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異能と迷宮で青春を!  作者: 銀之蒸
軍神と女王編
55/103

第46話 |理由《HELL》

 そこに立っていた男はヒュプノスだった。


 それはまるで、黒幕が突然現れたかのような...そのままだが、実際それほどのインパクトを暁人に与える。


 即座に暁人は灼刃を生み出し、聖は刀を生み出す。


 二人の殺気や敵意というものは凄絶を極めたかのようなものであり、その迫力に一瞬、雨月と志島が怯む。


 篝は溜め息をつきながら。


 ゆらりと、影を生み出す。


『影縫 影縛』


 足元の影はゆらりとうごめいて。


 ()()()()()()()()()()


「「!!?」」


 二人は予想だにもしない攻撃を受けて驚く。


「まぁ、落ち着けよ。ここで暴れんな。」


 のんびりとした言い草だが、有無を言わさぬ迫力である。


 と言うか何より、この二人の気迫に一切気圧されず何も変わらずに対応ができるのは相当のバカか経験がなければ不可能である。


「・・・どういうことだ...篝。」


「いや。どういうことも何も、暁人。あれホログラムだから。」


「・・・え。」


 拍子抜けな答えに、間が抜ける暁人。


「だから、あれ、ホログラム。そもそも、ここに本体が出張るわけねえだろ。」


「だが」


「万が一もあるからてめえらと話しながらも、影で先手を打ったわ。スカしたんだよ。」


 化け狸だって、ここまでしたたかではないだろうし、腹黒くもないだろうと感じさせるものの言い草である。


 ・・・それを聞いてようやく二人は互いの獲物を収める。


 その様子を見て影縛を解く。


 ここにいた志島と雨月はようやく感じる。


 今ここに座る三大将とでもいえるような連中の異次元さを。


 異様なまでの差を。


 その様を見て、ゆっくりと...それでいてさっきよりも大きく篝はため息をつき言う。


「お前らなぁ...優しいんだか短気なんだか知らねえが、そーんな剣呑な気を振りまいてみろ。モテねえぞ~。」


 その言葉を受けて一瞬だけハッとした顔をする暁人。でも数瞬をあけてから。


「やかましいわ。どうせモテねえわ。」


 そこかよ。と言われる返しをする暁人。


 少し落ち着いた二人。ゆっくりと座ると、篝がそのホログラムに手招きをする。


 ゆっくりと近づくホログラム。その存在は近づけば近づくほど希薄であることがよくわかる。


 ほぼゼロ距離に立ち尽くすホログラムは口を開く。


「いくつか、話の補足をしに来た。」


「・・・ちょうどよすぎて気味が悪いね。」


「確かにな。まぁそれを気にしすぎるのもよくないのかもしれんが。」


 見られている可能性を示唆する聖。正直、それはそこまで驚くほどでもないが。


「君たちの行動は...物語状にして...自動的に...つづられる...。それをヒュプノスが...観測する形で...君たちの行動を...観測している...。」


「・・・どういうこと?」


「わかりやすく言い換えりゃあ...なんだ。監視カメラを・・・ちげえな。なんだ?」


「慣れねえことをするからだ、篝。ってなわけでひじりん。よろ。」


「お前なぁ...まぁいいや。そのまんまだけど、僕らの行動を書き起こす装置があるんだろうね。まぁ人なのかもしれないが、その存在は、もしかしたら世界規模かもしれない。そこに関しては分からないが...その人物が作った年表...もっと細かく言えば、日表とか時表とか、下手すれば秒表とかかもね。そんな細かさや精度で書き起こされたものがあるんじゃないかって話だ。」


