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その36 ✤ベアトリスの危惧

【第2章】赤い薔薇と白い薔薇


36話 ✤ベアトリスの危惧

挿絵(By みてみん)

※セシリーとベアトリスの関係をよりご理解いただけるよう家系図にしました。本文と共にお楽しみ下さい。


 ベアトリスはもちろん、この数年に渡りエドムンド達の父ヨーク公リチャードと自分の親族であるランカスター家のヘンリー6世が揉めているのは知っていた。


 ベアトリスも、彼女の父ジョージはヘンリー5世の庶子の息子なのだということも知ってはいたのだが、曽祖父であるヘンリー5世に会ったことがあるのかどうかは記憶にはない。だいたい今の国王ヘンリー6世は、彼女の祖父ジョンから見ると腹違いの弟であり、ベアトリスにとっては叔祖父(おおおじ)に当たるのだが、叔祖父(おおおじ)だからといって現国王であるヘンリー6世には、もちろん会ったことすらなかった。


 ヘンリー6世にとって甥に当たるベアトリスの父ジョージですら、国王には会っていなかったのだから。


 いずれにしても庶子の家系と本家ではまるで違う立場であり、国王ヘンリー6世が自分達のことを認識していたかどうかもわからない。多分彼の耳には彼女達の存在については知らされていなかったのではないか、と推測される。


 父ジョージと母テレサは共にランカスター家のジョン・オブ・ゴーントの血を引き、母はポルトガル王家の血筋でもあるが、母自身も元ポルトガル国王ドュアルテ1世の庶子であった。母テレサは現ポルトガル国王アフォンソ5世の腹違いの姉に当たる。


 父はイングランドの王家、母もやはりポルトガルの王家出身ではありながら、共に庶子ということで、必要以上に大切にされない代わりに、多大な干渉も受けず、伸び伸びとした子供時代を過ごしていたところがお互いに似ていて惹かれたのかもしれない。


 父も母はランカスター家のジョン・オブ・ゴーントの娘のフィリッパが共通の先祖であり、そういうわけで6歳位から一族の会合で顔を合わせる機会も、共に過ごす機会も多く、そのうちに恋に落ちてしまったという。


 母テレサはドゥアルテ王の弟ペドロ王子が修道会へ入るように手配していたし、一方ジョージも父ジョンによって婚姻が決められていたため、お互いに結婚はできないと考え、一夜の契りを結んだことからベアトリスを授かり、最終的に腹違いの弟であるアフォンソ5世が、庶子の姉を不憫に思い2人の婚姻を許可したのだ。テレサの父ドゥアルテ王はその4年前には亡くなっていたので、強く反対や賛成する親族も彼女にはもういなかった。


「私もお父様も庶子出身だったことが幸いしたのですよ」と、母テレサはいつも言っていた。


「王族として生きるよりも、このように親子三人でひっそりと仲良く暮らしていけることの方がどれだけ幸せか」と母テレサは口癖のように言っていて、それはイングランドのラドロー城からフランドルへ逃亡した後のベアトリスの生活の指針ともなっていた。


 実際百年に渡って続いていた、イングランドとフランスの戦争では親族同士すら信用できない、王族であれば尚更、ということを当時の王族や貴族の女性達は身にしみて感じていたのだ。


 なので、父も母も共に王位継承権は破棄し、その代わりに宮廷から暮らしに困らないだけの年金を貰ったので、もうそれだけで充分だった。


 ドュアルテ1世の偉大なる父王ジョアン1世の母テレサ・ロレンソの名前をもらったベアトリスの母テレサは父ドュアルテ1世にも愛され育ったという経緯もあり、ポルトガル王室からの援助もあり、親子3人の暮らしは貴族としての対面を保つことができる程であり、王族の責任も期待もない代わりに非常に平和な生活を送っていたのだった。


 しかし、彼女が8歳の時、身体の弱かった両親が立て続けに亡くなってしまい、それでこのラドロー城に預けられることになった。


 ここにはセシリー・ネヴィルがいたからだ。


 テレサの父ドュアルテ1世同様に、セシリー・ネヴィルもまたランカスター家のジョン・オブ・ゴーントの孫である。


 ただしドュアルテ1世の母はジョン・オブ・ゴーントの正妻のブランシュの娘フィリッパだが、セシリー・ネヴィルは3人目の妻キャサリン・スウィンフォードの娘の子供だった。キャサリン・スウィンフォードは愛人から妻になったため、子供達はほとんど庶子扱いを受けていた。


 自分も庶子上がりの一門出身のセシリー・ネヴィルは、このやはり庶子出身の可哀想な少女を同じジョン・オブ・ゴーントの血を引く者として放っておけなかった。


 それにジョン・オブ・ゴーントから考えれば、セシリーに比べて、ベアトリスの方が本家により近いとさえ言えるのだから、そのような血筋の彼女を助けることは自分の使命とさえ考えたのだ。


 自分の父がかつて行く先を無くした夫リチャードを子供時代に養育したように、信心深い彼女は是非自分も善行を行いたいという強い希望もあったのだ。


 ……と、このような経過でヨーク家に来たベアトリスではあったが、流石にこの時には不安がよぎる。


 「もし万が一、ランカスター家がヨーク家に酷いことをするようになったら、その時は一体私はどこへ行けばいいのだろう」


  両親が健在の時から、ほとんど付き合いのなかったヘンリー6世国王一家より、もう4年余り、自分が過ごしてきたたこのラドロー城のヨーク家の家族の方がベアトリスには大切だった。


 しかしながらこの心配はベアトリスの危惧に終わる。幸いにも1455年5月の両家の最初の「第一次セント・オールバンズの戦い」で勝利を収めたのはヨーク家だったのだから。




Copyright(C)2022-kaorukyara

 今回様々な事情からベアトリスの両親の設定と、そしてエドワード4世の設定を変更しました。エドワード4世を史実に近い様子で登場させることにしました。

色々とアイデアはあったのですが、物語を「史実に基づいた」と謳っている以上、あまりに違う話にすることに途中から段々と抵抗を感じてしまったのです。


 なので、今まで読んで下さっていた皆様は、エドワード4世について「えっ? なんで」と思われることもあるでしょう。どうかお許しください。

 また史実と言いながらも、ベアトリスの両親はじめ、ベアトリスに関しては全くの私の創作になりますので、どうかこちらもご理解下さいませ。

ベアトリス同様に、アリシアとセシリアも創作上の人物になります。



 しばらく週に1度木曜日の日本時間21時の公開予定です。



 またベルギーに近いドイツ在住の地の利を生かして、InstagramやTwitterではマリー・ド・ブルゴーニュのゆかりの地ベルギーのブルージュで見かけた、マリー姫に関連するものをご紹介していきます。


この物語と合わせてお楽しみ下さい。



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