第11話 |持個《じこ》
「あー、ちょっとよかー?」
なんて誰かに声をかけるようなノリでみんなに声をかける。当然教卓の前に立って発言しなきゃいけないわけだからちょいつらいんだけど...まぁ、うん。頑張ろう。
そんなこんなで一声を、まぁ、大声ってほどでも、普通の声ってほどでもない声量でみんなに声をかける。
まぁ、当然のことのようにみんなこっちを向く。
ある奴はなんやこいつみたいな眼で。またある奴は、何してんのこいつ?みたいな眼で。ほかのやつらも、こいつ何してんの?こいつ何してん?等々、etc...って猜疑心しかねえ。当たり前か。
「あーあーあー。とりあえずだね。なんか頑張らないといけないっぽいわけじゃないですか。」
・・・何を言い出すんだ。こいつ。
そんな目線が暁人に投げかけられる。当たり前だよね。
そんな視線に、おー、いつも話すときのあの雰囲気やんなぁ...とか考えながら、話を続ける。
「つまりだね。差し当たってみんなに会うのは...まぁ一部を除いて半年ぶりなわけですし、俺のことを忘れてるかもしれないわけで。久々に自己紹介でもどうかと思うわけなんですけど。どう?」
・・・沈黙が流れた。正直視線が痛い。
視線を言葉にして、語らせるなら、多分。
(てめえみたいにキャラの濃いやつを忘れられるとか思ってんの?落ちにくさで言ったら油汚れのシミよりもこびりついて落ちにくそうなやつが。)
といったところだろうか。いや、油汚れより、ソースのシミかな?
「・・・とりあえず、俺からやろうか?」
この一言を投げた瞬間、一部から殺意が飛んできた。具体的に言うと、志島とか、なつさんとかの、一応やらかすとは宣言してたけどさ。みたいな感情の人たち。
ちなみに、蒼衣と雨月は絶句...まじかこいつみたいな眼。そりゃそうか。
ひじりんと留目に関しては、まぁ、やるよね。みたいな顔してる。流石だぜ。
ちなみに事情を知らなかった人たちの中にも、なんかやらかしてんなー、って顔してるのと、今度は何し始めやがった、って顔のやつ、そしてなんとなく意図はわかったものの、こんな状態でやるんか、みたいなやつばっかりだった。
多分誰一人として、もっとうまい進行を見れるとは露ほども思ってなかっただろうし、なんなら、暁人はある程度、全員と仲良くはしていたため、どうせなんかやらかすんだろうなぁ、という謎の信頼があったのである。
悲しい信頼だが。
「・・・というわけで、俺の名前は八束暁人。能力は『灼装』で、こんな感じに出来立てほやほや、熱々ほくほくの赤熱の鉄武装が作れるよ。」
と、おどけながら、右手から、ポンっと言わんばかりのノリで拳銃を生み出す。
あくまで、見た目程度だからそこまで威力は出ないような作りだけど、そのおかげで、今迄みたいにイメージに時間をかける必要はなくなるなら、それは戦闘時に大いに役に立つと考えられるな。練習しとこ。
ちなみに作ったときに周囲か、歓声...は上がらながったけど、地味に感動された気がする。ドヤッとこ。
「あ、あと炎も出せるよ。」
前よりも出力を上げることができるようになった炎でボワァ...と。
・・・あれ?想定よりも出力が高い...天井燃やさないレベルにするとはいっても...これ使えるのでは?
ちなみにさっきよりもみんな感嘆してはいなかったけど、なんかひじりんはとっても笑顔だ...なんで?
「あ、あと見てわかると思うけど。もらった服は迷彩柄の赤いシャツです。」
もらった服は赤の迷彩服...っぽいやつ。なんかこれ、軍服っぽくないし。
ただ、繊維自体が夢の国...もといヒュプノス作なので死ぬほど頑強である。防弾効果もあるだろうし、防刃加工もされてるっぽい...のかな?あと、ズボンのほうがこう、黒の...なんかポケットがいっぱいついている...ジーンズじゃないけど...よくわからん奴(結論)着てる。
あ、あと、姿とか説明してなかったね。髪の毛が長いです。肩にかからん位に。後、まぁ、適度に筋肉ついてて、髪が少し日に焼けて赤くて身長が高いです。足も長いです。
「こんなとこ...かな?うん。ハイ次の方どーする?」
「・・・・・」
そりゃ、沈黙しますわ。チョーコマル。
ちらっとひじりんたちの方を見る。
視線を逸らす面々。なおひじりんに関して言えば今俺に回したら、殺すぞ。と言わんばかりの笑顔である。超怖い。
「えー、誰かいないの?それとも自己紹介もできない系人類?」
『・・・・・』
煽ってみる。いらだってる雰囲気はあるが、多分このいら立ちは、煽られたことに対するいら立ちっていうより乗りにくいんだよ畜生、みたいな感じだと思う。多分。
「・・・。ここで乗ってくれるやつはイケメンだよなぁ...誰かいないかなぁ。誰か」
「しょうがねえなぁ!」
流石、お前は乗ってくれると信じていたぞ。修斗。
ここで名乗りを上げた男は黒鉄修斗。基本的には中心に立つわけではないけど、誰かが中心に立ったら後ろから背中を押してくれるようなタイプだったりする。結構ありがたい。
「じゃあ、よろしく!」
そう言ってあっさりと教壇の前から離れる、入れ替わりに修斗が教壇前に立つ。
「俺の名前...はいらねえか。とりあえず、俺の能力は『疾走』って呼ばれるものだね。能力は、そのまんま。クッソ足速くなったり、脚力が怪物みたいに上がる異能なんだけど...」
「なんだけど?」
席の方を暁人が進行も務め、みんなを代表して疑問を投げかける。
「端的に言うと、固有の武器も作れるっぽいんだけど」
「・・・え?」
ちなみに。この単純な疑問符。浮かんだのは暁人だけであった。ほかはさも当然のような顔してる...え、マジで?
