表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能と迷宮で青春を!  作者: 銀之蒸
試練と正義の英雄編
94/103

第83話 十一の対策-3

 二人が体育館へと上がっていくと、つい先程話していた修行をしている三人がいた。


 その練度はといえば、雅也はしっかりとは掴めていない感じで逆に他の二人は暁人の想像以上に綺麗に組み上げられている。


(んー…やっぱある一定程度の性質の差はあるかもな。どれだけ組めても元の直方体をより縮めたりは出来ないし。精度としてはいいんだけど圧縮度としてみると微妙だな。)


 と、冷静にその技量をはかっていると六花と菜月が声をかける。


「おかえり。暁人、聖。」


「作戦会議をする準備はできた?」


 と。二人が割と全力の手合わせをしていたことを露ほども知らぬ二人は無邪気に聞く。


「さーて。具体的な策が俺に何かあるわけでもないし。計りたいことは大概計れたんだろ?ひじりん。」


「まぁな。少なくともお前をヘラクレスに当てることには賛成さ。」


「だそうです。」


 と、暁人は聖に説明をさせさも自分の意見のように示す。


「んー…ってことは?」


「とりあえず、対ヘラクレス戦において俺は確定ってことだ。」


「さっきと同じこと言ってるわよ?」


 六花が聞き、暁人が答えて菜月がツッコむ。まぁ、有り得なくはないよね?


 それはそれとして。と、六花は聞く。


「私はどこに置かれるの?」


「んー…家畜小屋?」


「家畜小屋?」


「家畜小屋。」


 10秒ほどフリーズする六花。…って。


「なんで!?」


 ごもっとも。なーんの話も理解せずに家畜小屋とだけ言われたらそりゃそうなる。


 えーっと…となってる聖に変わって暁人が説明する。


「んーと、クッソ汚い小屋の掃除をしなきゃなんないんだけど。訳分からんぐらいの水の量使うんだよ。少なくとも神話上の正攻法ではね。」


「そうそう。多分だけど、これ攻略するなら正攻法だと六花か…何人かの五行を一点集中させるか、神話通り川の流れを愛とかにでも変えさせるか…まぁそうなるんだよ。邪道なら全て焼き尽くすとかできるけど。」


「掃除どころか、家畜小屋ごと無くすってお前なぁ。」


 リアルにヤケ糞なんだが?と暁人の小ボケをガンスルーして聖は言う。


「それに、他の所の適正って結構どうにか出来るものも多いんだよ。場合にはよるけども。」


「そうそう。六花にしか頼めない所なのよ。お願いしていいかい?」


「えー…じゃあ、しょうがないなぁ…。」


 代わりにファッションショーだからね?


 と、謎の脅しに対して微笑を浮かべる暁人と菜月、それに対して完全になんの話?って状態の聖。


「ありがとな。で、菜月はどう置く?」


「んー…まぁ、ここで話してもいいが…とりあえず。」


 グギュルギュルゥゥ…。


 盛大な音を立てて鳴るお腹。鳴ったのは…菜月だった。


 恥ずかしそうに顔を背けたのを見て苦笑しながら。


「ま、飯だな。」


 と。誰のためとでもなく暁人は話すのだった。





 という訳でまたしても食堂に戻ってきた。


 たださっきよりも沢山人がいて…具体的には沙紀と朱莉。他にも戦闘部族がちらほらちらほら。


 なお、食堂はどよめきたっており…まぁ当たり前なんだけど。


 あいついつの間に起きてたんだ…とか。


 保健室から勝手に抜け出してんじゃないわよ…とか。


 お腹すいた…とか?


