LIFE.6 エスティア・シヴィアス
ぬぅ、3000字……………
なんだろう、一次創作って文字数稼ぎにくい気がする。
目指せ目標4000字越え。
僕に、新しい友達ができた。
名前をエスティア・シヴィアスさん。銀の髪が特徴的な背の高い、まさに美女と表現するべき人。
こう、思春期DT感丸出しで言うならば、手足は長く細いが痩せぎす、というわけでもなくむしろ付くべき所は良くついていて、つまり何が言いたいかと言うと、完璧すぎて劣情するのも気が引けてしまうくらいだ。うぅ、情けない……………いや、でも少し助かるかな。
前屈みにならなくて済むからね!
それに比べて神結さんは全く………ただでさえボンキュッボーン! なスタイルなのに、リハビリと称してくっついてきたりしてさ。
僕の反応を楽しんでやがるぜ…………くぅぅ。
今日も今日とて、どしゃ降りの雨をベッドの上からボケーっと眺めていると、扉をノックする音が聞こえた。
「はーい」
僕が返事をすると、静かな音をたてながら扉がスライドされる。
「やっほ」
顔を覗かせたの予想通りシヴィアスさんだった。
五日前のあの日に見たミステリアスさはいつの間にか霧散しており、今ではどこか幼いような、少し年不相応とも言える言動や笑顔を見せる、愛嬌のある人になっていた。
今だって浮かべる笑みは人懐っこく、気分だろうか、纏めたポニーテールがピョンピョンと跳ねている。
「こんにちはシヴィアスさん。ご機嫌ですね」
「あはは、わかる?」
「はい、何となくですが」
初めて会ったときは、大人しくて余裕のある口調のお姉さんかと思っていたけど、こうして親しくなってみるとまるで幼馴染みの活発な女の子見たいに見えてくる。……………僕の幼馴染みは野郎だけどね。
シヴィアスさんは不思議な人だった。
この国………と言うか、この世界の事を殆ど知らないような口ぶりで、僕の持つゲームや漫画、ケータイを珍しそうに見つめていた。
昨日なんかは、初めてやったゲームに一喜一憂しながら、夢中になっていた。
「シヴィアスさん」
「んー?」
今日の彼女は、日本語の文字を覚えると言う名目で僕の漫画を独占していた。
それを見つめながら深呼吸を一つする。
落ち着け大介、ステイステイ、下心を捨てろ……………よし。
「今度、映画に行きませんか?」
「え? 行きたい!」
彼女は映画と言うものも知らず、僕が映画について教えるととても興味を持ち、映画に行きたいと前々から言っていた。
「まぁ、僕の退院後なんでまだもう少し先ですが」
「良いわよそんなの! うふふ、楽しみね、ダイスケ!」
………ああ、ダメだ。
下心を捨てろってやっぱ無理くね? こんな所を見せられたらさ。
まだ会って五日。
それだけの間しか経っていないのに、僕の心がどんどん惹き付けられていく。
容姿だけじゃない。
その在り方、性格、表情。
今知りうるすべてのシヴィアスさんに、僕は惹かれていく。
「はい、楽しみですね」
◆◇◆◇◆◇◆
最近私に、毎日の楽しみ、と言うものが出来た。
五日前、あの雨の日にであった一人の少年。見た目も雰囲気も性格も、どこにでもいそうな平凡な子。
けど、彼との会話は好きだった。彼の学校での出来事、親友の事、趣味の事。
彼のしゃべり方は聞いててどこか心地よく、彼の聞く姿勢は、話してるこっちが楽しくなるものだった。所謂、聞き上手喋り上手というやつだ。
彼は自然が好きだと行ってくれた。雨や木擦れの音、木洩れ日、鳥の囀り、土の匂い、芝の感触。
こんな『こんくりーと』に囲まれた社会で育ったからこそ、そういう自然に心惹かれるのだとか。
