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ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ

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7.授業を受けよう(1)

 私は彼のブレザーの内側に放り込まれた。

 ベルトのところに私が立てるよう幅のあるものを仕込んでくれていたのだ。

 そこに私は立っているわけだが。

 

 彼のブレザーは外から見ればそうとう膨らんでいるはず。

 懐に黄色い塊を抱えているのは丸わかりだと思う。

 

 鏡を見ていないが、どうみても怪しい姿でしかないだろう。

 イケメンであろうとなかろうと、これでは注目を浴びない方がおかしい。

 そう思うのだが、彼は特に気にする様子はない。

 

 彼は私の身体を左腕で支え、とても機嫌よさそうな顔で家を出た。

 玄関はオートロック。

 外には絨毯敷きの内廊下。

 予想した通りここはマンションのようだった。

 

 エレベーターを降りたエントランスは朝の通勤・通学時間を感じさせない静かさだ。

 その静かな場所で。

 

「いってらっしゃいませ」

 

 といきなり声をかけられびっくりした。

 突然で、人がいるなんて思わなかったから。

 声をかけて来たのは、いわゆるコンシェルジュというマンションの案内人のようだ。

 

 自動ドアが開き、風が流れた。

 

 ドキドキドキドキ

 

 この格好がおかしいと思われないだろうか。

 見つかって動物園行きになったりしないだろうか。

 

 私は、突然、外に出るんだと意識した。

 ペンギンの姿で。

 何かあっても、喋れないこの状態で。

 

 外が恐くなる。

 人が恐いと思う。

 全てが大きくて、全てが恐いと思った。

 

「大丈夫だよ。可愛い佐保は誰にも見えてないから」

 

 私はにょんと首を捻って背後の彼を見る。

 彼は嬉しそうに笑っていた。

 何が嬉しいのかはわからなかったが、とても、嬉しそうだった。

 

「ほら、キョロキョロしていると脱げてしまうぞ?」

 

 彼は鞄を置いて、私の頭からずり落ちたポンチョのフードを引き上げる。

 私達の前の歩道を学生や通勤者が通り過ぎて行く。

 不思議なことに誰もこちらを見なかった。

 ちらっとも視線を向けない。

 

 朝だから皆急いでいるというのもあるだろう。

 この辺りの人は、他人に注意を向ける人が少ないのかもしれない。

 

 しかし。

 独り言を言いながら立ち止っているイケメンに、なぜ誰も目を向けない?

 いくら何でも、一人くらいはいるのが普通のはずだ。

 なのに誰も見ない。

 そこには何もないかのように。

 

 これが彼のいう、見えないも同然、の状態なのだろうか。

 

 彼の説明では私だけが見えないのかと思っていたけれど、これではまるで私を含む彼が見えていないのではないかと思ってしまう。

 

 しかし、さっきコンシェルジュが挨拶をしていたのから、彼が見えていないわけではない。

 私はわけがわからないと思いながら、彼の懐の中で駅に向かう風景を眺めた。


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