 まぁ、それはさておき。四人(雅也は放置)は卓を囲って椅子に座る。


 なお聖は先程食べたばかりだというのに、一定程度の量を。


 それを白い目で見る面々…だが、先程の聖より少し減らした程度の量を暁人は頼んでるし、他はまぁ適度に食べる…と言った感じである。


 全員が席につき、手を合わせ食事を始める。


 少しして、聖は軽く食べながらふと口を開く。


「Hey マーチ!」


 そんなどこぞの音声機能よろしく呼び出しを行う。


 ・・・。反応しない?と言わんばかりの間を置いて。


「…どうしたの?」


 と、あからさまに不機嫌そうなマーチが起動される。


「なんで不機嫌そうなんだよ。」


「なんでわかってないんだよ。」


 と、明らかに理由明確だろ。と、暁人はツッコミを入れる。


 まぁこんな小ボケはさておき、要件が不明瞭なので明確化していく必要がある。


 というわけでの質問。


「なんのために僕呼ばれたの?」


「いや何?全員に繋いで欲しくてね?」


「何を?」


「内容としては、これから先の作戦会議を行う...つもりだから集合って感じで。」


「時間はどうする?」


「そうだなぁ...約一時間後ってことで。」


「オーケー。伝達しとく。」


 と、小気味よく進んでいく。その会話を眺めながらパスタを頬張る。


 ふと気になったのだが、今回の戦いは片端から試練を攻略することが命題になる...ということは。


「通信機器便利だな・・・。」


「何...急に?」


 と、怪訝な顔をする菜月。いやまぁそりゃそうなんだけど。


 あー...っとどもる暁人に対し、察したように口を開く。


「まぁ確かに...あなたの言うところも理解できるわね。今の時代、スマホの普及によるアプリの普及でかすんでしまっているのだけれど、モールス信号ができるだけで戦時中は有用だったとされているくらいだものね。」


「そうそう。リアタイの情報って死ぬほど有用だからね。」


「んー、正直実感ないけど・・・SNSの現地実況みたいなものかな?」


「「そんな感じ。」」


 まぁ危険を冒してするものではないんだけども。


 と、一般の大学生の会話とは程遠そうな推定年齢大学生どもの会話を繰り広げる。


 全体的な伝達事項を済ませた聖が三人に対し口を開く。


「とりあえず、一時間後。対策会議を組んであるよ。そんな感じでいい?」


「事後承諾。」


 構わねえけどよ。と暁人が口を尖らせるように言う。


 苦笑で流れた沈黙を断ち切るように菜月が口を開く。


「で、さっきは聞きそびれたのだけれど私はどこに置かれるのかしら?」


「んー...決めかねてるかなぁ・・・。」


 尖った特性がないって事かしら?とでも言わんばかりに怪訝そうな顔をした菜月に弁解するように聖は言う。


「正直な話、どこに置いても一定以上の成果を期待できる万能カードって感じだからね?」


「強いて言うなら、ヘラクレス以外って感じじゃねえか?」


「あぁそうだな。そこはガチで近接対人最強じゃなきゃ成り立たないからな。」


 まぁ、浩也とか芽衣とかを置いてもいい位置だ。


 と、説明を交えながら進めていく。


「じゃあ、ヘラクレスは聖・暁人・浩也・芽衣って感じ?」


「・・・いや。ヘラクレスには暁人以外の三人は置かないよ。」


「「はえ?」」


 聞いていた六花と菜月は首を傾げる。


「まさかサシ!?」


「んなバカな。」


 聖が否定するが、正直ありえなくないとか思ってしまった。まぁ暁人なら・・・ってとこはあるし。


 とはいえ、どうにかできる人員のような気もするんだけど。


「んーとね...今はまだ思考段階だから確定ではないけど、俺はヒドラのところのつもりだな。他は決めかねてるけど芽衣は・・・まぁ万が一に備えてもらうつもり。」


 境界の能力は尋常じゃないんだからね。と補足をする。


「まぁ、詳しい話はまたあとで。総力戦に備えてするべき修業を積んでもらうつもりだから、今のうちに食っちゃいな。」


「んー...まぁいいか。」


 多少の不服を殺して菜月は食事を進める。それに伴い六花も・・・。


 暁人に関しては元々馬鹿みたいな速度で食っていたので、もう皿がほとんど空っぽである...。


 その様に呆れながらも黙々と食事は進む。




 また少しして、食事が終わる。そうこうするうちに約束の刻限の先程の一時間後に達する。


 いつものように会議室に集まった面々。何も変わることはなく、三人が前に立つ。


 陰陽大将と参謀...暁人と篝と聖の三人である。


 ふと集まった面々を見る。見ただけで暁人は予感する。


 格段に成長を見せる数人を。


(ハハッ...篝もだが、どいつもこいつも・・・。成長期かよ。)