何となく、それが嬉しかった。
この国は戦争の影響なのか自然が少なくて、『こんくりーと』に包まれて固く冷たい印象があった。
だから、私の本能が求める自然をそこまで肯定してくれる彼には好感が持てた。
だからだろうか。
まだ会ってそんなに経っていないと言うのに、彼に会うのが楽しみで、朝が待ち遠しくなってしまう。
今日も、間借りした『あぱーと』の一室で目を覚ました私は、箪笥から自分のシャツを出して裸体に纏う。
『ぶらじゃー』と言う下着は初めて見るものだったが、つけてみると案外楽なもので、悩まされていた肩凝りが少し楽になった気がした。
服を着て、髪を解いて、毎朝のおまじないをしたら、最後に鏡を見つめる。
乱れは無いか、綻びがないかを確認する。
…………大丈夫。今日も大丈夫。今日もちゃんと、『エスティア・シヴィアス』だ。
それを確認したら後は彼のもとに向かうだけだ。
今は特にやるべき事はないけれど、恐らくきっと、そのやるべき事が出来てしまった時は会えなくなるだろうから。
だから今を、彼と会える今を楽しもう。
◆◆◆◆◆◆
彼と過ごす時間は、本当に早く過ぎてしまう。
今日は彼の持つ漫画と言う読み物を読んでいると、彼から『えいが』に行かないか? と誘われた。
嬉しかった。『えいが』には興味があったし、何より、争いの無いこの平和な世界の事を知れるのだから。
この国は、世界が戦争中だと言うのを忘れさせてくれる程に平和で、穏やかな場所だ。
「あ、もうこんな時間?」
「あ……」
「それじゃまた明日ね、ダイスケ」
また明日。
自分の口を無意識について出てきた言葉に、我ながらに驚く。
ついでに、こんなことを言えるほどにこの平和に慣れた自分にも。
彼の病室を出て帰路に着く。
けれど、その足取りは重く、鉛何かでは物足りない位だった。
「……………はぁ」
ため息が溢れる。
今が楽しすぎて、これからの事を思うと苦しくて。
1歩、彼から離れる度に。1歩、家に近付く度に、私の心は沈んでいく。
イヤだ。
このままずっと、こっちで笑っていたい。
それが不可能なこととわかっているけれど、それでも心はそれを求めていて……………。
「苦しいよ、ダイスケ」
たどり着いてしまった家のドアを開け中に入る。
ドアを閉め鍵を掛け、胸元に手を添える。
「『解除』」
言葉を紡ぐと、そこで私にかけていた『魔法』が解かれる。
幻惑魔法によって隠していた『尖った耳』と『黒い首輪』が顕になる。
そう。
私はエルフ。
科学文明の人間ではなく、魔法文明の世界の亜人。ヒトですら無いモノ。
なぜ私がここにいるのか。
その理由はスパイではなく、ただ一つ――――。
部屋に入ったとき、その中心に浮かぶ青い光の板を見たとき、私は心を殺した。
殺さざるを得なかった。
私に……奴隷に心は入らない。
両腕を後ろに組み、膝をついて頭を垂れる。
服従の姿勢。私が取るべき姿勢。
『随分と遅かったじゃないかい。ええ?』
「申し訳ございません」
光板から声が聞こえる。
瞑れたガマのような、聞くに耐えないダミ声。
光板に写し出されたのは、脂ぎった顔に分厚い化粧を塗りたくり、ぶよぶよに太った体を着飾る醜女。
これが私の主。
我が故郷を焼き払い、私たちを奴隷とした、ご主人様。
そして、その醜女が口を開く。
『まぁいい。それで? 見つけられたんだろうね、アレを』
「……………はい」
そう答えると、醜女は口を大きく開けて下品な笑い声をあげる。
『そうかいそうかい! 良くやったよ!』
「ありがとうございます」
『誉めてやるよ、アルヴィナ』
早く大介君を死なせたい(黒幕感)