女難の相が出ていたらしい。
前回の続きです。だいぶ時間が開いてしまいましたが、
楽しんでいただけたらこれ幸いかと・・・。
姉さんと名乗る女性が突然引き戸を開けてご登場。
「相変わらず元気そうね~?夏菜。」
フフンと陽気な口ぶりだけども少しばかり
小馬鹿にしたかの様な笑い方で夏菜さんに話しかけている。
「姉さんもね・・・。」
不貞腐れる様に真横を向いてシカトする夏菜さん。
こんなに余裕のなさそうな夏菜さんは初めて見た気がする。
(いやまあ、そもそも出会って数日しか経ってないけども)
「あんたにいい物あげようかなと思ってのご帰還よ?」
そう言いながら財布から何枚か「お札」をひらひらと
取り出して夏菜さんの顔を「それ」で叩く。
一瞬・・・、空気がこわばるかの様に静寂が・・・。
一瞬だけの沈黙の中で夏菜さんは「それ」、つまり
「お札」を持った「お姉さま」の腕を突っぱねた。
「あらまー。かあーわいくないのは相変わらずね~?」
いつもこの様なやりとりをしているのならば、
それはそれで凄いことだと思ってしまう・・・。
あっけにとられていた僕に向かって、「お姉さま」とやらは、
「勿体ないからもうこの子にあげるわよ~?いい~?」
「勝手にどうぞ。私は知らない。」
更に突っぱねる夏菜さん・・・。
「ふ~む・・・?」お札を片手に数枚持ったその人は、
僕の顔をまじまじと見てくる・・・。
大人の女性の色気にクラッとしそうになるから
あんまり近づかないでほしい・・・。
香水の香りが僕の鼻をくすぐる様な感覚で赤面する。
それを見ていた夏菜さんは・・・。
なんとなく冷たい目で僕を見た・・・。
というかあれは「軽蔑の目」だな・・・うん・・・。
「君、あの子に「ここ」に毎日来るように言われたの?」
唐突に僕に話しかけてくる・・・。
と同時に、驚きが後からじわじわと起こった。
「え?!なんでわかったんですか?!!」
思わず聞き返してしまった。
更に深く僕の顔を覗き込む・・・。
サングラスを外した目はやはりどことなく夏菜さんの
面差しに似ていて、やはり姉妹なんだなと納得する。
「君。女難の相出てる・・・。」
更にまだまだ追及するかのように見てくる・・・。
心の中やら何やらを見透かされてそうなそんな感じに。
「今日あたりに帰り際、「女難の女の子」に出くわすね。」
「・・・はあ・・・?」
僕はバカみたいな声が出てしまった。
だって何が何だかわからないんだもん。
ニコッと笑いかけてきて思わずこちらも苦笑いしていたら、
「はい。ではこの「お金」は「料金」として私が頂きます。」
そう言いながら手に持っていたお札を財布にしまい込む。
何が何やらわからない・・・。苦笑いすら固まって顔が引きつる。
「姉さんっ!余計なことしないでいいのよっ!」
夏菜さんが子供を叱る母親の様な怒り方をしていた。
「い~じゃな~い?使える「力」を使ってお金にして
何が悪いっていうの?あんただってやってみたら結構
快感よ~?儲かる儲かるって思えば楽しくなってきたり・・・」
その瞬間に夏菜さんは大声で怒った。
「この力で「占い稼業」なんてやってるのが恥ずかしくないのっ?!
私は絶対に貴方みたいな人と同じにされたくないっ!!」
厳しい口調と顔つきは女子高生の「顔」ではないようだった。
夏菜さんは立ち上がって引き戸を開けて奥の部屋に籠った。
「ま。気にしないで?あの子はいつもああだから。」と
眉毛をひきつらせつつも笑顔は絶やさない。そんな人の様だ。
「じゃ。遅いからばいび~?」と言って、
僕をつまみ出して門を閉めてきた・・・。
「なんなんだ・・・もう・・・」と
仕方がないのでとぼとぼと帰ろうとした。
「あー、疲れた・・・。もう、夏菜さんに嫌われたのかな?
僕は別に何もしてないけどさぁ・・・。うう・・・。切ない。」
泣きたくなるのを堪えながら家路につこうとする。
途中で横断歩道があったので信号が青になるのを待とうと
じっと立っていたら・・・。
突然「ドン!」と誰かに・・・いや、「何かに」
押された感覚がして体が道路に飛び出た・・・!!
「うわっ!!」
次の瞬間に高級な外車に轢かれそうになった・・・!!
死を覚悟したのも束の間。
外車からなにやら騒々しい女性・・・というか、
若いので「女子」と思われるが・・・。
なんか物凄く「派手な女子」だった・・・。
大きな羽つきの扇子を広げて、金髪クルクル頭に
でっかいリボンを付けた高飛車そうなお嬢様風の・・・。
僕は眼鏡を探していたがなかなか見つからない・・・。
あった・・・!と思って拾おうとしたら・・・、
その派手な女子が眼鏡を拾い上げて、僕の顔を驚いた様な
顔で見てきた・・・。
「琴音の白馬の王子様をとうとう見つけましたわっ!」
と、その派手な女子・・・、くどい外見と口調だが、
瞳をキラキラと輝かせながら僕の眼鏡を片手に持ち、
もう片方の手で僕の顎をクイッと持ち上げてきた・・・。
「爺やっ!このお方をわたくしのお屋敷にお連れしてっ!」
突然そう大声で叫びだす・・・。
僕はふと・・・。
さっきの夏菜さんと喧嘩していた「お姉さん」の言葉を
思い出して青ざめていた・・・。
「女難の相が・・・」
これの事だったのか~~~っ!!と・・・。
訳も分からないままお連れの男たちに担ぎ込まれ、
高級外車に乗せられてしまった・・・!!
続。
幽霊騒動やら、突然の美女による誘拐やら「女難」の連続の主人公。