 と、ぞくりとした感覚に身体がうっすらと震える。


 聖も同様だったのだろうか...こう溢す。


「想定以上・・・切磋琢磨にもほどがあるだろうよ。」


「ははっ。確かに、生ぬるい戦いじゃなかったからな。」


「だとさ。まぁ死闘ほど人を進ませるものはねえか。」


 篝の肯定に暁人は苦笑を浮かべながら納得する。


 さて...と暁人が口を開く。


「待たせて悪かった。そろそろ本格的に二層を攻略する筋を立てる。」


 ってなわけだから、こっからどういう手法を取るかこいつに丸投げするぜ?


 と聖に振った暁人にハァ...と溜め息をついて見せてから、説明を始める。


「一部には伝えたんだがな。この階層では試練を攻略することが急務になる。」


「と言ってもだ、技を潰すためだけのものじゃない。この戦いは端的にまとめると三つの工程に分けられる。」


「一つ目。これは一部のメンツだけでヘラクレスを止めること。」


「二つ目。同時並行で試練を攻略すること。」


「三つ目。その状態でヘラクレスを打倒すること。」


「これが攻略のプロットになる...何か質問は?」


 大まかすぎる攻略のプロットだが、これでは情報不足に当たる。


 それを分かってるのは暁人と菜月と六花だけ。だが、あえて突っ込まない。そりゃ成長を促すべきだからね。


 当然のように突っ込んできたのは...。


「・・・ちょっと...いい?」


 朱莉だった。笑みを浮かべながら、聖が言う。


「質問どうぞ?」


「とりあえず...聞きたいんだけどさ。まずもって神を倒す手段ってあるの?」


「...続けて?」


「それだけじゃないよね...試練を攻略することが技潰しだけじゃない理由がわかんないんだけど…。」


 そう。意図的に言わなかったこと。理由をぼかしたこと。いいところに気が付いたなぁ...流石かな?って暁人が思っていると。


「ふーむ。朱莉はどう思う?」


「え?」


「技潰し以外に理由があるとしたら...なんだと思う?」


「え??あぁ...んー???」


 数秒のフリーズ。そこまで聞くとは暁人も思ってなかったが、良い機会ですしぐんぐん追及していこう。


「え・・・んー...んー・・・?」


 思考の時間をたっぷりとってから、朱莉は言う。


「自信はないよ?ないんだけど...。」


 という前置きの後に朱莉は言う。


「試練攻略そのものが、ヘラクレスの攻略そのものってことかなって思っ・・・た?」


「なるほど...あり得る話だね。そこまで違いないよ。」


 と、余裕で合格点を叩き出せるであろう解答を見せる朱莉。自信はなくとも、流石の『観察(ホームズ)』なのかな?まぁ本人の地頭はめちゃくちゃ切れ者だったはずだし...勉強の有無は置いておくけども。