「・・・・・・?」


 余計にこんがらがらがら。ほつれにほつれて糸玉にって顔をする志島。


 ぶっちゃけどんな顔だよとか思うけど、まぁそこはさておきとしながら口を開く。


「おいひじりん。理解してねえぞ。」


「・・・僕ら小説の主人公。僕らの行動をノベライズ。リアルタイムで進行中。それを読んでるヒュプノスさん。こんな感じ。」


「なるほど。」


「しゃべり方に癖がありすぎるけどなー。」


「ほんまに。」


 しゃーないだろうて。なんて聖に茶番を挟み込ませる流石の暁人と篝。


「・・・そうか...だから御伽噺(フェアリーテイル)なのか...?」


「うん?」


「いや、この世界の名前。どうやら御伽噺って書いて、フェアリーテイルって読ませるらしいぜ?」


「ほう...ほう?」


「意味が分からないな...まぁでも...御伽の存在なら?」


 とりあえず適当な返事をする篝。また即座に仮説を立て始める聖に置いて行かれる志島と雨月...だが。


「ちょちょちょ、ちょっと待て。今は質問優先じゃないのか?」


「「「あ。」」」


「脱線...したね...。」


「すまん癖で考えてた。」


「すまん癖で適当に相槌してた。」


「すまん何も思いつかなかった。」


 ほーらすぐ茶番だよ。お笑いコンビか。いやトリオか。


 そんなことはどうでもよくて、聖がなんてことない様子で軽く手を合わせ、ポンッと鳴らす。


「それじゃあ質問だ...って、どこまで聞いて良い?」


「...今は...この世界の仕組みについて...くらい...?」


 その言葉を受けて、ゆっくりと頷く聖。そして一つずつ、質問をし始める。


「OK。ならまず一つ目。この世界に命を落とすリスクがないというのは?」


「具体的には...説明できない...だけど...さっき言った...物語に例えるなら...その物語を...観測し終えずに...焼き捨てるんだ...。」


「・・・?あぁ、いや、なるほど...。」


「シュレディンガーだね...。」


「あぁ、その言葉で俺は分かったわ。」


 一瞬首を傾げた聖だがすぐさま、その本質を理解する。


 暁人は続いたホログラムのセリフで理解する。


「シュレディンガー...猫?方程式?」


「猫。要は不確定の事象にするってことだろ。」


「・・・なるほどね。」


 志島が納得した言葉を残す。雨月と篝もどうやら理解はしているようである。


 少しして聖は二つ目、と指を立てる。


「この世界の目的は何なんだ?」


「英雄を...生み出すこと。」


「・・・具体的には...?」


「試練を課すこと...だった...けど...今は色々なイレギュラーが混ざり合って...いくつかの試練が消えて...いくつかのイレギュラーと試練が...混在している...かな?」


 試練ねえ...有名な例ならヘラクレスとか、ペルセウスとか?ってか、試練を経て英雄になった存在って結構色々あるんだが...。


「OK。じゃあ、後は...あとは?」


「その三。敵は無限湧きであってる?」


 暁人が横から追加で指を一本足し聞く。


「あってる...と思うとしか言えない...って言うのも...迷宮は独立構造だから...。」


「なーる。理解。」


 あとは...そうだな。もう一つ、聞きたいことが。


「ひじりん?」


「ん?」


「お前の会ったヒュプノスって...あんなん?」


「んー...その言い草的には同じなんだよな。」


 二人が思うこと...と言うより、誰もが握ったままの発しなかった疑問。


 代表して暁人が口にする。


「お前さ。見た目より...喋り口調、幼くねえか?なんつーか...拙いとしか思えないんだが。」


「あぁ...うん。僕は...独立成長思考型の...電子機能だからね...。」


「「「「「・・・はぁ?」」」」」


 全員の感想が一致していく。当たり前である。


 どうやら必要な知識をその場その場で補完するための機能の一環としてあらかじめ組まれていたらしいんだが、どうにも目醒めが遅かったりもしたらしい。


 そんなわけでだいぶ未完成なアバターことヒュプノスクソジジイ編で出てきてしまったという超大変な感じらしい。お疲れさまだな。


 今後はアプリの一環になるらしいから、いつでも聞けるよとのこと。やったねた...とか言ったら殺されるから言わない。絶対に。


 まぁそれはさておきだが、ある程度発見ができたことで、リタイアが可能にはなった。


 だからリタイアをしてもいいんじゃないか?


