魔将軍とユタカンテ商会3
宜しくお願いします
ヴェル君は珍しくニヤニヤ笑っています。その笑い嫌ですね、腹黒様達約二名を彷彿とさせます。
「昨日、カデちゃんが説明してた……コレのやり方」
コレのやり方?昨日?昨日あったことの記憶を辿ります。
え~と昨日はヴェル君に会って、ポカリ様に会って、お姉様夫妻に夜に会って……
「記憶出来ていれば目晦まし、も可能なものだ」
ヴェル君は益々ニヤニヤしています。……ああっ!
「幻視の術!」
「正解」
目晦まし……確かに、でもよく見ても奴隷印が見えない。いえ?よく見たら?
「ヴェル君、定期的に幻視の術を掛け直ししてますの?いえ、これは何か別の魔法が複数で……」
ヴェル君は破顔しました。
「うん……まぁだいたい正解。シャツの中に魔法陣式を張り付けている。幻視と後、時間魔法の半永久継続指定系の魔法」
「つまり……タイマー付の幻視の術か」
「タイ?」
「あ、いえ。その魔法を継続しながら掛け続けるなんて、すごく膨大な魔力を使いますし、可能なのでしょうか?」
ヴェル君は、うん……と言いながら、なんとも言えない表情をしながら説明してくれました。
「何か複雑だが、ラブランカ王女殿下から逃れる為に自死しようとした話はしたが……で、昨日は自己防衛魔法で死ねないと言ってはいたが、つまりは正確には魔神の血が肉体的には自死出来ないほどに、再生能力が高かった、という訳でな」
な、なんと!流石とはいい難いですが、ポカリ様の血筋ですかっ!
「で……魔術凝りを起こそうと研究する前に、死ねないなら逆に自死しているように見せれないかなと考えて」
「自死しているように見せる?」
「ラブランカ王女殿下は、それほど魔力は高くないから、幻視で死んでるように見せたら騙されてくれるかなとか。そういう意味では単純で騙されやすい方なので」
めっちゃ苦肉のそして、さり気なくラブランカ王女殿下をディスってませんか?ヴェル君。
「魔法の半永久継続化を研究して、魔力を自然界から吸収する方法を組み込んでみた。試しにラブランカ王女の前で死んだフリをしてみたのだが……」
「ど、どうなりましたか?」
ヴェル君には笑えない状況ですが、結果が気になります〜!
「死んだ!と、王女に大騒ぎされて城の術者にバレた。城の術者も案外見る目があるんだなと見直した」
いやいやいやぁ~そこ褒めるトコ?それに城付き術者まで、ついでにディスってますね。
「まあ結果、死んだフリは上手くは行かなかったが、幻視魔法の長期使用の魔法術式は編み出せたし、レイゾウハコの氷室の魔力供給不足を補う方法の助けにはなれたな」
コレは結果オーライと言うのでしょうか。ヴェル君の犠牲の上に成り立っているのが、なんとも申し訳ないことですが。
私達はとりあえずお昼近くになりましたので、昼食を食べようと市場の飲食店が多い通りに来ました。
「何か食べたいものありますか?」
「甘い物」
やっぱりヴェル君はスイーツ男子でしたか!了解です!
私達はランチも出してくれる、スイーツが美味しいと評判のカフェに入りました。
……ですが物凄い違和感です。デカいヴェル君inラブリーカフェ。
ヴェル君は店内を見廻して目を輝かせていらっしゃいます。
あっ!そうです!当初の目的の一つ、好きなものを食べて……という目的がここで達成出来るのではないでしょうか?
「ヴェル君、好きなものなんでも頼んで下さいね!」
ええ……好きなものなんでも、とは言いましたよ?
だけど昼ランチ、追加でケーキ三個、プリンとパフェに似てるスイーツ、合計で七種類も食べるとは思わないじゃないですかぁ!
しかも今は食べ終えて外に出た路面店で売っていた、何かの肉串焼きの五本を食べています。
うぷっ……見てるだけで胸焼けが。まあ、食欲があるならいい事ですがではついでに、他の物欲の方を再度聞いてみましょうか?
「では、他に欲しいもの、やってみたいことはありますか?」
ヴェル君は即答しました。
「剣が欲しい。カデちゃんの護衛だしな」
おっ、いいですね!では早速参りましょうか!
