすか、一呼吸置いて、スタジオ全体を見渡す)


あすか:「戦争、圧政、貧富の差、そして力こそが全ての時代…皆さま、それぞれに過酷な時代背景と、そこから生まれた、抗いがたい強い思いがあったのですね。社会の構造的な矛盾や、理不尽な権力への反発という点では、どこか共通する響きも感じられますが、その動機はロビン様のような『正義』から、五右衛門殿のような『力への渇望』まで、実に様々…。」


あすか:「さて、そんな皆さまが選んだ『アウトロー』としての生き方。その具体的な『仕事ぶり』、つまり犯行の手口やスタイルには、一体どんなこだわりや、譲れない『美学』があったのでしょうか?次のラウンドで、そのあたりをさらに深く、突っ込んで伺っていきましょう!」


(あすか、にっこりと微笑み、次のラウンドへの期待感を高める)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