魔将軍と初友達
「このプチュラの、美味しいな」
「お口に合ったのなら何よりです~」
ヴェル君はキッチンのテーブルで嬉しそうにプチュラタルトを召し上がっていらっしゃいます。お腹の中にはすでにバナナタルトが収まってます。ご飯前だから一つずつですよ!というと悲しそうな顔をしましたが、残りは食後に食べていいですよと、言うと破顔しました。イヤ~本当にスイーツ好きですね。
「坊ちゃまがここまで甘いものが好きだとは、知りませんでした」
ええ?昔からじゃないのですか?ルラッテさん。
「坊ちゃま昔から必要最低限の食事しか召し上がりませんでしたし、甘いモノを食べている記憶すら無いですね」
「ヴェル君、うちですごく召し上がりますけど?」
ルラッテさんはうふふと、頬を染めて微笑まれました。
「だって私もそうですけど、姫様のお料理はとても美味しいのですよ~幸せに味があるとするなら、姫様のお料理みたいな味だと思います!」
キャッ言っちゃった!みたいなポーズでルラッテさんは、はにかんでおられます。
いやいやいや、あなたアラフォーですから、いや私も人の事を言える年齢ではございませんが、ポカリ様と魂の同世代ですしね。
幸せの味ねぇ……自分が食べるの好きだから、食べる人にも喜んでもらいたくて、某パン職人のおじさんみたく、美味しくな~れと思いながら作っているというだけですがね。
とりあえず晩御飯の下ごしらえを始めます。
とり肉(多分鶏っぽいはず)をヴェルナ(ビール)とニンニクのみじん切りと一緒に混ぜ込みレイゾウハコで寝かせておきましょう。
よし、後はモロンとモル細かくみじん切りにします。これは炒めるだけですので、このまま置いておきます。
さてスープに行きましょうか、とり肉の骨を入れてチキンスープの素を作りましょう。にんにくと鳥の骨を炒めて後でお野菜と水を入れて香辛料で味を整えます。後は煮込むだけですね。
最後にカラメルプリンの追加を作っておきます。
急いで蒸して、ついでにパンの発酵をさせて(今日は食パンにしました。パンドミー!)大忙しです。
そして、コーンサラダを作っていると、玄関にお声がありました。
「あ、ジーニアスだ。行ってくる」
ヴェル君はイソイソと玄関先に向かわれました。
そういえばヴェル君、ラヴァ様とサバテューニ様を呼び捨てにされていますね?いつの間にそこまで親しくなられたのでしょう?
「姫様、根野菜のサラダの方は味付けはどうされます?」
「こちらはチーズにしましょうか?」
とか話しながら調理していると、ヴェル君がキッチンに顔を出されました。
「あのさ」
「なんでしょう?」
ヴェル君はチラチラ廊下を見ています。廊下にはラヴァ様とサバテューニ様、お二人の気配がします。なんでしょうか?
「ロブロバリント公爵を城に引き渡したら、その、ジーニアスとレンブロも晩御飯一緒に食べてもいい?」
これは!全世界の嫁(異世界を含む)が、旦那に言われたら迷惑だな~と感じることベストテンに入る言葉ではないですか!?
カデちゃん
今から会社の同僚連れて帰るから~
ヴェルヘイム
おいこら、こっちには段取りがあるんだよ?料理は下ごしらえと段取りがすべてなんだよっ!
「はい、畏まりました」
ついうっかりメイド口調になりました。ええ密かに心の中で料理のレシピを高速回転で呼び出しております。
ヴェル君は嬉しそうに、ありがとう~俺も城に一緒に行って帰って来るから~と出て行かれました。ソッと廊下を覗くと三人で肩を並べて小突き合って笑いながら歩いておられます。
「あらまあ、まさか坊ちゃまに初めてお友達が出来たのでしょうか」
なんだってぇ!?ヴェル君ってお友達、今までいなかったのぉ?
とりあえず……祝!ヴェル君初めてのお友達!
を、お迎えするために閉店時間ギリギリの市場に、転移魔法で移動し食材を買い集め、ルラッテさんと超特急で追加のお料理を仕上げました。いい仕事したぜ……私。
「只今戻りました」
「おかえりなさいませ、ヴェル君」
元一流のメイドですからね、完璧ですよ。ルラッテさんと並んでいい笑顔で、同い年トリオをお迎えしております。
いつもはキッチンで皆でワイワイ食べるのですが、今日は、お客様用の広めのダイニングへご案内致します。
「どうぞこちらへ」
流れるようにご案内して差し上げました。先に着席されていたオリアナ様が満面の笑顔で二十二才達をお迎えしています。
「まぁ!ヴェルのお友達なのでしょう?やだ~嬉しいっお友達がご飯一緒なんて初めてで……グスッ、ヒック」
オ、オリアナ様!泣くほど嬉しいのですね。うわっ!横でルラッテさんが、もらい泣きぃ……
これは私がしっかりせねばっ!