 とはいえ、明確な正解ではない・・・まぁ、俺らの想定では。


「その可能性も考慮したうえで、ヘラクレスという神の成り立ちを聞いてもらえるかい?」


 と、前置きをしたうえで食堂でしてくれた話をし始める。


 アルケイデスという幼き少年がヘラクレスという絶対の正義の象徴に成りあがったその逸話を。


 その背景にあった十二の試練の存在を。


 そして、神の概念を殺す手段の話を・・・。


「・・・というわけで、あいつを倒すためには少なくとも試練は確実に攻略しなければならない。予測とずれていてそれだけで攻略が出来る可能性もあるけれどね?」


 だから、均等に...それでもなお。ヘラクレスの足止めと共にそれを為さなければならないんだ。


 その言葉を聞いて朱莉は納得する。


「分かった・・・わざわざ聞いてごめんね?」


「んーん。その質問をしてくれたことこそが大事なんだ。俺らにだって視点が欠けることはあるはずだからね...。」


 と、聖は笑いながら評価をする。


「さて、他に何か質問のある人はいるかい?」


「ん!じゃあ俺から。」


 と手を挙げたのは、修斗だった。


「どうぞ?」


「仮にだけどさ。神を殺す手段が整ってたら、その場で倒すの?」


「まぁそうなるだろうね。」


「・・・じゃあさ、人にまで戻ったヘラクレスを倒す手段ってあるの?」


「・・・確実なものはまだないね。だから...そうだね。この試練の攻略は、あくまで「前提条件」だ。だから、倒せる確証には至らない・・・だが。」


 そう言いながら暁人に向き直る。


「十分だよな?」


「・・・自信はねえ。が、俺にできる全てを懸けるさ。まぁ、保険は大いに掛けといてくれ。その程度の自信だわ。」


 と、一切の偽りも誇張も無く、自身の心持ちをはっきりと語る。


 だが。


「・・・!?」


 そんな暁人から感じられる絶対的なまでの『圧』。今ここに冷静に満ち滾る殺意が...覇気が。


 かえって不気味なほどに修斗には・・・いや。全員にそう感じさせた。


 その強さ、底知れなさをその身で味わった聖は笑い言う。


「だとさ。で、()()暁人が闘うんだ。もちろん単騎じゃない状態で。それでもなお、問題あると思う?」


「いや...俺はまだヘラクレスに会っちゃいねえ・・・が、今のこいつに感じた不気味さは尋常じゃねえぞ?」


「逆に言えばこの暁人ですら保険を掛けろと言ってくる規模のバケモノってことでもあるんだけどね。まぁ...そういうことだ。掛けられる保険は全て掛ける。だから、配置されなかったからと言っても拗ねんなよ?それは最大級の警戒役ってことだからな?」


 と、完全に配役を決める状態へと進む。


「・・・さて、質問はここまででいいよな?」


 流れる沈黙は肯定を表す。


 その雰囲気を理解すると同時に、聖は口を開く。


「まず、絶対の配役。最初の段のヘラクレスの相手は・・・暁人。そして...篝。後は・・・鳴子。お前ら三人が適役だろうな。」


 因縁というものを、感じるだろ?と、三人に笑う聖に暁人は無言の圧で。篝は、鳴子は。その笑みを以て答える。


 その返答を受けて聖は無言で笑みを作り言葉を続ける。


「・・・じゃあ、他の試練だね。ネメアの獅子は...どうするかな?」


「・・・それさ。後回しにしてもいい?」


「うん?菜月はなんか、理由あんの?」


「あぁ・・・まぁね。とりあえず、何とかしてみせる。そこは捨ておいてくれて構わない。最後にあたしが何とかする。だから...信じてくれる?」


 その様子に、一瞬だけ疑惑が頭をよぎる。本当に・・・?


 と、考える聖に暁人が言う。


「良いよ。それでいい。」


「暁人!?」


「大丈夫...。それで行けるから。」


 絶対の自信を暁人が示す。その様子に少しだけ驚きながらも。


「一応、保険は掛けとくからね?」


「それで構わないわ。・・・ありがとう。」


 と、菜月は笑う。


「じゃあ・・・次に...。」


 こうして会議は進んでゆく。結果としてはネメアの獅子以外の対策は明確に出来上がったほどに。


 そうして...ようやく対策のための修業を始めるのだった・・・。



 


 


・・・はい。また遅くなりました。四時投稿の銀之丞です。


いやぁ...書くの遅れちゃった。(ほんとごめんなさい)


漸く第二層戦が始まりそうですね。多分来週も同じこと言ってると思いますけど。


まぁそれはさておき。最近は悲しいことにいろんな物語を書きたくなるんですよね・・・。


完結まで十年以上もかかると思われるからまぁ、書けないんですけど。


それでも書きたいなぁ・・・欲がすごいです。活かすべき反省点が多すぎるんじゃ。


と考えながら書いてます。頑張るね。


というわけでいつもの挨拶をば。


いつも読んでくださっている皆様!誠にありがとうございます!!


もし新作上げたらそっちも読んでほしいめう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