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異能と迷宮で青春を!  作者: 銀之蒸
夢と異能と校舎解放戦線編
20/103

第19話 |響慈《きょうじ》

「・・・うっし。ちょいとみんな聞いてーな」


 暁人のその一言に全員が振り向く...なお、一部半笑いである。この野郎。


「何で半笑いだこの野郎...理由はわかっているけども。まぁ、それはさておき、とりあえず、目下一番の課題であるこの学校...と思しき建物の探索をする必要がある訳なんだけど、とりあえず内装...まぁ、機能面とかどこ高校かどこ中学か、とかのいろんなものどうなっているかの調査のために何人か駆り出すつもりなんだけど...」


 全員を軽く一瞥する。最初の会議に比べれば表情が十二分に軟らかくなった。まぁ、緊張は適度にしているけど、平和ボケではないからいいの...かな?


「行きたい人...挙手ーーーーーーー!」


 シーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。


 イマナライケルトオモッタノニナー。


「まぁ、行きたい人はいなくとも、一部こちらから指名で来てもらう人は何人かいるんだけどね。」


「でも多少は立候補制のほうが楽しいじゃん?」


「暁人、やかましいからstay(おすわり)。」


「いやだ。俺も行く。」


「お前は元々だろうが。」


『・・・・・』


 いつも通り突然に、唐突に。始まるいつものような茶番。そんな非日常の中の日常。そんな普通じゃない普通に釣られてみんなの緊張は一気に消える。いや、元々なかったがもはやゼロの領域に達する。


「じゃあ、指名制にする?ホストみたく。」


「・・・例えが最悪だがな。まぁ、そうしよう。」


「え?ホストがダメならホステスかキャバ嬢か?」


「違うから。もういいわ。さっさと指名すんぞ。」


「んじゃまず、戦闘要員ね。」


「急にまじめに戻るな怖えよ。」


 とか何とか言いながらも、顔はやっぱりまだ笑みが残ってる。


「あー。とりあえず、アタッカーとして、暁人。端的に戦闘要員として厄介な強敵はお前な。」


「はーい。ゴリ押しますー。」


「そんでもって...雨月。併せて志島。二人もだな。」


「え?」

「俺ら?」


 二人が顔を見合わせる。まさか自分が呼ばれるとは...って感じだろうか?


「まぁ、確かに、この広さじゃそんなに有効に使えないのかもしれないが...確か顕現可能数は36人だったろう?4階の奥行きを見た感じ問題なく機能するだろう。探索としては有効だ。」


「あー...なるほど。」


「え...と。俺は...」


「そのサポートだ。というのも君の戦旗(ジャンヌダルク)は、志島の軍団(レギオン)ととても相性がいい。しかしながら、有効範囲もどれほどの身体強化がかかるのかも、何なら時間式なのか魔力の比例に応じてなのか...全くの不明。迷宮に入る前に調べられるうちの詳細は調べておきたい。」


「あ...そっか...」


 納得する雨月。まぁ、ぶっちゃけそれだけじゃないけどな。


「後は...雅也。お前はアタッカー...というより非常時に備えて、といった感じだな。基本的には守りの形。壁で適宜、他の人を守ってほしい。」


「あーい。了解。」


「それで...補助や支援だね。まぁ、言ってしまえば後衛陣営だけど...うん。矢野...さんとあとは奈多さんかな。」


「・・・・・」


「あー...はい。」


 指名された二人は一応反応した、といった感じだった。琴実は沈黙のまま、コクリと一回頷いた形で、祥子は少し溜めを作りながらの返事で。


 やっぱり緊張しているんだろうか。琴実さん...は違うか。返事せないのおかしかったけどひじりんが言ったからか...と納得する暁人。少しやりにくそうな聖を陰で笑いながらも、しっぺ返しがありそうだと少しだけ恐れてもいた。


