5.時には悩むこともある(8)
キタミは私が何を言おうとしているのかわからず、黙っている。
私も明確にこれと決めて口を開いたわけではない。
思ったままを言葉にする。
「私は忘れっぽい人でしょ? キタミは忘れさせやすい人だから、これからも私がキタミを忘れない保証はないよね」
「フレンド登録したから、大丈夫だと……」
「もしも、私がまたキタミを忘れたら、キタミ、どうする?」
「……」
キタミは答えなかった。
突然、こんなことを言われても困るだろう。
「私はね、キタミを思い出したいよ」
「……佐保……」
「何かのきっかけがあれば、思い出せると思う。忘れても、頭の中のどっかに残ってて思い出せないだけでしょ? 消えてしまうわけじゃなくて。だから、私が忘れたら、思い出せるようにキタミが協力してくれない?」
「俺が……何を……?」
「一緒にいた時の写真とか動画を私に見せて欲しい」
「……」
「私がキタミを忘れたら、フレンドじゃなくなる?」
「そんなことはない。登録解除申請をしない限り、フレンド登録は有効だ」
「じゃ、思い出せなくても、また友達になって欲しい。そういうの、頼んだら駄目かな?」
「駄目じゃない! 佐保は俺を忘れても……思い出したい……のか?」
「うん」
キタミが協力してくれたとしても思い出せる保証はない。
それでも、思い出したいのだ。
「私だけの映像じゃなくて、キタミも一緒の映像や写真を撮って欲しい」
「俺も? 一緒に?」
以前、スマホでキタミを撮ろうとしたことがあった。
まだフレンド登録する前のことで、キタミの写真が手元にあれば忘れないかもと思ったのだ。
だが、彼を映そうとしてもできなかった。
映したはずなのに真っ黒だったり、データ保存できなかったり。
忘れろ電波と同様に、普通のカメラではキタミの姿を写すことはできないのだと思う。
あの時は、そんな方法に頼るなと否定されたような気がして諦めたのだが。
私には撮れなくても、キタミなら撮れるのではないか。
「私に見せるのは、キタミと一緒に映ってるのがいいな」
「……」
「私、忘れっぽいから、また忘れたらどうしようって、心配だった。それで、最近、ちょっと悩んでた」
「そう……だったのか」
「うん」
口に出したら、何だかすっきりした。
また忘れた時のために、思い出すためのきっかけを残しておこう。
不安がなくなるわけではないとしても。
「俺と一緒の映像が、いいのか?」
「うん!」
「撮っておくよ」
照れくさそうな、キタミの顔。
キタミが撮りたがるのが、わかる気がした。




