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恋愛治験  作者: Pseudomonas aeruginosa ila
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 美形ってどんな表情でも絵になるって言いますけど。


 まだ少し動きの鈍い思考回路を空回し気味に働かせながらまっすぐに向けるわたしの視界の先には、見て良し(観賞向きの容貌)、聞いて良し(落ち着いたいくらでも聞いていたいと感じさせる美低音ボイス)、食べて極上(正しくは食べられる? と思わしきですけど。これはあくまで予想です)の三拍子そろった美形様がいらせられます。


 まあ、あれですね。どんな表情でも絵になる方であるのは確かだと思います。

 向けられる方とすれば、殺気込められない温和な方が良いに決まっていますけど。そういうこちらの不穏感を煽る表情は……どうしても拝まなければならないというのでしたらぜひとも絵の方でお会いしたいです。

 こっちに落ち度がないのに、悪いことしたみたいに感じちゃうじゃないですか。

 キラキラの笑顔を向けられても…居心地悪いと感じるかもしれませんね。見たって面白くありませんもの、わたし。


「すみません。昨夜のお酒が残っているのかいまいち頭が働かなくて…もう一度、お聞きしても良いでしょうか?」

 ああ…愛想笑いの所為で表情筋が引きつりますね。相手がたとえ同い年であっても、身分階級的に言えばあちらの方がずっと上。礼を尽くさねばならないでしょう。たとえこの状況でも!


 わたしが尋ねた直後、一瞬だけ彼――ローディウス・エス・ハイザーク様の表情に浮かんだのは笑みでした。屈託のない笑みではなくて、表面に張り付けるタイプのモノですね。社交辞令用とも言います。わたしと彼が直接交流を持つのは今回が初めてですから、その表情自体はおかしくはありません。過去に遠巻きに眺めた時とほぼ変わらない表情です。滞りなく物事を運ぶためには、そう言う表情をする事も必要でしょう。

 そう思うのですが、あるべきはずの完成度の高い作り笑いは、あっという間になりを潜めてしまいました。

 機嫌悪そうな表情でそっぽを向いていらっしゃいます。


 機嫌が悪いのでしょうか?

 ………………悪いのでしょうね。こんな現状ですもの。


「ローディウス様が話すつもりなさそうなので、オレが代わりでも良いですか?」

「…ええ、はい」


 むしろよろしくお願いいたします。


 そう心の中の声が聞こえてしまったのでしょうか。ハイザーク家のご子息様の隣でソファに座っていらっしゃった方が申し出てくださいました。ヒューブさんと仰る方で、ご子息様の従者さんだそうです。こちらの方も目の保養になれるタイプの方ですね。微妙にタイプは違いますけれど。

 

 正直に言えばですね、今のローディウス・エス・ハイザーク様個人の爵位は我が家と同じ子爵なのですけれど、ハイザーク家を継げば本来の爵位である公爵様になられる方なのですよ。同じ貴族の括りにはありますが、その差は大きいわけです。そんな人相手に質疑応答を行うよりは従者の方とする方がずっと楽! ご本人、わたしへの説明に気乗りではないみたいですし。


「では改めて。マナリディア・クラウ様」

「はい」

「昨夜の夜会で貴女が摂取した果実酒に惚れ薬が混入していました。つきましては治験にご協力いただきたいと存じます」

「……………………………はい?」





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