「えーっと、まぁ選出理由は単純で矢野さんは固定で雅也の城壁の強化を。奈多さんは...いわずもがな。探知の能力でその場その場のサポートお願いしたい。そんで...」


 一区切りつけて、ふぅ...と軽く息をつくと。また言葉を続ける。


「基本は廊下での移動となる。で、ある以上は挟撃に対する策を講じておかなくてはならない。というわけで...もう一個分。建てようと思う。」


「・・・いるか?」


「正直な話、いらないと思う。だけど...」


「だけど?」


「経験を積ませたいのと...実力を見定めたいのと...」


「まだあんのかよ。」


「夢の世界とは言え、死ぬのは怖えし嫌だろ。」


「・・・まぁ、だわな。」


 ごもっともである。実際死にたいと思う人間なんて、余ほどのものだし。


「それこそ芥川龍之介か太宰治か、あとは...あれだ。大学で割腹自殺したあの...」


「金閣寺」


「三島由紀夫だ」


「忘れてたんなら口を開くんじゃないよ全く。」


「すんません。話し変えてすんません。」


「ったく...よし。んじゃ話を求めて」


 文豪の話ド忘れしてた。死にたくなるぜ。


 にしてもこいつ...理系だったはずだが...まぁ今更ではあるんだろうけど...想定よりなんでも知ってるっぽいぞ?昔こいつは、「人が面白いと感じるものを科学で証明してやろうか。」とかいうくらい文学興味/ZERO君だったのに...


「こちらに関してはだが、完全に戦闘能力だけで組もうと思う。」


「・・・なる...ほど?」


「正直戦闘能力だけで組むとなると、練習がてらで組むのが怖いは怖いのだよな...」


「怖い?あぁ、まぁ出てから戦えませんじゃキッツいしなぁ...」


「うむ...確定で置けるのは...篝が強いのはわかってはいるんだが...」


「あのさー...そこは気にしなくてもいいと思うよ。」


「うん?あ。そうだ忘れてた。佐々木さん。万が一のときは境界に潜って退避したいんだけど...できる。」


「え。あーー...うん。大丈夫。簡単にできるよ。ここにゲートを一つ設定すればいけるはず。」


「ふむ。それなら多少の無理は可能だね。」


「まぁ...だわな。」


「よし。じゃあ、一気に呼ぶね。じゃあ、前衛枠...市ノ瀬と七嶋さん。後衛枠、蒼衣と桃園さん。以上が護衛役...もとい挟撃対策組ね。」


 この言葉に呼ばれた順に、頷いたり、返事したりで各自に肯定の意を示す。


「それで...」


「全部?」


「いや?肝心の役を言っていないじゃないか。」

 

『?』


 こんだけいれば十分だろう。ほかに誰がいるんだ。誰をぶち込みたいんだ。自分が行きたいのか等々...全員の頭を駆け巡る。暁人も例外ではなく。


「ん?お前も来るのか?」


「ははは、それも悪くないね。だけど...俺は俺でやらなきゃならないこともある。」


「???じゃあ。」


「じゃあ、誰を入れたいのか、だよね。単純だとも。お前はアタッカーとして前線に行くのだろう?」


「おい待て。それって...」


「お察しのとおり...このチームには優秀な指揮官がいない...というと、みんなをバカにしているように聞こえるね。言い方が悪かった。このチームには優秀な指揮官(リーダー役)がいない。」


「おいコラ結局バカにしたいのは俺だけか」


「そうだとも。君は無理をしすぎる。本来ね。頭を張る人間は絶対に無理をしてはならないのだよ。これは『絶対』だ。何を犠牲にしても。」


「うぐぅ...はい。」


「ただし、さっきも言った通り、仲間が死ぬのは...友達が死ぬのは見たくない。だから、慎重で優秀な作戦に最適な...指揮官(リーダー役)が必要になる。」


「・・・私ってことね。」


「うん。お願いしていいかい。岩金。」


「わかっているわ。」


「それじゃ、分かりやすくまとめよう。簡単に、且つ分かりやすく言うなら拠点に残るのが俺、篝、修斗、留目、浩也、望月さん、黒卯さん、左山さん。ほかは全員出撃ってことだね。何か質問のある人は?」


