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ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ

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2.家の中を歩いてみよう(2)

 固いドアとの衝突事故。

 嘴をのばそうと顔を上げていたから顔面崩壊には至らなかったものの、受け止めた腹はそれ相応の衝撃を吸収した。

 つまり、痛かった。

 

 短い足では踏ん張ることもできずに廊下の壁にぶち当たり、後頭部もダメージをおい、その上、仰向けにつるんとした床に転がるはめになってしまったのだ。

 そして私は仰向けで、ジタ、バタ。

 なんと無様なことか。

 

 

「ペン佐保!」

 

 どうやら彼は私に呼びかけているらしい。

 ペン佐保……。

 あまりにもセンスの悪い呼び名だった。

 

 この顔はいいが心配りに欠けるこの男は、センスも悪いらしい。

 

「大丈夫か? 痛かったよな? ごめんな!」

 

 彼は私を抱き上げると部屋の中へと急いだ。

 大きなベッドへゆっくりと降ろされる。

 それは、おそらくは彼の使用しているベッドであると思われる。

 

 枕に頭を乗せて仰向けで寝かせてくれた。

 だが。

 寝具から感じる自分のものとは違う匂いに、高校生女子としてはかなり複雑なものがあった。

 他人の、男子の、ベッド……。

 うーん、考えるまい。

 

「どこか怪我をしたのか? 痛むか?」

 

 彼が心配そうにのぞき込んできた。

 このアップにも馴れてきた、ような気がする。

 

 顔は、イケメンだ。

 それは認めよう。

 

 だがしかし。

 人として扱ってくれたのか、枕に頭をのせて寝かせてくれたのはありがたいと思うべきだとは思う。

 思うが、この身体でこの態勢では起き上がれないのだが。

 どうして気付かないかな。

 

「ごめんよ、ペン佐保」

「ゥアッ!」

 

 その呼び名は本気で止めてくれ。

 私は声を強めに出し、そして嘴をカシカシして怒りを表してみた。

 

 私は進歩している。

 ペンギンな身体となってしまったから何もできないと嘆くばかりではないのだよ。

 

「ごめん、痛かったよな。すぐに動物の医者に……行くわけには……いかないな。俺が作ったものだから、動物じゃないしな」

 

 動物じゃなかったんですか。

 へえ……。

 それにしても、作った? 

 この目の前の彼が?

 このペンギンの身体を?

 これはペンギン型ロボットの身体ということなのか。

 スペシャル機能付きアンドロイド?

 それにしてはリアルに痛感も感触もあるのだが。

 

 まあ、深く考えても仕方はあるまい。

 要はこの男の作ったペンギンもどきであるということだ。

 病院には行けないのか。

 覚えておこう。

 

 さて、痛かったのも痛かったが、本気で呼び名を何とかしてもらえないだろうか。

 ペンギン+佐保でペン佐保なのだろうが、あまりにも響きが悪すぎる。

 ペン米田よりはマシかもしれないが。

 普通は米田さんとか呼ぶものではないだろうか。

 初対面に近い状況で、いきなりあだ名を付けて呼んだりはしないと思う。

 可愛いあだ名ならまだしも、ペン佐保で。

 

 天才はセンスが悪いのか。

 残念だ。


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