「・・・・・いや普通だろ」
「え...え?」
ちょっと待って。流石に混乱する。
「俺ないんだけど。」
「...推測だけどさ。」
暁人が聞くと、聖が口を開く。
「暁人は作る異能だからじゃないの?」
「・・・武装を?」
「そうだね...ほかにもいるのかはわからないから、なんとも言えないし、どこまでできるのかわからないんだけど...もしかすると何でも作れる異能なのかもしれない。だからこそ、固有のものがないんだと思う。」
「あー...なんか言ってたな。確かに。そんなこと言われた気がする。」
納得したけど...なんか悲しいな。
暁人が悲しみを感じているとき、聖はまた別のことを考えていた。
(もし、何でも作れるのなら...いや...でも...)
少し考え、思案する様子の聖。周りは空気を読んで、適度にざわざわ。
「あー、うん。」
少し適当に声を出して、軽く間を推し量る修斗。その様子にみんな教卓の方を向き直り、修斗の方を注視した。
「まぁ、これで終わりだけど...まぁ、一応格好はこんな感じ。」
教卓の横側に移動して、体を軽く動かし、自身の格好を見せる。
見た目で言うと、青銅...だと思われる鎧に、背中にはよくわからん材質の槍、ちょっと豪華な装飾のされた盾をもっていた。青銅の鎧といっても、重々しいようなものじゃなく、軽量型の籠手やブーツみたいなものに、ぴったりフィットしてる感じのものだった。
ついでに彼自身の説明をば。彼自身は、身長は暁人よりも少し小さくて、少々オタク気質のある人物である。だからこそ、暁人とも仲がいい。決して地味ではないが、派手ではない。
また、外見的にはメガネをかけていて、少し色黒。髪の毛は...染めてなくて真っ黒だ。えらいな。
そんなことはさておき。
「えーっと、その槍と盾が固有武装か。」
「そうそう。」
暁人が確認をし、修斗は首肯する。
「にしても...」
「ん?」
少し思案した様子で暁人は言う。
「ピッタリすぎねえ?きつくないの?」
軽装ということは、無駄な場所を削る必要がある。そのためには、ピッタリに作ることにはなるのだが...そうは言えど、完全にぴったりに作ってしまうと、関節も動かなくなってしまうため、ある程度は猶予を持って作るべきである。
「武装ってさ、魔力で作られるじゃん。」
「うん?...あー、そういうことか。可変なのな」
「そうそう。お前のもそうなんじゃない?」
「知らん。」
「それは草」
いつもの会話に戻ってしまった。いかんね。緊張感が抜けてしまう。
「んじゃあ、まぁ、疑問は浮かぶたび一つ一つ潰しながらやってくから、ゆったりになってしまうかな?」
「もう少しテンポよくいかない?」
流石に口を出しますよね。なつさん。
「それもそうだね。じゃあ、あっさりと行こう。」
というわけで、ここからダイジェスト形式になっていくけど、お許しを。
まずは、ある程度親しいような連中とか、能力がわかってる組から。
志島 瞬。能力は『軍団』。恰好は、こちらも、鎧姿。多分鉄製なのかな?ただ、固有武装が剣で金色だったりするんだけど。
ちなみに、能力は軍勢を呼び出すものだけど、今は最小の隊列の、ファランクス、36人しか出せないらしいよ。
外見的には、身長が小さく、運動神経はまぁまぁよい。優しい顔立ちをしているが、割と辛辣である。ただ、なんだかんだ常識人だが...茶髪に染めてる貴様は敵だ。
次に、鷲崎 留目。能力は『大鷹』。恰好は、なんか毛皮を羽織に着てるけど、半袖ハーフパンツを下に着ている。革製かな?さすがグライフ。
中肉中背...というと聞こえは悪いが、身長こそ低くないものの、少しお腹周りに肉がある分、どっしりとした印象を与える。基本明るく、髪の毛もワックスで固めているみたく上がっているが、髪色は黒いし、優しいし。いいやつです。運動神経もいいからね。
能力は身体の一部、例えば腕を翼に変えたり、逆に腕を足と鉤爪にすることもできるらしいよ。なんかちぐはぐだよね。本人曰く
「いや、グライフっていろんな形があるからさ。二本足として描かれることもままあるんだけど。四足に翼の時もあるから...どっちもできるんだと思う。」