「えーっと、いいかな。」


 左山さんが手を上げる。意見が言えるえらい子だ。


「うん。どうしたの?左山さん。」


「私出撃しなくてもいいの?」


「あぁ...うん。詳細は後で伝えるけど、してほしいことがあるからこの編成なんだ。大丈夫。」


「わかった。」


「他に何かあるかい?」


「じゃあ、はい。」


「なんだい?修斗。」


 会議が進まないだろ...っとヤジを飛ばそうかとも思ったけど、男だから言うって言うのもひどいので修斗の意見もちゃんと聞くことにした。


「俺も実戦経験積まなくてもいいのか?」


「まぁ、そうだね、送り出していきたいけれど...拠点に何かある可能性があるからね。とはいえ、だ。入り口が二つしかなく、角の教室であることが非常に幸いしていてね。」


「あぁ、一応の防衛用ってことか。」


「まぁ、そんなところかな。左山さん同様、君にも仕事があるからそこらへんはまたあとでね。」


「了解。」


「・・・全員仕事がある感じなのか。」


 暁人はついさらっと口を挟んでしまう。ごめんね。


「んーと、異能を実戦で使った組は休憩ってだけかな。暁人はもういけるんだろう?」


「ま-ね。あれは魔力とかの疲労っていうより体が軽く疲れていただけだから。」


「あ、左山さん。早速でなんだけど、君の観察(ホームズ)で暁人の体調分かったりしない?」


「え?あぁ...そういう仕事ね。」


「まぁ、それもあるかな。」


 間髪入れずにすらっとみられる。クソが、本気で疲れてたら隠せないわけだから危なかった。


「まぁ、大丈夫じゃないかな。多少の疲労はやっぱり、みんなと同じ様に見られるけど...」


「ふむ。みんなと同じように、で済んでいるのなら何の問題も無しか。ありがとう。」


 軽く礼を述べると、先ほどの説明に戻る。


「さっきの仕事云々においては、はっきり言うならこれも含まれるし、ほんとに色々なんだよね。ただ、仕事があるのは俺、左山さん、修斗だけなんだよ。黒卯さんは、こっちで緊急事態が起きた時及び発覚した瞬間に連絡をそっちまで伝えるためなんだけど...」


「なるほどね。心の底から納得したわ。」


「そうか。そりゃ何よりだよ。」


「他には...まぁ何かあるかい?」


『・・・・・』


「じゃあ、会議はここで終わりでいいね。とりあえず先遣隊は指揮官の準備で行くように。あと、人数の有無において多すぎる、とか在ったらそっちの判断優先でいいからね」


「うん。わかってる。」


「じゃあ、張り切っていきまぁ...しょう!」


『・・・・・』


 おーーーーーー!ってなる流れじゃないのかよ、と独り言ちて暁人が準備を始めると、周りは苦笑に包まれながらみな会議を終え準備をしえていく。 


「えーーと、それじゃあみんな準備終わったかな。それじゃあ行こうか。」


 軽く全員の準備等の状況を確認すると、菜月は声をかけて軽くまとまった形で出ていく。人数がいる分割とごちゃっとしているようにも感じるが各々がきっちりと最初に言われた指示通り円形に陣形を組んだことでなんだかんだちゃんとした陣形になって廊下を進んでいく。


 それらを見送る待機組。ぶっちゃけ治療の関係もあって、主に見送りをしているのが聖と修斗だがしょうがないといえばしょうがない。その陣形を保ったまま四階の一番奥の教室まで、軽く中をのぞきながら回っているのを教室の前から見ながら、修斗は聖に仕事について尋ねる。


「さて暁人。ずっと聞きたかった仕事のことについてなんだけど。」


「はいはい、仕事のことね。まー、とりあえずは...」


 と、不自然に言葉を切ると...


