怒りが止まらなくなる千尋。
前話のつづきです。
抱き締められていた、千尋に。夏菜はこらえきれずに泣き出す。もうこらえきれなかった。全身で彼に甘えてしまいたい、泣き出したまま全てを受け入れてほしいと思うまでに。彼女の泣き声と華奢な体を抱き締めていると段々と彼にも力が入る様に強く抱き締めてしまう。「ちょっと、痛い。」その声にハッとした千尋は「すみませんっ!」と慌てて顔を赤くしながら体を離す。「どうしたんです?一体?」千尋は不思議に思い、尋ねてしまう。「わたしがわるいのぉぉぉ。ぜんぶわたしが・・・!」驚きつつも最後まで彼女の話を聞いた。チクタクチクタクと部屋の時計の音が響くように時が過ぎる。「あのやろう・・・。マジコロス!」千尋は珍しく怒りでいっぱいになる。怒っている彼の顔に驚く夏菜。慌ててもとの優しい千尋に戻るようにと宥めようとする。「これが黙っていられますか?鈴良を妊娠させてその上夏菜さんをこんなに泣かせるなんて。」こんなに怒っている彼を見るのは初めてだった。「悪いのは私なのよ私がちゃんとしてたら・・・。」「いえ、そうじゃないでしょ。何言ってんですか。夏菜さんなんも悪くないですよ。悪いのは全てあいつだ。」今にも奴を殺しかねない様子の彼に恐れおののく夏菜。青ざめて更に落ち着かせようと宥める。が、千尋は怒りを抑えきれない。「マジコロス!」立ち上がって振り返り、部屋をあとにしようとする。「夏菜さん、でもよかった。元気そうで。病気なのかと心配した。それだけはよかった。」振り向き様に少しの笑顔で彼女を安心させようとする。多分、怒りながらも彼女のことが愛おしいという思いが彼をこうさせるのだろう。「プレゼントは枕元に置いていますから、落ち着いたら開封してくださいね?じゃあ。」静かにその場から立ち去る。彼が去った後も彼女は余韻に浸るように自分の顔に手を触れる。(あんなに嫌な態度を取ったのに、私にあんなに優しくしてくれるなんて・・・。)心底彼に惚れてよかったと彼女は思っていた。廊下を歩く千尋の目は殺人者のように殺伐としている。その様子を端から見ていたブラッディーは恐る恐る彼に尋ねた。「何する気ですか?」横目でブラッディーを見る千尋は黒い微笑みを浮かべ、「ちょっと付き合ってくれるか?」と指でクイクイとした。ひいいーと恐れおののくブラッディー。果たして千尋は何を考え、何を企んでいるのか・・・。
やっと千尋が全てを把握するところまで書けました。次回からどうなるか色々思案中です。




