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異能と迷宮で青春を!  作者: 銀之蒸
試練と正義の英雄編
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第82話 十一の対策-2

 ゆっくりと身体を起こす聖。その意識はスッキリとしている。具体的に言えば、夢から醒めた様な実感がある。


(・・・ふぅ…戻って来たか。)


 このまま『御伽噺(フェアリーテイル)』からも抜け出せればって思ってたんだが…そうもいかねえか。


 まぁそりゃそうだよなぁ…と考えながら頭を、身体を軽く動かす。


 人は意識を失ってから数日程目覚めないなんてことがあると、その身体の運動機能が大幅に低下することがある。


 というのも、よくスポーツで言うように「一日サボれば元の状態に戻すのに四日必要」というのと同じ理由である。


 なんなら、歩きすらしていない訳なので普通目が覚めました即動けますー…とはなりにくい。


 だがこれは夢の中だからなのだろうか?聖の身体に鈍りはほぼ…いや。全くと言っていいほどない。


 むしろそのキレは以前よりも遥かに…。


 保健室には誰もいない。沙紀もいないのである。


 様々な要因が聖の頭を流れる。が、しかし。


「・・・腹減ったな。」


 空腹には到底勝てず、誰に言うでもなく小さく呟くとゆっくりと食堂へと徘徊のごとく向かうのだった。






 少しして聖が食堂に着く。


 そこにあった光景を見て思わず目を擦る。


 残念ながら夢ではないその惨状を再確認して、呟いてしまう。


「俺が起きたら...何がどうしてこうなってるんだ?」


 頭を掻きながらつい口からこぼす。


 それは別にファッションショーの如きことをしていたからでも、血風吹き荒れる状況だったからでもなく。


 食堂の一部ではバカみたいな炎が立ち上がり、また一部では大嵐の如く水と風が吹き荒ぶ中、慎重にルービックキューブの如きものを組んでいる男が真ん中に。


「・・・。」


 食堂ってなんだっけ?どうしてもそう思わざるを得ないような、そんなこの世の地獄を足して合わせたかのような惨状に、掻いた頭を抱えながら沈黙せざるを得なかった。


 と。ようやく暁人が聖に気づいて、その炎を押し止める。


「よっ!おはよう!!!」


 丸一日以上、余裕で意識を失っていたことをまるで考えないような底抜けな明るさにほんの少し救われる…ことは勿論当然なく。当たり前の如きセリフがただ一つ。


「何しとんじゃワレゴルァァァアアア!!!!!」


 叫びと共に放たれた割と渾身のグーパンが暁人を思いっきり襲ったのだった。




「えーっと…わざとじゃないんですよ?」


 まるで反省文を書けと言われた生徒の如く、聖の前で椅子に正座する暁人。他三人も正座でこそないもののその横一列に座り、申し訳なさそうな顔をしている。


「何してたらあぁなるんだよ。」


「いや、炎にせよ水にせよ風にせよさ。圧縮っていう溜めを作ればそれだけで武器になるんじゃないかと思ってね?」


「それで?」


「例えば、俺の炎とか一点集中して刀に封じ込めるとかマンガで読んだし、それで超高熱化とか出来れば戦いにも活かせるって思ったんだけど。」


