2.家の中を歩いてみよう(4)
今度こそ、イケる。
私はスタート地点まで戻り、さっきのダッシュを脳内でリプレイさせた。
そしてタンッとベッドに手をつくタイミングを図る。
早い。
スピードに乗って、タンッ。
よし、良くなった。
タンッとベッドを押す練習もイメージと合わせて実行。
力の込め具合も押さえた。
よしっ。
私はスターティングポジションにつき、前方を睨んだ。
集中だ、集中。
鳥になれ。
静かに気を高めて。
GOッ!
ダダダダダダダダダッ
バンッ
私の腹はシーツから浮いた。
上へと意識させつつ、宙に浮いている間にも足を前に踏み出し、ぐぐっと身体を上へと持ち上げる。
バタバタと手を動かしバランスを取る。
おっしゃーーっ。
私は天才!
立ち上がりに成功した。
しかし、足は宙を掻いた。
ベッドエンドだった。
おぉぉーーーっ。
考える間もなく必死に羽をばたつかせる。
凄いぞ。
こんなに早く動くのかと、自分でもびっくりな速さだった。
が、短い羽には身体を浮かせるに十分な浮力を生み出すことはできなかった。
ドンッと絨毯の上へと着地した。
いいんじゃないか?
私は何の問題もなく、立っていた。
短い足は衝撃に強いらしい。
絨毯も衝撃を吸収してくれたようで、さしたる音もなく私はどこにも痛みを感じることもない。
ベッドで立つより、飛び降りる時に立つのが正解だな。
私はそう結論づけた。
そうして私が満足に浸っているところへ、家の主が戻ってきた。
「ペン佐保っ! 起きたりして大丈夫なのか?」
バタバタと慌ただしい。
彼はスーパーのレジ袋をローテーブルに置くと、こちらへと近付こうとする。
はっ、ペン佐保?
センスのない呼び方をいつまで続けるつもりなんだろうな。
私は彼を無視してローテーブルへと歩み寄る。
どれどれ、何を買ってきたのかな?
レジ袋に頭を突っ込んだ。
別にそのままつつこうとしているわけではない。
背が低いので、耳のたったレジ袋を下ろそうとするとそうなっただけである。
「お前……可愛い……」
彼は私の背後からしみじみと感嘆の声を漏らした。
気分ののっている今である。可愛いと言われて、悪い気はしない。
たとえ彼が褒めているのは私ではなく、彼の作ったこのペンギンの姿であるとしても、だ。
後ろ姿を眺めているのだろう彼にサービスとして尻尾をぴっと動かしてやった。
なんというサービス精神溢れる私。
「うわっ、メッチャかわいいっ」
そうだろう。そうだろうとも。
称賛は素直に受け取ってやろう、残念イケメンよ。
達成感の余韻のためか、私は珍しく彼に同意したのだった。