とのこと。姿かたちは伝承によって変わるから解釈次第ではどっちにもできるってことなのか。怖いな。
ちなみに、ひじりんはこの時、
「この世界って解釈で何でもできるから、いろんな形を試せるようになってるのかもね。」
って言ってた。試したところで、ここ以外に使うアテはないと思う。
そして、そんなことを言ってたひじりんは白衣を着ている。下は、赤シャツ...?と、黒の長ズボン...真面目かな。固有武装はないんだって。理由は想像つくからとのこと...情報共有をしてほしいけど、まぁ、顔が暗かったから、聞かなかった。
能力は『万術者』。本人の考察通り、ありとあらゆることに対する、知識を会得するものなんだって。ただ、あくまで才能ではなく、努力の末のものをあらかじめ獲得しているってだけらしい。
あと、言ってしまえば、机上で学べる範囲なんだって。つまり、知ってても実現できないような能力なんだとさ。流石指揮官型(暁人が勝手に言ってるだけだが)。
...あとお前いつの間に髪色青くしてたんだ。(まぁ、御伽噺に来た時から青かったけどな)メガネは変わってないけどさ。
そしてこの三人以外だが。
雨月 稜。能力は『戦旗』。鼓舞する力らしくって、めっちゃ前線で味方のために旗を振らなきゃいけない能力だとのこと。本人の性格もあって辛そう。
恰好は、鎧姿。似通ってるのは志島との格好だ。というか、正直まるで同じに見える。ってかこの二人組ませたら強いんじゃね?
固有武装は戦旗の能力表記に違わず、旗...なんだけど...先端が鋭い。昔の旗ってこんなのなんだね。
見た目は...まぁ、ちょっと暗い感じの髪型...少しおろした感じの髪型。正味邪魔そう切り落としてえ。そしてメガネをかけてい...ってメガネみんなかけてんな。視力悪すぎかな?
そして次に、高木 蒼衣。能力名は『雷電』。読み方ひらがな組だ。うれしいな。
彼は身長こそ一番低いが、運動神経はまま高い。あと顔立ちが幼い。女装がいけそう。髪はスパッと短いがな。
能力自体は電気を操るもの。あと、魔力を電気に変換する能力らしいんだけど...これ、超強いっぽい。というか、ぶっちゃけライフライン任せられるやん。攻撃にも使えるし。
ひじりん曰く。
「蒼衣と暁人。そんであと水の使い手がいたらライフライン完成だな。」
とのこと。ちなみに暁人自身は好奇心と身体能力から前線に出る気満々だと伝えたら少し怒られた。主にひじりんとなつさんに。
それでも出るつもりだが。熱に関しては、多分蒼衣だけで何とでもなると思うんだよね。
まぁ、その口論があったけど、少ししてから。なつさんが自己紹介を続けた。
岩金 菜月。彼女の能力名は『創造。』また、ひらがなだ。法則でもあるのかな?
創造という名前が付くだけあって、その力はすさまじい。無から、樹とかも作れるし、地面の形状を変えることで、武器のように操ることもできるらしい。錬金術師かな?
ただ、すでに物質が存在する場合、その物質の置換はできないんだとか。まぁ、そりゃ産み出す能力だからね。しょうがない。
なつさんにも、固有武装はない。見た目に関して言えば、まぁ、さっきも見ててスルーしているんだけど。どっかの妖精の如きドレス姿であった。あの、ちょっとお腹冷えそうなデザインの。
ちなみにだが、なつさんはお胸が大きいわけではないが、一切ないわけではないので、個人的には眼福ではある...ナイスエロクソジジイだな。
なお本人はこれ以外の服を作ろうか迷ったらしいが、まぁ、せっかくだし着ておくかとのこと。似合ってるしいいんじゃないかな。
彼女は地毛が茶髪なのと黒縁メガネをかけているため、なんか、恰好がちぐはぐ...いや、むしろこれでいいのでは。
そうしてまだまだ、自己紹介は終わらない。
紹介が長いって?本当にな。
本当に申し訳ないです。ぶっちゃけ見た目の話ってさ。どうしていいかわからないのと、どこにねじ込もうか迷ってるんで…うん。次上げるときにキャラクター名鑑みたいなの作れたらいいな。
・・・無理だな。