「例えはいいよ。俺が聞きたいのは圧縮するって言ってんのになんであんな風に火事だなんだってなってんだと聞いてるんだよ。」


「それは一度膨張させてから圧縮させていく方が印象として目で見てわかるかなって思いましてですね…。」


「それをなんで食堂でやったんだよ。」


 聖の正論パンチが暁人を殴りつける。さっきくらった腹パンも超痛いのだが、それ以上に正論というものは精神をメッタメタにする。


 要は、心が痛い。とでも言うべきやつである。申し訳なさとかとは別ベクトルで。


 もはや沈黙することしか出来ない。黙りこくって相手の怒りが収まるのを待つ算段である。


 ただ、既に聖の怒りと驚きは呆れと空腹に書き換わっている。


 そのため最終的には溜め息で終わった。


 大きなため息を聖がついた後、タブレットを片手に大量の食べ物を注文しながら暁人に言う。


「で、迷宮の進行状況は?」


 と。話の切り替えを聖がしたため、暁人安堵しながらこっそり足を崩し、報告を始める。


 料理が全てできた時くらいに大まかな説明は終わった。


 その料理の量に暁人以外の三人は唖然とする。


 暁人は唖然とこそしないものの、空腹を感じる。そっちの方がよっぽど頭がおかしいのだが。


 まぁそんなことはさておき、暁人が全員の疑問を口にする。


「ってかひじりん起きたばっかでそんなに食えんの?」


 残すんなら俺食べるよ?と言う意味を暁人は込め言う。他三人は身体大丈夫?の方らしい。


「ん?あぁ。さっきまで俺は意識の中でずっと能力でフィードバックしながら戦ってたり修行してたからな。腹減ってしょうがねえんだわ。」


 なるほどなー…と暁人は思う。意識の中で戦う…と言う意味がわかるやつとわからないやつとがいるがこの4人だとまだ暁人しか触れてはいなかった。


 故に三人はなーに言ってだこいつって感じである。だがしかし、それこそが異能の本質だと思われるのでしょうがない。


 まぁそれはさておき、それで聖は十二分な強化が出来たわけである。


 暁人が揶揄うように聖に言う。


「ひじりんだいぶ強くなったんだろ?期待だわー。」


「まぁな。今じゃお前より強えよ。」


「ふはっ。じゃあ今はお前のが強えよ。」


 めっちゃあっさり認めてんじゃねえ…と聖は突っ込みをいれる。


 なんとなく和んだ空気が少し流れて、全員が息をつく。


 聖が大量の食事をこなした後に、口を開く。


「んじゃ、ヘラクレスへの対策を少し考えて行くか。」


 と、聖が口を開く。


 聖には十二の試練とヘラクレスの技の互換性を明確に伝えてある。


 とくれば。


「まずは十二の試練を攻略することが必須だよな。」


 暁人が口を開く。


「それはそうだろうが…タイミングは慎重に行きたいな。」


「なんで?」


 素朴な疑問が飛び出してしまう。その疑問に丁寧に答えて行く。


「多分だが、暁人のことを鍛えてくれてたのは十二の試練の一つも攻略してない状態だったからだろう。まだボスとして戦うつもりはないってことなんじゃねえかな。」


 なーる?そんなこと言ってたかな?言ってたかもな?と、考えながらもとりあえずそこに突っ込むことはしなかった。


「だとしても、攻略は必須だろ?」


「あぁ、あいつを俺らの段階で屠るには()()()()()()()だ。」


 技を抜きにしてもな、と聖は言う。


「うん?どゆこと?」


 技を抜きにしたら必要なくね?


