4.ペンギンでも空を飛ぶ(7)
「佐保、『助けて』って言ってみ」
え? 助けて?
ああ、指輪か。
ペンギン姿の今は指輪はどこにも見えない。だが、指輪をした私は中にいる。
だからキタミは私が来たから帰れると言ったのか。
「助けて!」
私がそう言うと。
背中から何かが生えた。
キタミがぽいっと私を空中に投げた。
え?
ボボボボボボッ
うるさい。
そして、私は宙に浮いていた。
本当に宙に。ふわふわと。
背後を見てみると、背中に四角い黒い箱がついてて、そこからにょきっと斜めの角度に細いものが伸びていた。
その先には円筒のものがついており、ボーボーと熱風を噴射している。
背中に小さなジェット噴射機を背負っている感じ。
「うわああっ、何をするんだっ」
少年は手を引っ込め、慌てふためいている。
まあ、UFO内でボーボーやってれば慌てもするか。
気がつけばキタミも背中に同じようなものを背負っていた。
そしてボボボボッという騒音が倍増する。
突然、UFOの壁がパカッと開いた。
凄まじい強風が押し寄せる。
少年が慌てて何かにしがみ付こうとしているのが見えた。
ということは少年が壁を開けたのではないらしい。
宙に浮いていた私の身体も強風にあおられ大きく上下左右に揺れ動く。
私の視界からキタミが消えた。
キタミっ、どこっ!
私の叫び声も風の音で聞こえない。
さっきまでのボボボ騒音も聞こえないほど。耳に届くのは風の音だけ。
キタミ――っ!
叫ぶ私の羽を、キタミが掴んだ。
そうだ。
キタミが一緒なのだ。心配することはない。
キタミは私に笑いかけ、頷いてみせた。
何するつもりかわからない。だが、キタミに任せればいい。
私は大きく頷き返した。
キタミは私の羽を掴んだまま、UFOの壁を蹴った。
壁が開いている部分はうっかりすると他の壁と同じように見えるが、確かに四角く枠があって、私達はそこから外へと飛び出した。
そして、私とキタミは空の風に乗った。
背中の爆音装置のおかげで落下する感覚にはならないようで、徐々に降下していく。
やや遅い飛行機になったような感じだろうか。
キタミの身体が私より下になる。
キタミ――
呼びかけても声は届かない。
でも、キタミは私の羽をしっかりと掴んでくれている。
キタミと一緒に私も一緒に降りていく。
真下には青い大海原が広がっていた。
ここでキタミが手を離したら、私は大きな海のどこかに一人漂うことになる……。
いいや。
キタミは離さない。大丈夫だ。
キタミがいれば、ペンギンだって空を飛べるのだ。
大丈夫。
ゆっくりと大きな円を描くように旋回して飛行する方向を変え、陸地へと向かう。
そして私達は学校近くの神社へと降りて行った。




