1.海へ行こう(4)
「佐保っ、無理、するなよっ」
そう言いながらもキタミは大笑いしていた。
楽しそうだな、キタミ。
それはいいことだ。
だが、人が転ぶのをみて笑うのはどうかと思う。
私は転んだ状態のまま、たそがれた。
ザザーン、ザザーン
押し寄せる白波は目の前にあった。
海は広い。
空は青くて……青くて……。
ん?
海の上、青い空には、未確認飛行物体が大量発生していた。
何事?
目の錯覚か?
目をパチパチと瞬いてみるが、空は変わらない。
丸い物体がたくさん浮遊していた。
それらは静止していたり、テレビで見るもののように飛行機の類ではない動きをしている。
こんな場所でUFO目撃談なんて、聞いたことはなかったのだが。
呆然と空を眺めていると、キタミがやってきた。
「どうした、佐保? どこか痛いのか?」
私がいつまでも起き上がらないので心配になったらしい。
私の両脇に手を添えるとひょいと立たせ、砂を払う。
「佐保?」
「空に……UFOが……いっぱい……」
私は混乱しながらも何とか言葉を絞り出した。
キタミにも見える?
見えない?
私の目がおかしいだけ?
口に出してからそう疑いを持ったのだが。
「ああ、佐保を見に来たんだな。フレンドのプロフィールに可愛い佐保の動画をアップしたのがマズかった」
彼は顔を顰めてあっさりと答えた。
私を見に来た?
そういえば。
キタミは地球外生物、だった。
彼は、彼の友人の黒沢くんもだけど、地球人ではなく余所から来た何からしい。
ペンギンと人が同調するとか、人間には忘れられるとか、そういう現実を知っていたから、地球人じゃないと言われた時はすぐに納得したが。
うっかり忘れていた。
フレンド登録の時に説明されたのだが、キタミの説明はチンプンカンプンだったので丸ごとザクッと省略したらしい。宇宙は広いようだが実は小さくて人類の距離という概念は云々からはじまり……私には難解な話だったのだ。
なので、フレンド登録すればキタミを忘れない、それだけわかればOKだった。
しかし。
我ながら、見事な忘れっぷりだ。
今更UFOごときでうろたえた自分がおかしかった。
こんな近くにいるんじゃないか、宇宙人が。
ははは。
で、フレンドのプロフィールって?
可愛いペンギン姿の動画を上げた、ということか?
「アップした後、佐保が可愛いって注目されていたのは知っていた。撮影させて欲しいって要請がいくつも来たからな。全部断ったんだが、見に来るとは……」
動画をアップするなんて、信じられない。プライバシー保護は何処に行った!
撮影させて欲しい?
そりゃ、ペンギンは動物園でも人気者だから当然だろうさ。
「ごめん。佐保があんまり可愛いいから三番目くらいに可愛いのを載せたんだ」
ごめんじゃないよ。
私の姿をネットに晒すなんて酷い。
いや、ペンギン姿であって、私の姿ではないのだろう。
でも中身は私なわけだし、三番目って……一番じゃないそのこだわりは私には理解できない。
とにかくキタミが撮った映像は全て削除してもらわないと。
「ネットなんかに上げたら、拡散しちゃって収拾つかなくなるじゃない! もう撮った映像を全部削除して」
私はキタミに向かって抗議した。
バタバタと羽も動いてアピールしてしまうのは、この姿ゆえだ。
「削除なんてできない! 佐保の映像を削除なんて……」
「でも」
「地球のインターネットじゃないよ。フレンド・パークは仲間達しかアクセスできないシステムエリアで、フレンドのプロフィールは正しい内容を掲載する義務があるんだ。どうせなら可愛い佐保を載せたいだろう?」
キタミは私の怒っている姿もカメラで撮影しているのだから、全く反省していない。
フレンド・パーク?
へ―――。
ほ―――。
意味わかるか――!