「あぁ…あいつが元は人だったのは知ってるか?」


「あーうん。確か人から成り上がった神だから半人半神なんだよな?」


「そうだね。だから生涯的には半人半神って分けれるとは思うんだけど、実質的には元は完全な人間、結果的には完全な神様って感じだな。」


「でもあいつゼウスの息子かなんかじゃなかったか?」


「そうだね。というか彼の母とされているアルクメネという女性も元はゼウスの子孫だしね。」


「わーお近親相姦図。」


 神話って多いよね、こういうの。と中々にエグいワードを何も考えずブッパするがまぁ置いておいて。


「だからほぼほぼ人の要素ないと言えばないんだけど…育てが人界だったこととかもあるのかな?まぁあの頃実質人が人じゃないから変わんないけどね。」


 あの頃はー、やばかったー。なぜかしら?とか理由を考えるまでもない。


 と、暁人の頭の中の茶々に関しては気にする間も無く聖は話を続ける。


「あと、これに関しては諸説あるんだけど…十二の試練を経てアルケイデスという幼名の少年がヘラクレスという神へと成り上がったとされているんだ。」


「わかりにくいけど、まぁ戦国武将の幼名が武将の名前に変わるみてえなもんか。」


 そっちの方がわかりにくい、と菜月からは不評をいただく。ちなみに六花は苦笑、雅也はガチトーンな顔で思考といった具合である。


 その様子に苦笑しながら聖は話を続ける。


「まぁそんな感じかもな。ということはだ。神という概念を人という生命体にまで戻すことができるって理屈になると思わないか?」


「「「「!!!」」」」


 四人がようやく理論に追いつく。フワフワした理由がかっ消えて確実に倒さなくてはいけない理由を明確に把握する。


「・・・そうか。俺らは大きな勘違いをしてたんだ。俺らが英雄になって神を下すより、神を人間にまで引き摺り下ろした方がはええのか。」


「理屈としてはそうなるね。」


 暁人の言葉に明確に同意を示す聖。その上で続ける。


「とくればだ、すべきことは?」


「足止めと討伐だな。」


「そうなるね。つまり…。」


 一瞬、溜めを作って聖は言う。



「総力戦だよ。」



 


 昼飯時が終わったら会議をしよう…として、解散をした。


 って言ってもこの後することは炎の制御…の予定だったのだが、聖は少し俺を相手にやりたいことがあるらしい。


 というわけで場所は…迷宮の一階だった。


 ちなみに聖には件の仏教系列の話を交えた精神核の話をしてある。


 それに対する聖の感想はシンプルに「なるほどね。」とのことだった。


 騙し絵の如き迷路に2人は立つ。


「さて…じゃあ勝負と行こうか。」


「あー、やっぱそういう感じか。」


「ん?気づいてた?」


 そりゃまぁな…。少なくとも誰かに迷惑がかからん場所且つ戦える場所ってのがないから、ここ指定したんだろうしよ。


 冷静な暁人の分析に苦笑する。


「いやまぁね。一回でいいんだ。今この瞬間、俺とお前、どっちが強いのか確かめたかったんだけど。」


 白衣を消し多少の動きやすさを確立する。そして左手には彼に良く馴染む愛刀を。


 その様に暁人はゆっくりと息を吐き、前傾姿勢へと体勢を変える。


「・・・悪いけど、手加減はねえぜ?」


 右手に握った灼熱を秘めた刃をゆっくりと構える。


「…行くぞ!」


 暁人は自身の言葉とほぼ同時に極限の集中に入る。


 対する聖は刀の鯉口を切る。既に居合の体勢に入りきる。


 互いに間合いは少し遠い…だが。


 聖には間合いを仕切る技がある。そして、何より聖()()


『スタイル:ジゲン 壱の太刀 疾風迅雷!』


 極限の集中は宿っている。


 風の如き柔軟性、雷の如き俊敏性。


 並ではない…などの次元を遥か超越しかける剣聖一歩手前の次元。その居合、その間合い。


 その刃はたしかに、暁人に迫る。


(あっ…)


 やばい。そんな言葉が頭をよぎる。右手に握った刀を振るえ。


 その脳の命令を無視して身体は動く。


 反射的に左手を跳ね上げる。自身の無意識下で打たれた灼刃が、矛盾した二つの自然を兼ねる一撃へと振り抜かれる。


 ガチンッ!


 高らかな金属音などより遥か重い音が鳴る。


 側から見れば容易に対応したように見えるかもしれない。


 だが、それが容易くないことを二人は知っている。


 一撃を振るった方も、振るわれ弾いた方も両者ともに間合いを取る。


(反応しやがった・・・!)


(死ぬかと思った…!)


 互いの間に流れる沈黙。それは警戒心の裏返しである。


 暁人はゆっくりと、先に出した左の灼刃を消す。そして右の灼刃をしっかりと握る。


 口からゆっくりと、ゆっくりと息を吐くと全身へと魔力を滾らせる。


 その様子に聖も、身体に魔力を滾らせ。


 先に飛び込んだのは、暁人だった。


 先程の疾風迅雷にも匹敵するほどの足捌きを以て距離を詰める。


 その暁人に対し聖は納刀を見せる。


(回避に全振りしろ!!)