「さあ、家庭料理でお口に合いますか分かりませんが、どうぞお召し上がりになって下さいませ」
「ひ、姫様っ!こちらこそ急にお邪魔いたしましてっ」
サバテューニ様が慌てて騎士の礼をとってらっしゃいます。ああ、お気使いなく~
そして、お料理をダイニングに運び入れました。追加は、キノコクリームのパゲッテーナとジュウジコロッケです(新作)
イヤ~爽快だね!男の子ってよく食べるね!めっちゃお料理作ったつもりだったけど、今、追加料理モロンとジュウジのハンバーガー作っていますよ。
こちらはヴェル君たっての希望です。
よほどエーマントで食べたのが美味しかったのか、ラヴァ様達に自慢しまくっています。でもこれ「おれの嫁の料理、美味いだろ!」という、全世界(異世界を含む)旦那を見直した瞬間ベストテンに入る状況ではないでしょうか?
ぐふふ、もっと褒めてヴェル君。
ついでにロールパンの発酵させておこう。ぐふふ、クッキーも焼いちゃおうかな?
ちなみにオリアナ様はもうお風呂を頂いて休まれている模様です。ルラッテさんも休んで頂きました。すごく恐縮されましたけど、元気な二十二才に付き合ってたらいつまでたっても就寝出来ませんしね!
「はい、出来ましたよ」
ハンバーガー三個とモルのスライスチップ塩コショウ味、ヴォルナ三本。冷やしたヴォルナ用コップ。お野菜のピクルス。はい、どうだ!これが元メイドの底力だぁぁぁ!
「カデちゃんありがとう。コレ本当に美味しいよね」
ヴェル君は嬉しそうに頬を染めてます。イケメンの照れ顔、心のスクショに頂きました!
「うまっ!姫っめちゃ美味いっすよ!これたまんねぇ~」
「本当です!これは最高ですね。このモルのチップもお酒が進みますね~」
ラヴァ様とサバテューニ様も大喜びです。良かった、メイド冥利につきますね。おっといけない!今は元王女殿下でした。
皆様に同席を勧められましたので、有難く三人様の晩酌に付き合い、私も遅めの夕食を頂くことにしました。
うん、ジュウジのコロッケ美味しく出来てる。これ今度クリームコロッケも作ろうかな~
「あ、そうだ!姫様」
「なんでしょう、ラヴァ様」
「フェルトさんが言ってた魔力治療、後でいいんでお願いしちゃってもいいっすか?」
ああ、あれね。いいよいいよ~
ラヴァ様が掻い摘んで事情を説明されています。サバテューニ様も驚いてます。
「えええ!?お前シュテイントハラルの血筋なのぉぉ!?」
「しらねぇよ、まだ分かんないよ。フェルトさんがそうだっつーだけで。ばぁちゃんに明日にでも聞いてみるわ」
「ラヴァ様のおばあ様、治療術士でいらっしゃるのですよね?」
「あ、はい。確かにシュテイントハラル出身で、ばぁちゃんのばぁちゃんが公爵家の末娘らしい?それくらいしか知らないっすね」
「国のお父様に聞いたら何かご存知かもですね」
「あ〜国王陛下なら何かご存知かもな」
「そういえばさ」
と、サバテューニ様が会話に入られます。そういえばヴェル君静かですね?
横を見ると、必死にハンバーガー食べてますね!
「俺もフェルトさんに『おいっ青いの。お前は魔力の廻りが悪いの。詰まりやすいようだ。魔力消費量の多い雷系の魔法を使えば廻りが改善するぞ』て、あの可愛い体でウルッと見上げながら言われた」
フェルトさんっ!サバテューニ様は青ですか。いえ、確かにそうですけどね。
お食事も終わり皆様でお茶を飲んでおりました。
そして、そろそろ治療を始めましょうか……と、立ち上がった途端、視界が暗くなりました。
一段階明かりが落ちたみたいな感じです。
「!」
「これは、カデちゃん大丈夫」
ゴン……ゴチッ……
音がしてテーブルの方を見るとラヴァ様とサバテューニ様、二人ともテーブルに突っ伏して倒れていらっしゃいます。
「なっ!何が!?」
ヴェル君が慌てる私の肩を抱き寄せて、摩ってくれます。
「大丈夫、これは父上が母上に会いに、ここに来ている合図なんだ。人が居る時は極力来ないようにしているみたいだけど、どうしてもって時は、周りの人間を眠らせるんだ」
「ね……眠っていらっしゃるだけなんですよね?」
「うん眠っている。朝までぐっすり」
ああ……びっくりしました。でも眠らせてまでポカリ様どうしたのでしょう?
「ん?う~ん、まぁ夫婦の時間の為かなぁ」
あははははぁ!聞いた私が恥ずかしいですっ!すみませんでしたっ!




