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第2話 転生したようです

おおー。結構読んでくれてる人がいるみたいで、有り難いです。




誤字脱字修正[4/9]


 新生児が初めてするウ○チは、どことなく炊きたてご飯の匂いがするらしい。

 産まれて数日の僕は、腹が空けば泣き叫び、お漏らしをすれば泣き叫んでいた。


 そして今も絶賛夜泣き中である。

 仕方のないこととはいえ、恥ずかしい限りである。


 産まれてしばらくは、それこそ「オッパイ飲んで寝んねして」をただ繰り返すだけの単調な毎日だったが、ハイハイが出来るようになると、ご飯として与えられるようになったのが、蒸かしたイモやドロドロに煮込まれて原型の残っていない、何がしかのお粥などだ。


 そうなるともう、オッパイを飲んで育っていた頃のような、芳しいウ○チではいられない。

 離乳食の始まったウ○チは、それはもう臭いのだ。


 赤ちゃんは『汚れを知らぬ天使』に例えられることもあるが、こうなるともう立派な人間である。

 それが5歳となり、大人と全く同じ物を食べるようになった僕は、罪深い人間に他ならないのだろう。





 とまぁ、下品にも、のっけからウ○チウ○チと、連呼しておりますが、僕にはアマデウスのような特殊な性癖の持ち主ではないし、ましてや天才音楽家という訳でもない。



 ―――では何者なのかというと、残念ながら、僕はまだ何者でもないのである。

 とはいえ、名前ぐらいはある。

 という訳で自己紹介を。

 こんにちは、どうも初めまして。

『小此木亮太』改め、ユノ=グランドール、5歳です。




 僕の外見は『金髪碧眼』『通った鼻筋』『円らな瞳』に『長い睫』という、コーカソイド丸出しな姿に『ネコミミ』『シッポ』という、あるイミ、カワイソ――、いや、カワイイと言って差し障りのない姿をしていた。

 まー、いわゆるネコの獣人というヤツである。

 正しくはケットシー族と人間のハーフらしい。




 そのことに僕が気が付いたのは、この世界に産まれて半年ほど経った後のことだった。

 その時、すでにハイハイの熟練度がMAXに達していた僕は、いつものように、寝かされていた揺り篭から脱出すると、部屋の中を縦横無尽に徘徊していた。


 ソファをどうにかしてよじ登ると、クッションの角をガジガジと齧ったり、置いてあった人形をブンブンと振り回したり、やりたい放題だ。

 その間、僕は終始「キャッキャッ」と上機嫌だった。


 やがて、それにも飽きた僕は、絨毯の上へと座り込み、いつものように、自分のシッポを「あむあむ」と甘噛みしていた。

 はー。落ち着くー。超落ち着くー。

 自分のシッポ、あむあむすんの、超キモチイイ。

 やがて眠くなった僕は、目をトロンとさせ、絨毯の上に丸まろうとして―――、

 ハタと気付いてしまった。

 自分のシッポ・・・・?

 ええっ? シッポ???


「うわああ! 僕、シッポ生えてるー!」


 今まで、そのことにどうして疑問を抱かなかったのか、僕は衝撃のあまり、思わず初めての『立っち』を成し遂げ、あまつさえ、二歩ほど後退(あとず)さってから、尻餅を着いたのだった。


 もちろん、その時の僕はロクに喋れもしなかったので、


「ふああっ! ほく、しほはええるー!」


 とか、微妙に聞き取りにくい声を上げるに止まっていたが。

 それを切っ掛けに、これまで忘れていたイロイロなことを思い出した僕は、まず、自分の置かれた現状を把握することから始めたのだった。



 

 ―――と、そんなカンジで僕は前世の記憶を取り戻したのだった。

 今ではホロ苦くも、良い思い出である。



 とりあえず、この世界がどういう世界かは、おいおい説明するとして、今大切なことは、僕が『可愛い』という点だろう。


 だが、残念ながら、それはあくまでも『今のところ』は、という注釈付きである。

 というのも僕の父親であるカフド=グランドールは『禿頭マッチョ』に『カイゼル髭』『ケツアゴ』という3拍子揃った厳ついナイスミドルなのである。


 僕の母親であるケットシー族のフェリスは、30歳を軽く10は上回っているというのに、可憐という形容がピッタリと来る女性だった。


 だが、母のフェリス曰く、


「あらあら。ユノは小さい頃のお父さんにそっくりねぇ?」


 と、ニコニコ笑ってそう言うので、残念なことに僕は父親似なのだろう。



 とりあえず、アゴが割れて禿げるのは確定のようだ。

 なにせ、うちの祖父(ジィ)様も、そのまた祖父(ジィ)様も、ハゲで割れてたそうだし、9歳年上の腹違いの兄であるリオン=グランドールもすでに『やや割れ』状態だった。



 一縷の希望があるとすれば、僕が人間とケットシー族とのハーフだという点である。

 もしかすると、奇跡的に母の遺伝子が僕に色濃く受け継がれ、割れたり禿げたりしない可能性はある。


 だが、そこはそれ。

 油断は禁物なのである。

 父方の、エゲツナイまでに濃ゆい遺伝子は、もはや『ケツアゴ族の呪い』とか、そういう類のものかもしれないので、余裕こいてると一気にもってかれる可能性があるのだ。

 あ。念のために言っておくけど、ケツアゴ族なんて、いないのであしからず。


 どっちにしろ、呪いだろうが遺伝の賜物だろうが、けっきょくは何らかの予防手段を講じる必要があるのは確かだ。

 なにせ、禿げて割れるのである。

 もう一度言う。禿げて割れるのだ。

 いや、正直、それだけなら何の問題もない。


 問題なのはむしろ、僕の頭上で燦然とピコピコ蠢く、ネコミミにあった。

 凄く可愛い。チョー似合ってる。反則的なまでにラブリーである。

 だが、それも5歳の今だから。


 では、どうだろう?

 年食ってオッサンになったら?

 しかも禿げてケツアゴだぞ?

 ハゲてケツアゴでネコミミって何じゃい!?

 何の3重苦じゃい!?

 こっちの人にしたら、普通のことかもしんないけど、前世の記憶バッチリ残ってる僕からしたら、もはや大惨事である。


 神様とかそんなカンジの人ーー!

 前世の記憶、直ちに消去プリーズ!


 ・・・・とか言って、ホントに消されたら困るけどな。

 まぁ。アゴが割れない努力って、どうすればいいのか、いまいち分からんものの、せめて頭皮だけは全力で労わって行こう。



 と、まぁ。将来の不安はあったものの、僕は概ね異世界(こっち)での暮らしに満足していた。

 もちろん、前世(あっち)での暮らしを懐かしく思うことはある。

 とはいえ、心残りがあるとすれば、愛読していたネット小説の続きと未消化の積みゲーぐらいのもんである。

 ユノとしての人生と天秤にかけた場合、『今』を捨ててまで執着するようなものでもない。


 ちなみに、この世界の文明レベルは地球で言うところのヨーロッパ、それも中世末頃といったところだろう。

 そろそろ産業革命なんかが起こって、植民地を求め、世界列強が新大陸を目指して外洋へと漕ぎ出しそうな雰囲気がある。


 とはいえ、この世界ディ・ファールの文明を支えている技術は、科学ではなく、魔術を下敷きとした魔導力学[マギオロジー]と呼ばれるものだったけど。




 そうなのだ。この世界には魔法が存在する。もちろんモンスターも、冒険者ギルドも存在する。

 ありがとうネコミミの神様ーー!

 でも、どうして僕、ネコなんすかねー?






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