またいつか
互いに抱きしめあったまま、彼は静かに語り始めた。
「─それでも、ボクはティナの体を優先したいんだ。ティナが体調を崩すのは良くない。なにより君が体調を崩せば、カミ達の封印が脆くなる。だからボクは、この夢を終わらせようと思う。」
互いの体の温もりが離れ、私と向かい合った彼は先程まで震えて泣いていたとは思えないほどに、いつもの、いや、いつもよりもとても逞しく、美しく見えた。
彼の深い湖の底のような青色の瞳は、涙に濡れながらも、固い決意がその瞳に宿っていた。
私はその瞳に魅入られながらも、気持ちを押し殺し決意する。
「少し…いいえ、かなり寂しいですが、仕方ないですね。」
「一生会えない訳じゃないよ。近いうちにまた会える。」
「そうだといいのですが。貴方はいつも、目を離すとすぐ何処か遠くへ行ってしまいますから」
たわい無い話をして、クスクスと互いに笑い会った後、少しばかり沈黙が訪れる。
「いつまでも待っています。ずっと、ずっと。」
「すぐに会いに行くよ。出来れば、君がカミ達を暴走させていない時に。」
「そんなしょっちゅう暴走させてるかのようないいかたはやめてください。」
溜息をつきながらそう言い返すと、彼はハハッとさわやかに笑い、そしてすぐ私を見つめる。
「まだティナといたいけど、もう行かなきゃ。君を呼んでいるひともいることだし」
「え?誰です─」
そう、言いかけた時。
彼から抱きしめられて固まった。
驚いて声も出なかったけれど、じわじわと心地よくなってくる。
「ボクを信じて待っていて。」
「…はい。また、いつか会いましょう。」
彼から来た時と逆で光が漏れ始め、薄く、そして儚く消えてゆく。
そして私も、彼が微笑みながら消えていく瞬間と共に意識が遠のいていく。
そういえば、彼の名前─聞いてなかったな…
そんな今更のことを考えながら、意識は途切れて行った。
─眩しい光と共に、誰かの声が聞こえる。
うっすらと目をあげれば、眩しい日差しが私を迎える。
そうして私は、現実の世界へと戻ってきたのだった。