 なんて、誰が言うでもなく、議題に上がる。


 だけど...。


 志島(おれ)としてはそんな選択肢は存在しない。


「でも...さ。不確定事象で命が助かるっていうのも実証は取れてないわけじゃん?」


 なんて、口にしてしまう。


「ハハッ。まぁそりゃそうだ。そも、こんな状況でなーに言ってんだって感じじゃね?」


「信頼ならないもんなー。」


「まぁ、ある一定程度の信頼はしているけども...死ぬのはごめんだね。今帰ったら退屈なままだ。」


「さすがひじりん。俺はこんな恐怖を与えたアイツをぶちのめすまで帰りたくないかな。」


「まぁ、帰ってもやることないしなー。」


 さすがの三人。暁人も、篝も、聖も帰るとかの選択肢がはなっからない。


 もう一周回ってバカなんじゃないかなとか思う。


 そんななか、雨月は。


「でも...戦うの怖くないの?」


 ただ一人、後ろを向く。


 その言葉をこの状況で発するのも怖いだろう。多人数の中でこんな風に意見を言うのはきっと...とても難しいことなんだ。


 そのほんの少しの勇気は、どこで手に入れたんだろう。


 そんなことを思いながら、志島は少し口をつぐむ。


 怖い。逃げたい。そんなこと当たり前だから。


 でも。それでも、今は...。


 その葛藤を抱えたままの志島は口を開けなかった。だが。


「そんなん、当たり前だよ。」


 暁人はあっさりと肯定する。


「じゃあ...何でやめようとか思わないの?」


 そりゃそうだ。怖いならやめちまえばいい。逃げちまえばいい。


 心の中で肯定をしながら、でも...でもと。反論しようとその枕詞だけどを繰り返す。


「んー...そうだなぁ...。」


 ほんの少し、ほんの少し戸惑って、暁人は答える。


「俺は...だけど、今この状況での感情として怒りの感情がとーっても強いんだよね。」


「・・・え?」


 拍子抜けな回答。何でって、思っちゃう回答。


「いや、こんな状況になってんのヒュプノスのせいだろ?ってなったらあの全能神ぶってるあいつの顔面殴り飛ばしたくてしょうがなくてね...。だから」


「でも...暁人は冷静に見える。なんていうか...こう...()()()()()()()()()()()()()()みたいな風に考えてる気がしちゃうんだ。」


「・・・。」


 言葉を切られて...もしくは図星を突かれて...暁人は沈黙する。


 数刻。ほんの一瞬なのか、何分もたったのかはわからない。


 少し、諦めたように笑って暁人は言う。


「・・・俺はね。死ぬのが怖いんだ。」


『え?』


 さも当たり前のことを、異次元の...常識外を歩く人物が口にするんだ。誰もが驚く。


「俺は聖みたく、退屈故にここにいるわけじゃない。いやまぁ、最初はそうだった。だけど...痛いのは辛いし...怖い。死ぬのなんてその最果てだろ?怖いに決まってんじゃんか。」


 その告白は...人間宣言のようなものだろうか。彼が初めて発した人間らしいところは、なんていうか、当たり前のことで。こいつだけはそれと...恐怖心とは無縁だと思っていた。


 だけど...やっぱりこいつは普通で...ほんの少しだけ変わった弱者だ。


「でも、それって割と普通な気もするんだよね。死に向かうのは怖いけど、でもそれってみんな同じでしょう?だから...せめて、みんながあきらめないうちは戦おうかと思ってね」


 少しだけ、変わった...ほんの少しだけ自発的に変わろうとした...だけだったんだ。


 それを改めて思い知らされる。


「まぁ、その動機として、他人のために戦うってだけなんだよね。だから、あながち怒りでも間違ってないわけ。そんな感じかな。」


 これ以上言う必要はない。なんて、苦笑する。


 それを聞いて、ゆっくりと。


 雨月は頷く。


「怖いのは...当たり前...か。暁人ですら怖いんなら、僕が怖くても当たり前か。」


「おいコラ何、人をバケモン扱いしてくれとんねん。」


「もはや今更だろ。」


 そういう志島に噛みつく暁人。


 あぁ、うん。今更の光景である。


 少しして、暁人はこう言い加える。


「まぁ、なんだ。別に俺みたいに理由を持たなくたっていいと思うぜ?だって、ここに楽しそうだとか、異能のルーツを知りたいだとか、後は時間あるからなんて言う、わけのわかんない奴らも存在するんだ。気の赴くままに行けばいいのさ。」


 自死すんのも、ちょっと怖えだろ?


