6.みんなでお茶を(11)
八坂さんは言い難そうに尋ねてきた。
彼女は、なぜ私がフレンド登録したのかをすごく聞きたいと思っているのだ。
今、この場所にいるのは、それが聞きたかったからなのかもしれない。
何度も断られている黒沢が、それでも彼女はフレンド登録を嫌がっているのではないと言った理由が、わかった気がした。
八坂さんは全否定しているのではなくて、とても迷っているのだろう。
だからと言って、私の意見が彼女の後押しになるとは限らないのだが。
「北見くんと仲が良いからだよね。ごめんなさい、変なこと訊いて」
「え-っと、八坂さんは黒沢くんやキタミが記憶に残りにくいのは知ってる?」
「黒沢くんが存在感が薄いのは……知ってるけど。北見くんも?」
「そうそう。黒沢くんはまだ覚えられる方だし、八坂さんは忘れにくい人みたいだけどね。キタミは、ほとんど誰も気にとめないくらい、覚えられない。だから、キタミの名前を出す八坂さんは珍しいと思う」
「そうなの?」
「私、去年、キタミとクラスメイトだったんだけど春休みが終わったらキタミのことは忘れてた。事故で同調した間はキタミのことを覚えてたのに、解除してもらった途端にまたキタミを忘れて……。同調してた時は、キタミに世話になってたのにね」
「米田さん……」
「フレンド登録したのは、キタミを忘れたくなかったから。フレンドになれば、そういう影響を受けないんだって」
「……忘れるって……どのくらい?」
「全く全然綺麗さっぱり。私、忘れやすい人だから」
「そう……なの……」
八坂さんは困った顔をした。
何を言っていいかわからなかったのだろう。
八坂さんは忘れにくい人のようだが、夏休みを挟んだらどうなるのか。
キタミは春休み程度で全滅、黒沢は夏休みでアウトだと言ってなかったか。
フレンド登録をしないで夏休みを過ごしたら、八坂さんはここでこうして四人でアルトでお茶したことを忘れてしまうのだろうか。
忘れても何かをきっかけに思い出すことはある。
私がキタミを思い出したように。
黒沢もまた、八坂さんが忘れないように、思い出すきっかけになればと、私を巻き込んだのかもしれない。
彼女と同じ側の現地生物だから。
私も八坂さんが忘れてしまったら残念だと思う。
でも選ぶのは彼女だ。
私は彼女にフレンドを勧めることはしない。
それは黒沢の役目だから。
私達はやや尻すぼみな空気の中で解散することとなった。
黒沢は、付き合ってくれてありがとうと言った。
彼の目的は果たされたらしい。
彼等はどうなるのだろう。
二人並んで帰っていく後ろ姿に、未来は読めなかった。




