物の怪神社と奇々怪々な人々。
前回に「うちに来ない?」と誘われて実際に
神社を訪ねた主人公の「千尋」。
どうぞ。お進みくださいませ。
気怠い午後・・・。
僕は土曜日だというのにこんなところで
何をしてるのだろうか・・・。
という切ない気持ちでゲッソリしていた。
畳に座りながらそう思っていたら、
赤い巫女装束を身に纏った凛とした面持ちの
綺麗な美少女・・・。
つまり、「巫女さん修行中の女子高生である、
神崎夏菜さん」がガラッと引き戸を開けた。
「綺麗です・・・。夏菜さん・・・。」
思わず声に出して言ってしまった僕。
愛用の扇子でバシンッ!と頭を叩かれてしまった。
「そういう余計な言葉はいりませんっ!」
どうやら不機嫌そうに見えるのは照れ隠しの様だ。
(そういう突き放したところが可愛い・・・。)
僕の顔をじっと見つめながら近づいてくるので
びっくりしていたら、僕のかけていた眼鏡を
むんずと取り上げてしまう夏菜さん・・・。(!!)
「あっ!困りますっ!!それがないと僕はっ!!」
「霊がいっぱい見えちゃうって寸法ね・・・。」
案の定周りにいた霊がうようよと見えてきて怖くなる。
ぞよぞよぞよ・・・。
見ない様に見ない様に心で念じて目をそらす。
一瞬チラリと見えたもの・・・。
それは・・・、白い死に装束姿の青白い顔をした
目の下のクマが物凄い、髪の毛の長い女性の姿が!!
「うわあああああああああっ!!」
僕が思わず叫ぶと・・・、
「きやああああああああああああっ!!」と何故か
霊の方が驚いた様子で僕よりも凄まじい悲鳴を上げた。
「大丈夫よ、この人・・・じゃなかった。
この幽霊さんは私の守護霊の「お幽さん」ていうの。
お幽さんは気が弱いタチだから驚かせると自分の方が
びっくりして怖がっちゃうのよね~?」
宥める様にその守護霊さんとやらの頭を撫でている夏菜さん。
「なっちゃん!あの男の子酷いですっ!私の顔を見るなり
お化けでもみたかの様に大声で叫ぶんです~っ!!
私の顔はそんなに酷い見た目ですか???!!」
お幽さんとやら・・・。
自分は思いっきり「霊」だというのに「お化け呼ばわり」
されたことが余程ショックだったのか泣きながら夏菜さんに
纏わりつきながら必死に聞いている・・・。
「お幽さんは綺麗だから大丈夫!!この男の子が
美意識がおかしいか、目が悪いからそういう風に見えただけ!」
真顔で必死に慰める・・・。
巫女さんが守護霊のお化けを慰めるって傍から見ると物凄く
滑稽な様子なので固まってしまうが・・・。
「僕。ものすごい悪者にされてる・・・?」と悲しくなる。
「私っ!なっちゃんが大好きだからっ!悪い男とかからでも
必死に追い払ってあげますからねっ!!」
泣きながら凄い形相で夏菜さんに抱き着くお幽さん・・・。
それを傍から見ていた猫耳と尻尾姿の美少女猫又妖怪の
鈴良ちゃんと妹の玉良ちゃんも近寄って
夏菜さんに纏わりつく・・・。
「鈴良も構ってほしいニャンっ!」
「玉良も玉良も~~~っ!!」
「はいはい、わかったわかった。みんなおいで。」
と、やや迷惑そうな顔でため息つきながらそう言う
夏菜さんも実はまんざらでもなさそうだ・・・。
(夏菜さんにとっては妖怪や霊は「普通のお友達」感覚
なんだよなぁ・・・。僕には理解できないけど・・・。)
そして、周りの子たち(霊や妖怪)を落ち着かせた後に、
僕の眼鏡をじっと眺めながら・・・。
「これ・・・。誰かに貰ったものだったりする?」
僕の方を振り返り、じっと見つめながら聞いてきた。
「あ、ええーと。はいっ!亡くなった祖母から貰ったもので・・・。」
祖母の記憶がよみがえる・・・。
生前に祖母が「あんたは私と同じで感受性が強いタチだから、
余計なものが見えてしまうんだね・・・。私が死んだ後も
ずっと大事に普段からかけていなさい。」とふふっと笑いながら
まだ小学生だった僕にそう言いながら手渡してくれた・・・。
それ以来、ずっとかけているが。
確かに気配はすれども姿までははっきりとは見えなくなったのも
驚くところだが、事実だ・・・。
「きっとこの眼鏡には貴方の「御婆様」の「念」がこもっている
のだと思うわ・・・。死して尚も貴方を守ってくれていたのね。
千尋くん。御婆様を死後も大切にしないと駄目よ?」と真面目な顔で言う。
「はい。返すわね・・・。」
そう言いながら僕の顔に近づいて眼鏡をそっとかけてくれた。
(いい匂いがする・・・。やっぱり好きだなぁ・・・。)
「ただまあ。姿は見えなくとも気配・・・というか・・・。
「霊障」がよくありそうだから毎日此処に来なさい?
