4.ペンギンでも空を飛ぶ(9)
「くすぐったいよ、佐保」
キタミが笑った。
こわばっていた身体が徐々に元に戻ろうとしているようだ。
だが、まだ冷たい。
私はガシガシと強めに身体を擦りつけた。
これならくすぐったくないだろ。
「可愛いなぁ、佐保は」
そりゃ、どうも。
答えずに私はせっせとキタミの身体をこすり続けた。
早く、早くあったかくならないと……。
そうした私の心配は杞憂で、しばらくするとキタミは体温を取り戻した。
ゆっくりと上体を起こす。
その動きに変なところはなかった。
「ありがとう」
にっこり笑いながら私の頭を撫でてくれた。
もう、大丈夫だ。
大丈夫なんだ。
よかった。
「ありがとう、佐保。助けに来てくれて」
キタミはそう言ったが、助けようと思っての行動ではない。ただ居場所が知りたくて同調しただけだ。
後先を碌に考えもせず。
「助けに行ったわけじゃ……」
「でも、探そうとしてくれたろ?」
そりゃ、探すだろうさ。
突然いなくなったのだから。
そう思ったが、黒沢の反応をみるに必ずしもそうとは限らないことに気付いた。
黒沢はキタミは時間を忘れて何かに没頭して学校に来ないことがあると言っていた。
私がキタミの友人歴が浅いための行動なのか。
だが、心配だったのだ。
とても。
「友達が急にいなくなったら、探すよ」
「そっか」
キタミは私をぼんやりと見ていた。
笑ってはいるが、嬉しいとか喜んでいるという風ではない。
何を考えているのだろう。
「佐保は、俺の友達、なんだな」
キタミは小さく呟いた。
ゆっくりと言葉をかみしめるように。
そうか。
私は、キタミの友達なのだ。
今、ようやく、そう、認識されたらしい。
ずっと忘れられてきた、キタミ。
学校を休んだところで、彼を探したクラスメイトはいなかったのだろう。
そういう私も、そんなクラスメイトの一人だったわけだが。
今は、違う。
以前とは違うのだ。
ポッキーを手にキタミに会いに行った日から、今。
ようやく友達認定。
フレンド登録して、一緒に行き帰りの約束をした。とうに友達だったと思う。
だが、キタミがそうと認識するのはまた別だ。
私にしても、そうなのだが。
「可愛いなぁ、俺の友達は」
うむっ。
ペンギンの私が友達なのか。
人間の私が友達だと認識されているのか。怪しい。
私は拗ねたふりでダダダッと駆けだした。
キタミに拗ねは伝わってないだろう。
だがいいのだ。
「佐保-、転ぶぞ-」
いいのだ。




