7.授業を受けよう(3)
授業は同じ学年とはいえクラスによって進み方が少々違っており、選択科目も違うのでさっぱりわからない時間もあったが、概ね満足だった。
それよりも、彼の席に問題があると思う。
窓際のぽかぽか陽気に照らされるいい場所なのだ。
特等席と言えるだろう。
最初は真剣に先生の話に耳を傾けていた。
受験年なのだからと。
彼もちゃんと私にも読めるように教科書を開いてくれていた。
彼の左肩にもたれるような態勢で。
真横には彼の顔があって。
べったりくっついた恋人の距離というポジション。
「寝るなよ、佐保」
と囁かれる状況に、照れもした。
先生の目も気になった。
しかし。
春の日差しは全てを超越する素晴らしさだった。
なんという罪深いぬくぬく感。
せっかく学校にきたのに、授業を受けただけに終わってしまいそうだ。
これでは、テストが恐い。
ちらっとだけ、ペンギンのままだったらテスト受けなくて済むかな、などと恐ろしいことを考えてしまった。
だが、そんなことになれば、受験にしわ寄せがくるのはわかりきっている。
目の前の誘惑に惑わされてはいけないと頭を振った。
そしてやってきたのは、ランチタイム!
眠っていてもお腹は減る。
お昼休みとなった教室は人が動き、ざわめいていた。
お弁当の時間なのだから、どこも同じだ。
さてお昼は何かな?
でも、お昼は買っていない。持ってきてもないよね?
すっかり彼が食事を用意してくれるものと思っていたが。
彼の負担を少しも考えていなかったことに恐縮する。
なんという恩知らずなことだ。
確かにペンギン姿では食料を調達できるはずはないのだが。
うーん。
頭をうーんうーんと振って悩んでいると。
「ちょっと待っててくれ」
そういって彼は席を離れた。
学校に来てから私から離れるのは、トイレの時くらいだったから、今回もそうかなと思っていると。
教室の戸口に立っている男子生徒に声をかけていた。
彼の顔はこちらに背を向けているのでわからないが、相手の顔には笑みがある。
どうやら彼の友達らしい。
その様子に、少しだけ安心した。
なぜなら彼は家をでた時から誰ともまともに会話をしていなかったのだ。
軽い挨拶の言葉くらいはあるのだが、それだけだ。
私はまだ一度も彼の名を耳にしてはいなかった。