キチンと祓ってあげるから・・・。でないと・・・。
変な死に方するかもしれないし・・・。」と怖いことを言い出す。
「へ・・・へんなしにかたって・・・???」
ビビってしまって変な声になるから情けない・・・。
「交通事故とか・・・変な病とか・・・。最悪の場合、
誰かに殺されるかもしれない・・・。「悪い物」を引き寄せて
しまいがちなタイプが陥るパターンというか人生のコースね。」
冷や汗なのかよく分からない汗が滲み出てくる・・・。
「僕・・・まだ死にたくないです・・・。」
「大丈夫!その為に私が常に「見ておく」から。」
好意で言ってくれてるのにも関わらず僕はとんでもない
失礼で無礼な質問をしてしまった・・・。
「それって・・・。代金支払わないといけないんですかね?」
しばし、沈黙が漂う・・・。
扇子で頭を小突かれた。コツンッ!
「私は悪徳商法の類は大嫌いだからそういうのは一切しないの!」
ブスッとされた・・・。(怒った顔もやはり美人だった・・・。)
「・・・誰かさんみたいに「お金お金」って「欲」ばかりの
嫌な人種には絶対になりたくないからね・・・。」
呟きながら苦い顔をしている夏菜さん・・・。
「誰かさん・・・?」
ハッとしたのか「今のは忘れていいからっ!」と返答される。
次の瞬間に、引き戸がガラッと開いて、夏菜さんがギョッとした。
「げっ!噂をすればっ!!」
「おーっす!夏菜ぁー!姉さんのご帰還だぞーい!」
姉さんと自分で名乗るその女性は女優が被る様な帽子に、
派手なサングラス。高級そうなブランドのバッグを持ち、
紫色のタンクトップにデニムのジーンズという、
とにかく「派手」ないでたちで現れた・・・!!
「お?誰この子。夏菜にもとうとう彼氏ができたのか~?」と
からかうので僕は赤くなった・・・。気恥ずかしい・・・。
(そんな風に見えるのかな・・・?お似合いって言われたりして。)
とか、そんな余分な妄想してる僕をよそに。
夏菜さんは激昂した・・・。
「彼氏じゃないっ!」
ガーン・・・。そんな全否定せんでも・・・。やや落ち込んだ。
そんな落ち込む僕は蚊帳の外と言わんばかりに2人の間に
バチバチと音がしそうなぐらい険悪なムードになっていた・・・。
続。
キャラがどんどん増えてきて、情報量が濃くなったり、
逆に展開の描写が薄くなりがちなので毎回その調節が大変です。
プロのコメディー作家さんは「本当にスゴイ」と自分の未熟さを痛感。
それと同時に「尊敬しました」。
私も他人様が「これは面白い!」と思っていただけるように精進します。
次回も頑張るので興味が少しでもおありの方は最後までお付き合い
頂けると嬉しいです。