4.ペンギンでも空を飛ぶ(1)
「佐保の家まで送っていってもいいかな?」
「いいけど、家、遠いよ?」
「できれば、朝も迎えに行きたいんだ。何かあるといけないから」
送り迎えしたいというものを拒否する理由はないので、全然OK。
だが、これではまるでお付き合いしているかのようではないか。
むろん嬉しい。
私はへらへらする顔を引き締めた。
「いいけど。狙われてるとしたら、私じゃなくて、疑似体だと思うよ?」
一応、もう一度、言ってみた。
が、キタミは笑っているだけだった。
ーー佐保は可愛いから。
そんな言葉が聞こえてきそうな顔だったので、それ以上繰り返すのはやめた。
蓼食う虫も好き好き。
の文字がキタミの後ろに見えた気がした。
それから毎朝迎えに来て、毎夕一緒に帰ることになった。
翌日には、キタミから私を助ける物だとシンプルな銀の指輪を渡された。
もちろん他の人には見えない加工済み。
何かあったら指輪に向かって「助けて」と言えばいいらしい。
何が起こるのかと訊くと、逃げられるような装置が作動するとのこと。
私が武器を操るのは危険と判断したのだろう。
実に正しい判断だ。
学校の行き帰りもキタミと一緒で、右手の薬指には銀の指輪。
戻ってくるテストは軒並み大勝利。
私の人生最大の幸運期かと思うほどご機嫌な日々だった。
そして金曜日の朝。
キタミは迎えに来なかった。
たまにはそんな事もあるだろうと思いメールしてみたが、返事はなし。
嫌な感じがした。
学校に行ったが、キタミは来ない。
電話してみたが電波が通じなかった。
一体、どうしたのだろう。
そわそわしながら授業を受ける。
そして休み時間毎にキタミの教室をのぞきにいった。
来た様子はなくて、メールの返事もない。
キタミのクラスの担任に尋ねても、ああ欠席だなと言うだけで、欠席の理由はわからなかった。
突然、都合が悪くなることもあるだろう。たまたま連絡が後回しになっているだけなのかもしれない。
だが、送り迎えすると言って数日だ。
連絡が取れなくなるのはおかしいだろう。
もしや私が心配したようにキタミが狙われたのだとしたら。
キタミが攫われたのでは?
キタミに何かあったのでは?
不安でたまらなかったが、これ以上、私にはどうすることもできなかった。
私は四時間目が終わると同時に黒沢の教室に走った。
「キタミを知らない?」
「あいつ、来てないのか?」
黒沢もキタミのことは何も知らないようだった。
でも、私にはない連絡手段があるはずだ。
私は黒沢を校舎裏へと連れ出した。




