せおうべきモノ
彼を見つめていたままの私は、思考だけ別のことを考えていた。
たしかにここ最近は夢から目が覚めると、封印の術式が消えかかっているのは分かっていた。
起きる度に術式を自分の体に刻み、私の中にいるカミ様達を出さないようにする…そうするようになったのは全て、この夢を見るようになってから─あの出来事があった日からだった。
私の思考を見透かすかのように、彼は悲しそうな表情を浮かべる。
「…すべては、ボクの責任だ。こんな夢を見せて、君に負担をかけすぎている。」
気持ちを言葉に表すことが出来なかったのか、ただひたすら私に対して彼は謝罪をしていた。
肝心な私はと言うと、たとえ謝罪でもこんなに喋る彼が貴重過ぎて、他人事のようにそれを聞いていた。
だが、彼が頭を下げた所を目にした瞬間、ハッと我に返る。
「面をおあげ下さい。なぜ謝るのですか?謝るほどの事じゃありません。逆に私は感謝しています。その事をどういう経緯で知ったのかは存じませんが、謝るのではなく、私と共にいて嫌じゃなかったかどうかが知りたいです。少なくとも私は、あなたに出会ってからは受け入れられなかったことも苦しかったことも、全てあなたがいてくれたから乗り越えられた。夢の中でも、貴方と一緒にいられた時間が、心から休める、唯一の居場所だったんです。だから私は、カミ達が閉じ込められなくなってくるまでここにいたいんです。」
彼に歩み寄りながら、今にも泣き出しそうな子供の顔のような、そんな彼の頬を両手で包み、抱きしめた。
「…無理にとは言いません。ただ、私はあなたと一緒にいたい。それじゃダメですか?」
彼の顔は見えないが、微かに震える身体を強く、しかし優しく包み込むように抱きしめる。
彼も静かに涙を流しながら、抱き締め返してくれる。
今までは大きく遠い存在のように見えていた彼が、とても小さな存在に見える程に。
今の彼は、とても脆かった。
そして彼は静かに、そのまま語り始めたのだった。