 なんて、口にする。


 暁人は口角を上げて笑って見せる。


 いつ以来だろう。ちゃんと笑うのは。みんなで飯を食べた時以来か?


 それに対してニコっと笑って見せる雨月。


 本題に入るように聖が手を叩く。


「さて。とりあえず聞きたいことも終わって、覚悟も決まったとこで。今日は誰を連れていくか決まっているのかい?」


「んー...とりあえず...志島と雨月。後留目の三人組をベースに、芽衣も駆り出したいかな?」


「ボスに乗り込むんなら、一応ついていこうかな?」


 篝のセリフを聞いて、少しだけ思案する。


「いや。どっちでもいい。正直全員のレベルの底上げに尽くしてもいいし。聖の言う五属性の話も今んとこ誰に適用されるのか、その上でルーン魔術の使用可能な人員の把握もしておきたい。そう考えたら、誰が何をするかって言われて役割が固定されるのは探索班と研究組の聖ぐらいだろう?そうなると、篝をどっち位においてもかまわない。」


「・・・じゃあ俺は俺で、新技の練習と行こうかな。」


 あれかな?っていう顔で志島は篝を見る。


 苦笑を返すあたり、多分あれだな。


 暁人が特に気づかない様子で右手で〇を示す。


「オーケー。じゃあ4人連れて行こうかな。」


 その様子を見たヒュプノスは口を開く。


「・・・僕としても...君らが傷つくのは...本意じゃないんだ...だから...その...」


「言われなくても気を付けるさ。ただーし。」


 ビシッと指をさして。


「今のてめえのビジュアルでその喋り方は気持ち悪い。面白可笑しく...はなくていいが、もう少しくらいはまともなアバターでも用意しといてくれ。いいな。」


 そこ気にするか?なんていう電子の表情を浮かべるが、他の4人も同様の様だ。


 その表情を最後まで崩さないまま...ゆっくりと頷いて...姿が掻き消える。


「さて...俺達も行きますか。」


 暁人のその台詞で、全員は席を立った。



 そして、漸く第一層の主に出会う。

はいどうも。今日は気持ち早めに投稿できてるかな?作者の銀之丞です。


そういえばこの前自分の書いてたやつ見返しててちょっと物語にかかわる次元の修正見っけたんすよ。


あの、考察インタミディエイトで無属性の話で聖と志島って書いてたんすよ。


・・・いや!聖と浩也以外属性判断すらしてないやんけ!このバカチン!


まぁ俺なんですけど。で、修正してあります。マジ申し訳ねえ。


まぁそこまで深く読んで覚えてくださってる方いないかな?


居たら嬉しいんだけどな...特に感想もコメントも貰ってないしな...


でもブクマしてくれている方も読んでくださっている皆様がいてくれるのもすごく嬉しいですし、まぁ自分の中で出来上がっている物語を完全に形にするのが目標なんで、完結まで(生きてたら)続けていきたいなって思います(小並感)


こんな小学生居たら絶対ろくでもねえか。


なんて考えております銀之丞でした。


色々、キャラたちの立場に立って、公開情報で考察してくれたら嬉しいかな?


まぁありふれた物語なんで、過度な期待はしないでいただいて(震え声)


というわけで長々と書きましたがとりあえずここいらでいつもの挨拶をば。


いつも読んでくださっている皆様!誠にありがとうございます!


ようやく一層のボスじゃ!二層以降加速しろよ!未来の俺!

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