5.夜が更けてきてすることは(3)
風呂場ですっかり脱力してしまった私を連れて、彼は部屋へと戻った。
別に運んでくれなくても歩けるのだが、ショックを引きずっていた私は素直に運ばれることにした。
さて夜といえば、寝るわけだが。
彼はベッドヘッドと横の壁で角になっている部分にクローゼットから出してきたらしい薄い夏用羽毛布団を丸くセットしていた。
良い奴だな。すごく。
それなのに文句ばかり言った気がする。
かいがいしく動く彼の姿を見て、しみじみと反省した。
今日は激動の一日だった。
私がペンギン姿になったのは、彼の作ったか持ってたかした訳のわからない装置の被害を被ったためなのだろうと思う。
私はいわば被害者であり、彼は加害者に近いのだろう。
だから、彼は私の面倒をみる。
それは当然と言えば当然のことなのかもしれない。
しかし、食事を分け合い、風呂で裸の付き合いをすると、情がわくというのもわかる気がした。
「佐保―、寝床ができたぞ」
彼は部屋をウロウロしていた私を持ちあげ、ふわふわの羽毛布団の上に降ろした。
枕の辺りのスペースをかなり占領している。
ベッドヘッドの板と壁に二方向を囲まれたその場所だとベッドから落ちることはないと考えてくれたのだろう。
しかし、羽毛布団は踏んで潰すと、中の羽根が折れてしまうと思うのだが。
戸惑いながら、足下の布団と彼の顔を交互に見るのを繰り返した。
仲良くなってきた気がするので、わかってくれるかもしれない!
そう思ったのだが。
「そこじゃ嫌か? やっぱり枕がある方が寝やすいよな? 枕は一つしかないから俺と一緒に寝るか」
にっこりと笑顔で私の方へと手を差し伸べて来た。
やはり、無理だったか。
全然まったく少しも意味が通じていなかった。
私は彼に背を向けその場にうずくまった。
頭をぐっと下に折り込む。
おそらくかなり小さく丸くなっていると思われる。
相変わらずすごい首の可動域だ。
「そんなに嫌がらなくてもいいだろう?」
落胆したような声が背後から聞こえた。
だが、そこには、気を許している者だからこそ漏らされる感情であることが読みとれた。
同じ皿の食事を分け合った者として、彼もまたこちらに気を許しているのだろう。
この愛らしすぎる姿とは別の意味で。
「先に寝てろよ。俺は少しやることがあるから」
彼は机へ向かった。
そして再び訳のわからない文字の羅列が流れるモニターに彼の目が注がれ、指がキーを叩き始める。
静かな部屋にトトトトと軽い打音がリズミカルに流れた。
この先どうなるのかという不安もあるが。
今はこの暖かい夜に感謝して眠ることにしよう。
私は軽快な打音を聞きながら目を閉じた。