そうしてやって来ました、武器屋さんが多い通りです。あちこちから金物を打ち直す金槌の音がします。活気がありますね〜
武器屋さんの善し悪しは私には分かりませんので、ヴェル君と連れ立って一番手前の店の前に立ちました。
「とりあえず手前の店から見てみます?」
しかしヴェル君は一言で切り捨てました。
「ここは、ダメだな」
ええっ!?瞬殺ですかっ!?な、何がダメなのでしょうか?
「店の前に研石を炎天下に置きっぱなしだ。おまけにガラス窓の前に備品や道具が山積みだ。入口の扉が煤汚れている」
ヴェル君、あなたどこの姑さんですか?
「ちょっとエミコさん(仮名)窓枠にホコリが残ってましてよっ!」的なノリでしょうか?私の家、掃除してたっけ?ヴェル君に見られたらヤバい。
「武器を鍛えるのに必要な道具を乱雑に扱っている店は、商品も雑に扱っている。剣は武人に取って命の次に大事なものだ」
さ、流石……ロージ様曰く、犯し難き領域に居られる剣聖様、着眼点が鋭い。てか〇ッテンマイヤーさんみたいだなんて思ってませんよ、思ってませんとも。
吟味に吟味を重ね(姑チェックとも言う)やっと店を決めた、ヴェル君と私はある一軒の武器屋の扉を開けました。
「はい、らっしゃい!」
流石、ヴェル君のお眼鏡に適ったお店なだけはあります。店内は清潔です。武器の並んだ棚も大きさ順、種類別に綺麗に展示されています。
早速武器を手におじさんと話してるヴェル君を横目に、私は店の隅に並んだポーチや小袋が置いてある棚に近づきます。
わ~ポーチ可愛いですね~花柄です。
「お、その小物ウチのかみさんが作ったヤツなんだ、良かったら見てやってくれな!」
奥様作なのですね!この花柄のお財布めっちゃ可愛いです!買いますよ〜うふふ。
「毎度ありー!」
私は可愛いお財布を見つめ直しました。やっぱり可愛いけど……勿体ない気がしない?よしっ!
「こんなに可愛いのに、もっとお店の前に出しては如何でしょうか?」
私の話を聞いて、おじさんは苦笑いをしています。
「いや〜カミさんさ、あくまで趣味の範囲でやりたいんだってさ~店の前に看板下げるには公所に届け出がいるだろう?」
ああ、なるほど……
正式に公所に販売許可を届けでたら、事業者税を店舗面積と販売種別に応じて支払わねばなりませんしね。公にはしたくないけど、売れて欲しい。ジレンマですね。
私はその時、ビカッと閃きました!そうそうあれだあれだぁ!
「おじさん!私、ユタカンテ商会の商品開発をしているものです」
「おおっ、ユタカンテさんのとこかい?」
私はおじさんににじり寄ります。グイイィ……
「公所に届ける看板じゃなくて店内に可愛いカバン置いてまーす♡みたいな、お知らせを書いたモノを店先に立てかけて設置しては如何でしょうか?ウチに是非ともお任せをっ!」
更におじさんににじり寄ります。おじさんは仰け反りながら、おお、まあ出来栄えを見させて貰えるなら……と了承して下さいました。
よーし、そうと決まれば試作品を作りますよぉ!
丁度ヴェル君も気に入った剣を見つけたようでそちらを購入して、ユタカンテ商会に戻り武器屋の看板の案を雑貨部門の職人に話しました。
そして再び市場に戻り、食材を購入してから帰路に着きました。
今日は色々仕事の段取りが上手くいって足取りも軽やかですよ~
やがて、あと少しでお家という所でヴェル君に肩を掴まれました。
何か……緊張されています?
「家の中に侵入者だ」
「!」
私は息を飲みました。ヴェル君は私を抱き寄せると転移しました。一瞬でうちの家の前です。
やだ!?家の周りの防御障壁が破られてる。
ヴェル君は、あ!と声を上げると躊躇わずに玄関扉を開けました。
「ヴェ!?ヴェル君っ!あ、あぶな……」
「父上、いい加減にして下さい。不法侵入ですよ」
玄関先には可愛く手を振っているポカリ様が立っていた。
侵入者はポカリ様ですか。驚かせないでよ……