 暁人の躍動とそれに呼応するように熱を発する灼刃から身を護るための納刀。


 抜き身の刀で防ぐ術を知らない訳ではない・・・が、ヘラクレスと真っ向から打ち合う男の全身全霊を防ぎきる術はまだ持っていない。


 左手に納刀したままの刀を持ちながら、その足さばきは流麗に軽やかに。暁人の周りを納刀状態で駆けまわる。


『スタイル:ジゲン 肆の太刀 神出鬼没』


 刀を抜かず、振るいもせず。ただ機をうかがうその歩法。だが、単純でありながらいつでも抜ききれるという圧は本来なら強引にでも攻め込まれるところを一歩防ぐ。


 それほどまでに暁人に「やりにくさ」を感じさせた。


 暁人の連撃はその全てが掠めた程度のダメージしか与えられず、簡易的な居合に距離を取らされる。


 後ろに下がったとき、聖の納刀は既に完了していた。それすなわち、()()()()()()()()()()()


『スタイル:ジゲン 弐の太刀 屍山血河』


 対戦乙女(ワルキューレ)戦においては、横軌道で放った居合をかち上げの一閃へと放つ。


 この一撃の性質を悟った暁人はその身を翻すことで避ける。だが、一段目の技がそれなら、二段目はそれ以上の...。


「甘いっ!」


 かなりの魔力濃度を以てその一撃を振るう。今度の範囲は上から横向き斜め軌道。確実に捉えるつもりで...殺すつもりで放った一刀。


 それは確かに暁人に直撃したかのように思う。少なくとも、上へ飛ぶような形での回避は視えなかった。


 ・・・だが、それでも。


「・・・マジかよ。」


 無傷のままの暁の剣士がそこに立つ。


「・・・えぐい一撃だわ。ってか、うん。まぁ初見殺しには十二分すぎるよな。」


「その初見殺し、初手で躱したくせによく言うわ・・・。」


「いや?躱してはいねえよ。」


 ・・・あぁ?と、いつにもまして口が悪めで反応する聖。


「躱しちゃあいない。代わりに真っ向から受けた。」


「・・・チッ...遠心力かよ。」


 そう言いながら、納刀の構えを見せる。


「御名答。さっき身を翻したタイミングで遠心力を載せた一撃で受け止めたわけさ。」


 だが...そうなると。と、聖はいぶかしげに言う。


「じゃあお前は、躱した時点で俺の追撃を読んでたってか?」


「それも違うな...それはこっちの。」


 チャキンッ。と、刀を構えて笑みを見せる。


「対距離手段だ。」


「っ!」


 気づいたときにはもう遅い。


 ただの灼刃なら、お前の技を受けきれねえ。


 そんな刀じゃあ。ヘラクレスの業も、鳴子の『無銘』ですら受けきれない。


 なら、もっと先。灼熱と焔を内包した一刀を。


 その彩光を...今!!


『灼焔刃 暁光!!』


 振り抜いた一撃に、伴う光。それは灼熱の光...灼灮の比ですらなく。


 まさしく陽ざしの如き焦熱。より太く、より熱く、より眩き光を。


 打つ...が、その一撃は大きく軌道を変える。具体的に言えば遥か上の方へ。


「・・・まぁ、まだ未完なんだがな。」


 へっ。と表情を崩した暁人に完全に毒気が抜かれたのか聖はその刀を収める。


「今回は俺の負け・・・か?」


「引き分けだろ。死ぬ気でやんならお前は五行もルーンも切るだろうが。」


「・・・まぁ、そうな。」


 と、先ほどまでの剣幕などなかったかのようにゆっくりと戻っていく。


 すべてはヘラクレスを倒すためだけに。



 そうしてヘラクレスを追い詰めるための作戦会議が始まる。



えー...昨日投稿するのを忘れていましたとかいうどちゃくそゴミ戦犯の作者銀之丞です。


いやはや、漸く聖が起きましたが暁人と対等以上に立ちまわる化け物が復活・・・。


ヘラクレスさん可哀想...とか思っちゃってます。そんなことないといいね。


そういえば、このギミック明かしたのはいいんですけどフッツーに発想そのものはありきたりっちゃあありきたりなんでかぶってたら許されたし・・・。


そうもいかないけどね。


というわけでいつもの挨拶をば。


いつも読んでくださっている皆様!誠にありがとうございます!!


ウマ娘ェ!

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