「左山さんの方に先に声をかけておこうか。」


「ん?あー。なんか都合がある感じ?」


「まぁ、そんなとこかな。」


 と、意味ありげに区切る。そして。


「左山さんー。ちょっといいかい?」


「え?あ、うん。大丈夫だよー」


 と、すたすたと教室から出てくる朱莉。そんな朱莉に対してコソコソっと耳打ちをする。


「とりあえず左山さんにお願い事が一つ。望月さんのことなんだけど。」


「沙紀がどうかした?」


 少し眉根の寄る朱莉。突然自分と仲の良い人物の名前を挙げられたのだからそりゃ表情は曇る。


「いや、別に何かの問題があったわけではないよ。そっちじゃない。むしろ彼女が心配だからこそだ。」


「心配…?」


「そんな心にもないだろみたいな顔されても」


「してないしてない。そうじゃなくてなんでって言う理屈の方。」


 手をパタパタと振りながら否定する朱莉。正直


「いや、今はすべての医療行為を望月さんの異能に委任している状態なわけで...詰まる所。理屈的には負担が一番集まるところになる。暁人は別の意味。中毒を危惧して一人に対して高密度の使用や高回転で使わせることを禁止していたようだけど、単純に負担の意味でも、あまりよろしくはないよね。」


「え?ってことは私の仕事は...」


「望月さんのメディカルチェック...と同時に精神的なところ。メンタルヘルス...要はストレスチェックだね。これは全員に行いたいことだし...こればっかりは暁人の専門分野だったりのするんだが...まぁ、あいつもそこらへんに疎いときあるし、やっぱりホームズの能力のほうが信用も高いしね。」


「・・・・・それで全部?」


「あぁ、いや、もう一つ。君が闘えるかはわからないんだけど...望月さんも戦えるのかの確認と...左山さんが闘えるのなら。彼女に少し手ほどきをしてあげてほしい。」


「・・・なんで?彼女を前線に出さなければいい話じゃない。それに。」


「彼女は生命線。わかっているとも。ただね。ヒュプノスが言う学校の全機能開放がどの次元なのかさっぱりわからない。これがもしすべての特別教室のことを指すのなら、どの次元なのか、さっぱりわからない。である以上は」


 聖は言葉を切る。聖はリーダーの一角である。どんなことがあっても生き残る。そうしなければならない。そう暁人にも言った。それを心から自覚しろと。でもそれは他の誰かを捨て石にしなければ生き残れないのならというだけの話。


 例え誰かが死ぬ状況があるのなら。そんな可能性があるのなら。ありとあらゆる人智を尽くしてその状況を回避する必要がある。


 聖の...否。指揮官として正しい教示。常に最悪の想定と、最高の判断を。足りない情報は最良の思考と最適な試行と最小の施行の総てを持って手段を揃える。


 それが。それこそが。聖がリーダーたる所以なのだろう。


「そうである以上は備えておく必要がある。仮定だけど一か所を開けた瞬間にその一か所に敵が集まりだしたら?その一つを置いて考えるだけで同時に戦い倒す必要がある。」


「でも、あそこにある...何の特殊教室わからないけど、特に何もなかったよ?」


「敵がいなかった可能性もある。だから何もわからない。」


「・・・それじゃあ...うん...えーっと...」


「うん。まぁ、総力戦はやらなくてもいいならやらないけどね。」


「まぁ...わかったわ。」


「ごめんね。よろしく。」


 一言、一応の謝罪をして左山さんを教室に戻す。


「んーと、つまり。」


 そして修斗は結論を求めて、それに応える聖。


「うん。総力戦の備えをして置こうってだけの話だよ。」


「・・・・・じゃあ、俺の仕事は?」


「かんたんだよ?」


 首を傾げる修斗。ニッコリ笑顔で唐突に刀を顕現させ刀を抜き、少し間合いを取ってからクルリと回って。


「戦闘訓練と行こうか。お手柔らかに、全力で頼むよ。」


「・・・・・ハァ!?」


 呆気にとられる修斗を目前に、いつになく真剣な表情で刀を構える。





 そして、各方面で物語は進展する。

遅くなりました。申し訳ない。

いつも読んでくださっている皆様、誠にありがとうございます!




・・・・・ココガラ厳選終わらないめう。

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