4.ペンギンでも空を飛ぶ(8)
神社の木を避けながらゆっくり降りていく。
あんな上空から学校近くの神社に下りてくるとは。
キタミは、すごい。
ボボボボボボッ
騒音とともにキタミは地面へと降り立った。
こんな騒音でも誰も人が来ないのが不思議だ。
キタミの忘れろ電波は音にも効果大なのか。
キタミは私の手を引くと、私の身体を両手で支えた。
途端に、背中のうるさいボ-ボ-音が止んだ。
辺りは静かになった。
キタミはその場に膝を折り、私を地面に降ろした。
が、そのままその場に崩れるように横になった。
様子がおかしい。
「キタミっ! どうしたの?」
キタミを覗き込んだ。
笑みをつくろうとして強張っている顔。
どうしたの!
何か言ってよ!
側に寄るとキタミの肩に羽がふれた。
冷たい。まるで氷のようだ。
UFOから降りてくる時、上空の空気はとても冷たかった。
ボーボーうるさい噴射機のせいで身体の周囲に熱はあったのだが、それでも身体に当たる風は厳しい冷たさだった。
薄着で、しかも私のような毛をもたないキタミには、もっと堪えただろう。
寒いのを我慢していたのか。
それでも、私を離すことなく……。
「キタミ、救急車よぼうっ」
「大丈夫だよ……天気もいいから、こうしていれば、戻る」
そうか。宇宙人だから。
救急車は、よべないんだ。
医者にかかっても……。
キタミ!
私はふんっと身体に力を入れ、毛を立たせた。
普通のペンギンはもっとペチャッとした毛だが、私のは違う。
水に濡れてなければもふもふだ。
キタミの好みなのだろう。
私は毛の間に陽射しに温められた空気を含む。
やや冷えていた表面もカラッとする。
よし、温かさ充電完了!
私はキタミの胸元によじよじとにじり寄った。
腹や羽をキタミの冷たい身体に押し付ける。
「佐保…」
キタミは私の身体を離そうと動く。
嫌がってというより、自分の身体が冷たいから、私が冷えてしまうと思ったのだろう。
そんなキタミの腕をかいくぐって胸元に入り込み、お腹を押し付けた。そして上になっているキタミの右肩に首を伸ばしてのしかかる。
逃がすか!
私はキタミの身体にくっつく。
「あったかいな、佐保」
そうだろう。
ペンギンなのだ。寒さには強いのだ。
キタミももう離れることはせず、私の背中に手を回した。
動けるなら、大丈夫。
私はキタミの右腕や背中を頭と首ですりすりする。
何度も、何度も。
キタミの冷たい身体が、私には恐ろしくてたまらなかった。
もしも温かくならなかったら、と。
あったかくなれ。
あったかくなれ。
私はせっせとすりすりを繰り返した。




