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風の又三郎(3)

 つづき、つづき。

 前回どこまで書いたのかわからなくて、投稿するときに困っちゃう。

 みんなはもういっぺん前へならえをしてすっかり列をつくったのだが、じつはあの変な子がしているのか見たかったようで、かわるがわるそちらをふりむいたり横目でにらんだりしたのだった。するとその子はちゃんと前へならえでもなんでも知っているらしく平気で両腕を前へ出して、指さきを嘉助のせなかへやっと届くくらいにしていたものからして、嘉助はなんだかせなかがかゆく、くすぐったいというふうにもじもじしてしまった。


※『いっぺん』が『一変』なのか『一遍』なのかわからない

※『すっかり』は『見えない規則に従わされるようにして』みたいな意味?


「直れ」先生がまた号令をかけた。

「一年から順に前へおい」

(一年から……前へすすめ、だ)

 まもなく二年生もあるき出してみんなの前をぐるっと通って、右手の下駄箱のある入り口にはいって行った。四年生があるき出すとさっきの子も嘉助のあとへついて大威張りであるいて行った。前へ行った子もときどきふりかえって見、あとの者もじっと見ている。

 まもなくみんなははきものを下駄箱に入れて教室へはいって、ちょうど外へならんだときのように組ごとに一列に机にすわった。さっきの子もすまし込んで嘉助のうしろにすわる……。もうおおさわぎになった。

「わあ、おらの机さ石かけはいってるぞ」(ちょっと、ぼくの机に石ころが入ってるよ!)

「わあ、おらの机代わってるぞ」(おい、おれの机はなんか代わってるぞ)

「キッコ、キッコ、うな通信簿持って来たが。おら忘れで来たぢゃあ」

(キッコ、キッコってば! あんた通信簿もってきた? うがあ、うち忘れたあぁぁ!)

「わあい、さの、木ペン借せ、木ペン借せったら」

(なあ、さの。木ペン貸してくんねえか? つうか貸せ)※木ペンは鉛筆のこと? 万年筆?

「わあがない。ひとの雑記帳とってって」

(だめだよ、ひとの鉛筆をとっちゃあ……)

 そのとき先生がはいって来たのでみんなもさわぎながらとにかく立ち上がって、一郎がいちばんうしろで、

「礼」

 と言ったのだった。

 みんなはおじぎをする間はちょっとしんとなっていたが、それからまたがやがやがやがや、言った。

「しずかに、みなさん。しずかにするのです」先生が言った。

「しっ、悦治、やがましったら、喜助え、喜っこう、わあい」と、一郎がいちばんうしろから

あまりさわぐものを一人ずつしかっってやった。

(こらぁ悦治やかましいぞ。喜助に喜っこもだ、おらぁ!)

 みんなはしんとなった。

 先生が言った。

「みなさん、長い夏のお休みはおもしろかったですね。みなさんは朝から水泳ぎもできたし、林の中で鷹にも負けないくらい高く叫んだり、またにいさんの草刈りについて上の野原へ行ったりしたでしょう。けれどももうきのうで休みは終わりました。これからは大二学期で秋です。むかしから秋はいちばんからだもこころもひきしまって、勉強のできる時だといってあるのです。ですから、みなさんもきょうからまたいっしょにしっかり勉強しましょう。それからこのお休みの間にみなさんのお友だちが一人ふえました。それはそこにいる高田さんです。そのかたのおとうさんはこんど会社のご用で上の野原の入り口へおいでになっていられるのです。高田さんはいままで北海道の学校におられたのですが、きょうからみなさんのお友だちになるのですから、みなさんは学校で勉強のときも、また栗拾いや魚とりに行くときも、高田さんをさそうようにしなければなりません。わかりましたか。わかった人は手をあげてごらんなさい」

 すぐみんなは手をあげた。その高田とよばれた子も勢いよく手をあげたので、ちょっと先生もわらったが、すぐ、

「わかりましたね、ではよし」

 と言ったため、みんなは火の消えたようにいっぺんに手をおろした。

 ところが嘉助がすぐ、

「先生」

 といってまた手をあげた。

「はい」先生は嘉助を指さした。

「高田さん名はなんて言うべな」

「高田三郎さんです」

「わあ、うまい、そりゃやっぱり又三郎だな」

 嘉助はまこと手をたたいて机の中で踊るようにしたので、大きなほうの子供らはどっと笑ったのだが、下の子どもらは何かこわいというふうにしいんとして三郎のほうを見ていたのだった。

 先生はまた言った。

「きょうはみなさんは通信簿と宿題をもってくるのでしたね。持って来た人は机の上へ出してください。私がいま集めに行きますから」

 みんなはばたばた鞄をあけたりふろしきをといたりして、通信簿と宿題を机の上に出した。そして先生が一年生のほうから順にそれを集めはじめた。と、そのときみんなはぎょっとしてしまった。みんなのうしろのところに、いつからか一人の大人が立っていたのだ。その人は、白いだぶだぶの麻服を着て黒いてかてかしたはんけちをネクタイの代わりに首に巻いて、手には白い扇をもって軽くじぶんの顔をあおぎながら、少し笑ってみんなの見おろしていたのだ。これはこれはみんなだんだんしいんとなって、まこと堅くなってしまった。

 ところが先生は別にその人を気にかけるふうもなく、順々に通信簿を集めて三郎の席まで行くと、三郎は通信簿も宿題帳もないかわりに両手をにぎりこぶしにして二つ机の上にのせていたのだ。先生はだまってそこを通りすぎ、みんなのを集めてしまうとそれを両手でそろえながらまた教壇に戻ったのだった。

「では宿題帳はこの次の土曜日に直して渡しますから、きょう持って来なかった人は、あしたきっと忘れないで持って来てください。それでは悦治さんと勇治さんと良作さんとですね。ではきょうはここまでです。あしたからちゃんといつものとおりのしたくをしておいでなさい。それから四年生と六年生の人は、先生といっしょに教室のお掃除をしましょう。ではここまで」

 一郎が気をつけ、と言いみんなはいっぺんに立った。うしろの大人も扇を下にさげて立った。「礼」

 先生もみんなも礼をした。うしろの大人も軽く頭を下げた。それからずうっと下の組の子どもらは一目散に教室を飛び出したが、四年生の子どもらはまだもじもじしていた。

 すると三郎はさっきのだぶだぶの白い服の人のところへ行った。先生も教壇をおりてその人のところへ行った。

『きっと忘れずに持って来てください』を

『きっちり忘れずに持って来てください』にしようとしたけど、やめた。


 これも『きっと』を変えられない。『相手に確かめる様子』って意味が抜けちまうんだ。


 ツイッターでも言ったのですが、こういうのがほんとうに多い。

 特に副詞(?)で現在あたりまえのように使われているものとは異なっていたり、「そんな意味もあったの!?」ってのばっかり。


 うーん、難しい。

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