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ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ+(プラス)
56/318

3.世間の話題にのれません(2)

 二人で頭を突き合わせてキタミのスマホをのぞきこむ。

 画面では映像がはじまっている。

 再生されているそれは音声付きだった。

 

『ちょっと留守番しててくれな』

『はーい』

 

 ベッドの上に立つペンギン。部屋を出て行くキタミを見送る。

 パタンと戸が閉まり、続いてガチャガチャとキタミが玄関を出て行く音。

 ペンギンは首を傾げていたが。

 玄関の閉まる音を最後に音は消えた。

 部屋に残され、戸を見つめて立っている姿が寂しげである。

 私が、これはいつの映像だろうと思っていると。

 

 ぼーっと佇んでいたペンギンが唐突にキョロキョロと頭を動かした後、ベッドの上で飛び跳ねを開始した。

 

『ア・イ・ス、ア・イ・ス、』

 

 バフッ

 あははははー

 

『ア・イ・ス、ア・イ』

 

 バフッ、あははははーー

 

 私は次第に顔が強張っていくのがわかった。

 思い出した。

 これは一週間ほど前の週末のこと。

 アイスを買って来てくれるというキタミを待っている間の光景なのだが。

 アイスと言ってはベッドで飛び跳ねて、転んで、笑っているだけ。

 

『キタミがアイス、フーー!』

 

 バフッ、あははははー

 

 何が面白いのか、羽をバタバタさせながら口を開けて笑っている。

 

 馬鹿である。

 バカ丸出しである。

 お前、頭大丈夫か?と言いたい。

 

 この日、私は立ち上がることを完全マスターした。

 それをキタミに報告すると、限定アイスでお祝いすることになったのだ。

 この時の私が興奮していたのは確かだが、こんな風だったとは……。

 キタミは部屋にカメラを設置していたのだろう。

 撮られているとは思わなかった。

 

 これを……。

 これを載せてたのか。

 フレンド・パークとやらに。

 

「この後が最高なんだ」

 

 この後は……。

 

『ア・イ・ス、が、キッタミー、うあぁっ』

 

 私は羽毛布団に突っ込み、羽毛布団ごと頭からベッドの向こう側へと消えた。

 だが、足がベッドに引っかかってしまい。

 

『キタミーー、キタミーー、早く帰ってきてーー』

 

 起き上がれず、ベッドの端で黄色い足がバタバタしていた。

 もうどんな状態でも起き上がれると思い上がったバチが当たったのだと反省したのを覚えている。

 

「可愛いだろ?」

 

 全然、可愛いくない。

 馬鹿すぎる。

 興奮して飛び跳ねて、落ちる。

 まるで幼稚園児ではないか。

 あまりに馬鹿すぎて、自分でも悲しすぎる。

 

 これを、よりによってこれを、彼等の仲間に大公開したわけだ。

 これ見て、フレンド・アイドル誕生か?

 異色のフレンドお笑いアイドル誕生か、の意味だったに違いない。

 お笑いアイドルも悪くはないが、目指すなら清純派だ。

 

 この映像は簡単には見れないと言っていた。

 できるだけ早く別の映像に取り替えるように伝えよう。

 いや、映像は自分が選んだ方がいい。

 

 もっと知的に見える映像を探さなければ。

 私は帰りの電車で決意を固めた。

 大人には、遠かった。


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