3.世間の話題にのれません(1)
朝食を済ませ、私達はホテルをチェックアウトした。
私はすごく大人になったような気がしたが、帰りの電車に乗ったら、やっぱり気のせいだったとわかった。
履きなれないパンプスは、無理してるけどちょっと痛いし、ワンピースは皺になるのが心配で、落ち着いてはいられなかったのだ。
それにしてもこの大人な経験はすごく貴重だと思う。
UFOのことはすっぱり忘れるとして。
親に内緒でホテル外泊という表向きすごいイベント体験談を、誰にも喋れないのがすごく残念だと思った。
視線が気になって横を見ると、キタミが私にスマホのレンズを向けていた。
「キタミ? 何、撮ってるの?」
「何って、佐保だよ」
キタミは当然のように答えているが、私は戸惑った。
今はペンギン姿ではない。
そんな私に、キタミはスマホを操作して画面を見せる。
「ほら、可愛いだろ?」
そこには、動画ではなく、静止画がスライド表示されていた。
ペンギンの私、人間の私、どちらもある。
制服を着た歩く私や、キタミの部屋でお菓子を食べている姿も。
キタミが映しているのはペンギンの私だけだと思っていた。
一体、いつの間に。
彼の顔を見ると、嬉しそうに笑っている。
ペンギンの私を見るいつもと同じ顔で。
キタミにとってはペンギンの私も人間の私も、同じように見えるのかもしれない。
キタミは、地球人ではないのだから。
地球人ではない、が。
笑って喜んでいるのを見るのは、何度見ても嬉しい。
もちろん、見知らぬ宇宙人は対象外だが。
「私のプロフィールに載せた動画って、どんなだったの?」
「見る?」
電車の中でキタミと頭を寄せ合ってスマホを覗き込んでることに、照れる。
周りは相変わらず無関心なので、構わないといえば構わないのだが。
他人の視界には入っているのだから見られていないわけではない。
私はちょっと身体を引いてみた。
そしたら、キタミの方が寄ってきた。
参ったなぁと思いながらも、私は締まりのない顔になってるのだろうなと思った。
「これは、あまり編集しないでおいたやつなんだ」
私に体を寄せたまま、キタミは新たな動画を表示させる。
恥ずかしいなぁ。
ニヤニヤが止まらない。




