警報のベルが遠くから僕らを焦らせる。
次に聞こえてきたのはドンと腹に響く何かの落下音。刹那、襲いかかる衝撃と熱風。とても耐えられたものじゃなかったけれど、吹き飛ばされた先に辛うじて残っていた家の柱のうしろに隠れながら、無我夢中でしがみついた。
おさまったかと思えば迫る火の手。エモノを追いつめるヘビと化して、ジリジリと這い寄る真っ赤な舌先。抜けかかった腰を叱咤し喝を入れ、さっきまで壁だった空の出口から脇目もふらず飛び出した。
辺りに残る熱のこもった空気を吸う度、喉が焼けるように痛む。腕を振る度、肌が雷を受けたようにざわつく。
ヒューヒューと不安な音をたてる僕の呼吸を無視して、目前に広がる光景に思わず両膝をついた。水の中で悶え苦しみ叫ぶ人々、流れ黒に混じる赤。ドス黒い水貯めの中は、地獄そのものだった。
絶望の中、ようやく見上げた空に浮かぶ「きのこ雲」が、僕の内外に絶え間なく響き合う断末魔を全て飲み込み消し去った。
Fin.