2.可愛すぎるのも大変です(10)
淡い黄色のワンピースに着替え、私達は部屋を出た。
ふわふわ絨毯の廊下をパンプスで歩く。
緊張する。
静かすぎるせいなのか。
ホテルという場所のせいなのか。
ペンギン姿の昨日は何にも思わなかったというのに。歩き方も心なしかギクシャクしているような気がする。
同調していると自分であって自分ではないので、昨日は気が大きくなっていたのかもしれない。
ペンギン疑似体、オスだし。
キタミは慣れた様子で、エレベーターに乗り上へと向かう。
私達は朝食をとるためホテル上階にあるレストランに行くところだ。
「キタミは、ここ、来たことあるの?」
「ないよ」
ない。
だが、この余裕。
ここではなくともホテルを利用し馴れているのだろう。
チンッと軽快な音で目的の階に到着したことを知る。
エレベーターを降りたところも、ホテルの廊下だからとても静かだった。が、レストランの扉が開くと複数の人の話し声が聞こえてきた。
騒がしいほどではなく、ホテルの廊下のように静かすぎるわけでもなく、ほどよい賑わいの落ち着いた雰囲気のレストランだ。
そして、そこにいた客は、みな大人だった。
ふとこちらへ向けられる視線。
子供の自分が、恥ずかしくなる。
「佐保?」
「あ、うん」
平然としているキタミに促され、止まりそうになっていた足を動かした。
店の人に案内された席は少し奥だったが、ガラス張りの窓からは朝の街が広がっており、眺めの良い席だ。
ものすごく大人のデートみたいで緊張はいや増す。
そんな場面で、当然、自分は平静ではいられない。
それに、どうしても見られているような、向けられる視線が私を咎めているような気がして、そわそわしてしまう。
「佐保」
キタミに呼ばれて顔を上げると、心配そうな顔で私を見ていた。
そして。
「あーん、してみ?」
え? ここで、ですか?
ペンギン姿でもない、今ですか?
キタミはカリッと美味しそうなベーコンをフォークで刺して、私に差し出している。
「嫌いだった?」
「嫌いじゃ、ないよ」
嫌いじゃないけど、人目が気になります。
ガンガン視線が来てるような気がするのです。
私、間違ってますか?
躊躇する私。
その間、キタミが差し出しているフォークが、寂しそうだった。
人の目など気のせいだ。
誰も私達の事など気にしてやしないさ。
と振り切ることにして、私は口を開けた。
ぽいっと口の中にベーコンが放り込まれる。
塩みと油とカリカリが、美味しい!
んーっ、ベーコン最高。
「よかった」
キタミはほっとしたように表情を緩めた。




