2.可愛すぎるのも大変です(1)
「佐保―、あまり遠くへ行くなよ-」
「は-い」
せっかく海に来て、キタミの好きなペンギン姿で楽しい一日の予定だったのに、つまらない。
キタミは黒沢くんと一緒にスマホをポチポチしてるばかりだ。
そりゃ、自分の姿が勝手に拡散されたくはないので正しいといえば正しいのだが、放っておかれて寂しい。
黒沢くんみたいにキタミに協力できないのが、寂しい。
ちぇっ。
私は砂の上を駆けた。
私は私で海を満喫するのだ!
海なのだ!
ざっざっざっドッ
時々足を取られて転ぶ。
だが、立ち上がる。何度でも立ち上がる。
ざっざっざっざっ
ざっざっざっざっ
私は波打ち際を走る。
軽快な足取り。
走ることをマスターした達成感。
これが、青春だぁぁぁ。
と思っていると、足が宙を掻いた。
あれ?
身体が上がってる?
首を上に向けると、ミニUFOのようなものが私を吊りあげていた。
何、これ?
「キタミ―」
変なのに引っかかったのかと慌てて身体を揺すった。
私の被っていた黄色いポンチョが風に流される。
ジタバタしても、ぶらんぶらんと身体が宙に揺れるだけで、足は空をかくばかり。
ミニUFOは無音でゆっくりだが確実に上昇していく。
しかも足下は砂浜から海上へと移っていた。
え? え?
焦る。
「キタミーーっ」
「佐保!」
キタミと黒沢くんが私の方へと駆け寄ってきた。
だが、私の身体はすでに彼等の手の届かない高さになっている。
これはただ事じゃない。
何が起きてるのか。
「佐保っ!」
「キタミ―――っ」
キタミはポケットから銃を取り出し、こちらへ向けて撃った。
銃なんか持ってたの!?
ここ日本だよね!
いいの? そんなことして!
という驚きはさておき。
銃の爆音が何発も響きわたった。
時折コンッという軽い音が頭上から降ってくる。
銃がミニUFOに当たっている音なのだろう。
だがダメージはないのか、ぐんぐん上空へとのぼっていく。
嫌だよ、行きたくないよ!
キタミが小さくなる。遠くなる。
なんで?
嘘……。
「キタミ――――」
私は精一杯叫んだ。
だが、私に向かって叫んでいるだろうキタミの声は、もう聞こえなかった。




