表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

詩集:青空なき獄中の記

多脚多面の象

作者: 歌川 詩季

 ガネーシャも好きです。

 事実は 草原に一頭きりの象だ


 (ひざ)(きし)ませ

 (かかと)を食い込ませ

 爪先(つまさき)を向ける

 幾つもの脚をもち


 鼻を伸ばし

 牙を生やし

 耳を垂らす

 幾つもの顔を持つ


 事実は 多脚多面の象だ



 踏み(なら)した地に

 幾つもの(ひざ)を ぎしぎし(きし)ませ

 幾つもの(かかと)を ずっしり食い込ませ

 幾つもの爪先(つまさき)を ほうぽうに向け


 他人のようなつらをした

 隣の顔と 伸ばした鼻を絡めあう

 隣の顔と 生やした牙を突き立てあう

 隣の顔と 垂らした耳に囁きあう



 事実は 草原に一頭きりの象だ


 事実は 多脚多面の象だ


 その姿を捉えようと

 思い思いの 顔を選んで

 思い思いの 表情を拾って

 思い思いの 方角から

 思い思いに 切り取って

 人々は 手にした(ゆが)んだ鏡に 映しては持ち去る



 事実は 草原に一頭きりの象だ

 異なる個体と相容(あいい)れることはない


 真実は 百様百意の像だ

 (ゆが)んだ断片を持ち寄っても 多脚多面の全貌は(えが)けない


 事実は 多脚多面の象だ

 たった一本の 尻尾を握ることは叶わない

 客観的事実と。

 主観的真実と。


※ 下↓にリンクがあります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【企画提案】
立花 優先生
― 新着の感想 ―
[良い点] いつも上手い詩です。これからも、続きます。頑張って下さい。 [気になる点] 無 [一言] 無
[良い点] 一頭きりの象はいるのか? いても藪の中か?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