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ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ

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1.ぺんぎん・らいふ開始(4)

 私がぺんぎんになった理由とか、どうしたら元にもどるのか。

 それが彼の口から語られると思っていた。

 しかし。

 語りはじめた彼の話は、私に理解できるものではなかった。

 

 通常空間は密度が薄く、圧縮することができるから小さくすることもできるし、逆に大きくすることも可能。何とかの計算を間違えたためにどっかの線が歪んで何とかが捻じれを起こして、何とかが共鳴してしまって云々。

 

 つまり?

 だから何?

 

 彼の話は続くが、空間圧縮がどうのやら、せめて何とか機がどうこう云々。

 

 わからない。

 わからないよ、さっぱり。

 

 その話は私に関係ある、んだろうな。

 だがわからないんだよ。

 私が知りたいのはそれじゃないんだよ。

 もういいから、結論、私はどうなるのか教えてくれ!

 と訴えても口から出るのは「ゥアァッ」の変な声。

 彼には通じなかった。

 

 そして、私は延々と意味不明な説明を聞かされ続けた。

 

 

「そういうわけで、戻るまで待ってくれ」

 

 何がそういうわけなのかさっぱりなんですが。

 この男、超天才児なのか?

 天才は説明が下手なものである。

 他者が理解できないことが理解できないだろうからだ。

 

 で、何が戻るって?

 疑問がいっぱいだった。

 しかし、彼の話は終わった。

 

 おいっ!

 人のこと調べたのなら、自分も名乗るべきではないのか。

 私は曲がりなりにも同じ学校に通う高校生女子なんですがっ。

 気配りが足りないと思いませんかね!

 

 と思ったが、何を言おうにも「ゥアァッ」だと思うと訴える気も削がれる。

 やる気がうせる。

 

 うーん、ペンギンだしなぁ。

 

 彼は私を膝から降ろすと、机に向かって何やら作業をはじめた。

 真剣な顔で睨みながら手を動かしている。

 その作業が私が喋れるようになったり、元に戻ったりするための作業だと信じるしかないのだろう。

 ペンギンである今は。

 

 私は室内を散策することにした。

 短い足ではふんわりした毛足の長い絨毯は歩きにくい。

 不満に思いながら見て回ったものの、背が低いので視野は狭くて、はっきりいって面白くなかった。

 テレビでも……ない。

 本でも……ない。

 おかし……も、ない。

 つまらない。

 

 私はドアの方を見た。

 半分ほど開き、その奥には廊下が続いている。

 いざという時のために脱出経路は調べておくべきだろう。

 

 私はスタスタと廊下に向かった。

 

 廊下は電気がついていないので薄暗い。

 振り向いて彼を見た。

 が、動きはない。

 

 机に向かってただひたすら文字らしきものを打っているようだ。

 忙しなく移り変わるモニターには私の理解の及ばないものが映し出されている。

 エロ画像とかではない。

 無心に作業する彼の背中には必死さも伺える。

 

 待つしかなかろう。

 

 私は身を翻し、暗い廊下へと足を踏み出した。


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