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ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ+(プラス)

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5.時には悩むこともある(6)

 ダムダムダムダム

 ダムダムダムダム……

 

 私は無心に足を動かしていた。

 

 ダムダムダムダム

 

 キタミの家のルームランナーでひたすら走る。

 無心になれて、かつ、健康にもよい。

 ルームランナーはいい。

 

 ダムッダムッ

 ドムッ、ドムッ、ドム

 

 私はスピードを緩めた。

 

「喉が渇いたろう、佐保? プロテインを飲もうな」

「ゥアァッ」

 

 運動している間は翻訳機をつけていないので、言葉を選べない。

 プロテインで逞しくなるより、水の方がよかったのだが。

 

 人の家で好き放題しているのだから、言葉は喋れない方がいいかもしれない。

 これ以上わがままでいるのもどうかと思う。

 

 そう思いながらここで走っているのだから、単なる自己満足でしかないと理解はしていた。

 

 キタミはマイテーブルにプロテインを置いてくれる。

 そして、その前に座り込んだ。

 

「佐保、この頃、元気がないよな」

 

 私はプロテインを飲んでいるのをいいことに、キタミに返事はしなかった。

 元気ないように見えたのか。

 そうだろうな。

 

 ルームランナーで胸のモヤモヤを振り払おうとしていた。

 無心になれたらスッキリするかもしれないと思った。

 できなかったが。

 

「俺が攫われた後から、かな」

 

 そう。

 あの日から、モヤモヤしている。

 キタミにもわかるくらい態度に出ているのだろう。

 隠そうとしてなかったのだから当然か。

 私は頷いた。

 

「どうして?」

 

 何故なのか。

 キタミが攫われた日。

 八坂さんという忘れにくい人の出現が、私にはとても大きな脅威に思えた。

 キタミの友達という私の居場所を脅かす存在として。

 

 別にキタミの友達が私だけじゃないと嫌だとか思っているわけではない。

 だが。

 

 八坂さんみたいな忘れない人がフレンドで友達だったら、キタミはもっと安心できるのではないだろうか。

 そしたら、私が忘れてもキタミは寂しくなくなる。

 そもそも私はキタミの友達として相応しくないのではないのか。

 私はキタミと一緒にいていいのだろうか。

 

 終わったはずの疑問が私の中に再燃していた。

 

 私が度々キタミの部屋にお邪魔して疑似体に同調しているのは、私自身が自分の記憶に自信がないから。

 毎日キタミの顔を見て、会話して、できるだけ同調して疑似体の記憶力を頼りにキタミのことや一緒に過ごした時間を私の記憶に刷り込む。

 そして、これなら明日も大丈夫だと自分に言い聞かせているのだ。

 

 フレンド登録した今もなお、不安だったのだと、私は気付いてしまった。


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