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ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ

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9.態度がよろしくなかったら(1)

 あまりに短い運動であっても繰り返せばそれ相応のエネルギー消費につながる。

 だから、私はとてもお腹をすかせていた。

 

 なのに、である。

 彼の前には生姜焼き弁当。

 私の前にはプロテインの入った半透明の容器が二本。

 

「よく頑張ったな。今日はチョコ味のプロテインにしよう」

 

 この場合のプロテインは、もちろん市販のものではない。

 彼が私の体重などを考慮した上で配合を決定した私のためのオリジナルのサプリメントドリンクのことだ。

 ネットで注文したらしく、少し前に宅配業者にて届けられたものだった。

 

 チョコ味プロテインも、悪くはないだろう。

 だが、同じたんぱく質を取るなら生姜焼きを食べる方が美味しい。

 少なくとも私はそうだ。

 プロテインはご飯ではない。

 ただの飲み物だ。

 間食だ。

 おやつだ。

 三食の中の数に含めるものではない!

 

 ということで。

 生姜焼き弁当の前に顔を伸ばした。

 口を開けて、あーん。

 入れてくれるよね?

 

「佐保はプロテインだと言ってるだろう? この生姜焼きも佐保の身体には良くないんだ」

 

 困った顔のキタミ。

 でも昨日は焼肉弁当の焼肉食べたんだから、生姜焼きだって大丈夫だよ。

 食事が美味しいって重要だと思う。

 美味しそうなんだよ。

 食べたいんだよ。

 

「ゥアァ」

 

 憐れっぽく響かせてみた。

 声の出し方も上達している。

 しかし、キタミは困った顔をしたまま箸を取ろうとはしなかった。

 

「佐保。身体を治すのが先だ。早く良くなって欲しいんだよ。わかってくれ」

 

 苦しそうな表情で私を見つめた。

 キタミの決意は固い。

 

 この可愛さなら無敵だと思っていたが、そうではなかったらしい。

 プロテインも飲むからちょっと食べさせてくれてもいいじゃないか。

 そんな私の要求は拒否されてしまった。

 

 不満だ。

 とても不満だ。

 目の前に生姜焼きがあるだけに。

 

 しかし、と私は考える。

 プロテインを用意してくれたのは彼が私の身体の為を思ってのこと。

 さっきのルームランナーをネットで即お取り寄せしたのも、私のため。

 私の可愛いおねだりに抵抗しているのも、私のためなのだ。

 厳密には、私というより、この疑似体のためなのだとは思うが。

 

 我儘が過ぎたらしい。

 私はローテーブルの隅へと歩き、彼に背を向けた。

 

 思いっきり背中で拗ねてるをアピール。

 自分の我儘だったのさ。

 わかっているさ。

 ちょっと拗ねてるだけだからほっといてくれ。

 

「佐保……」

 

 振り向かない。

 動かない。

 頭が冷えるまで、返事も返さない。

 

 感じ悪い態度なのはわかっている。

 だが、誰だって不機嫌になることくらい許されるだろう?

 

 そして私は部屋に重苦しい空気を作り出してしまった。


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