第16話 リコも意外に、アレな人でした。
説明回。
イロイロと、とっ散らかってます。
ツッコみどころ満載。どうか、暖かい目でスルーして下さい。
誤字脱字修正[4/18] 機構杖→機工杖
リコが魔改造したクレイゴーレムは全部で6体になる。
4体が結界を張る役目のゴーレムで、後の2体は主に照明係りということらしい。
その2体にはライティングの魔術が付与されていて、おデコがピカーッと光り、まるでサーチライトのようになっている。
リコが言うには、クレイゴーレムに認識阻害の結界を付与するのが、一番苦労したとのことだ。
そもそも認識阻害の魔術は、個人を対象としたものらしく、休憩中に使って見せた魔術は4つの小石にそれぞれ、掛けた認識阻害を、図形魔術で形成した経路で繋ぐことで、魔術の対象を『個人』から『範囲』へと拡大させたものなのだそうだ。
その場を動かなければ、経路の維持も簡単なのだが、動きながらになると、途端に難しくなるようで、それを解決するのに、リコが用いた方法は感染魔術、日本で言うところの、いわゆる『丑の刻参り』に代表される呪術だ。
リコの髪の毛をクレイゴーレムに埋め込むことで、4体のクレイゴーレムとリコとの間に霊的なパスが構築され、魔術式の送信を可能としたらしい。
そのお陰で、リコが掛ける認識阻害の魔術は、クレイゴーレム4体を経由することで拡大され、その対象を個人から範囲へと変えることに成功したのだそうだ。
ま。分かったような顔して、説明を聞いていた僕だけど、正直なところ、話の半分も理解できていない。
魔道力学の専門用語連発で、何言ってんのか、チンプンカンプンだ。
ただ、ここで注意しなければならないのが、パスを繋ぎっぱなしにしておくと、クレイゴーレムが破壊された時に、そのダメージが術者に反映されてしまうということらしい。
その話を聞いて、心配になった僕だけど、
「あははー。その点は抜かりないよ。僕だって自分の身は可愛いからね」
と、リコは楽しそうに笑っている。
むー。疑う訳じゃないけど、ホントにホントだろうね?
クレイゴーレムが壊れた瞬間、リコが「ガフッ!」とかって血とか吐いたら、僕、トラウマになっちゃうよ?
思い付きとはいえ、クレイゴーレムに「付与魔術かけて」って提案したのは僕なんだから、リコにそこまでリスク負われたら、なんか心苦しいよ?
僕は、よほど不安げな顔をしていたのだろう。
リコは僕の頭をグリグリと撫でて「そんな顔しなくても、大丈夫だよユノ君」と、優しげに微笑んで見せてから、どれだけ安全だか、僕に滔々とレクチャーしてくれた。
ぐふっ。すでに、お腹一杯なんですが?
その講義、どれぐらい続きます?
詳しい話は、僕の脳みその都合上、割愛せざるを得ないんだけど、要するにクレイゴーレムが一定以上のダメージを受けると、勝手にパスが切れる仕組みになっているらしい。
その他にも、マイナス効果の付与魔術にリコが罹った場合もパスが切れるように細工したとのことだ。
うーん。確かにその措置は必要だろうなー。リコに掛けられた付与魔術はクレイゴーレムを通じて『範囲』化するんだから、たとえば、リコが恐怖の付与魔術に罹ったら、すぐさま『範囲』化され、その効果内にいた全員が術の対象になってしまう。
そうなったら、もう大惨事よ?
超泣くよ? 僕ら。
精神異常に対する抵抗力なんて、ほぼ皆無だからね。
なんせ、僕らのパーティで最年長って言ったら、リヴィで16歳だからなー。
あとの皆は10代前半だし、僕なんか5歳だよ。いや、三十路だけど。それでも泣き叫ぶよ。それどころか漏らしたりするよ。おっきい方とか。
ちなみにクレイゴーレムの維持に掛かる魔力負担はクレイゴーレムに嵌め込まれた魔晶石で賄えるらしく、僕の負担はぐっと減ることになった。
それはすっごく有り難いんだけど、魔晶石もリコの持ち出しになるんだよな。多分、ゴブリンの討伐部位ぐらいじゃ、赤字になるんじゃないかな?
クレイゴーレムに嵌め込まれている魔晶石とは、品質の一定しない魔石を錬金術を使って、精錬し、一定の品質に揃えた物を言うらしい。
僕が毎日のように『ファベル魔道具店』に持ち込んでたザンザーラの魔石は、品質も悪いうえ、内包している魔力も少ないので、それを、何十個とまとめて、精錬し、魔晶石化しないことには、使い物にならなかったらしい。
僕としては、手間暇かけて、魔晶石化しなければ使い物にならないような、クズ魔石を買い取ってくれてたんだから、感謝してもしたりないぐらいだ。
しかも、精錬作業をしてたのは、リコだって言うんだから、なんか無性に謝りたくなってきた。
なので、謝ってみると、
「あー・・・・。精錬は数こなさないと、上手くならないからね。鍛錬だと思えばどうってことなかったよ」
と、照れたように、そう言ってくれた。
けど、それって、鍛錬だと思わないとやってられなかったってことじゃないのかな?
うー。そうなると、やっぱりゴメンなさいだなー。
いつか、何かで穴埋めしよう。
―――で、サーチライトなクレイゴーレムの方にも、仕掛けがあるらしい。
なんか、球状魔法陣が搭載されているとかで、僕が敵を兵方術や精霊魔術で攻撃すると、自動で追撃してくれるらしい。
ヒートヘイズとかっていう、火属性の小ダメージを継続的に与える付与魔術だそうだ。
球状魔法陣というのは魔晶石に魔術式を封入したもので、魔道具の核にあたるとのことだ。
ちなみにリコは魔道具職人だけあって、使う武器も当然のように魔道具だ。
それも機工杖と呼ばれる類の魔道具で、フォルムは、そのまんまリヴォルバー拳銃である。
リヴォルバー拳銃の弾倉に当たる部分に、球状魔法陣が嵌め込まれている。
機工杖の機工杖たる所以は、その球状魔法陣がアタッチメント式であるということだ。
リコが持って来ている、その球状魔法陣の種類も、ポイズンブロウやパラライズバインドなど、状態異常系の付与魔術ばっかりなのは、多分ポリシーなのだろう。
付与魔術師としての。
そう思わないことには、僕のリコ像がちょっと・・・・・・。
―――にしても、リコさんって多才だなー。
それに、気前もいいし。僕のクレイゴーレムに使った魔晶石だって、球形魔法陣だって、高価な代物だ。
それを惜しげもなく、使っちゃうなんて、ある意味すごい。
まさか、店から勝手に持ち出したってことはないよね?
ちょっと心配になった僕は、そのことも、それとなく聞いてみると、リコの答えはこうだった。
「ああ。大丈夫だよ。クレイゴーレムに使った魔晶石も、ゴブリンから回収した魔石で僕が即席に作った物だからね。ちなみに球状魔法陣もそうだよ」
何ですかアナタ! 生産系チートですか。このやろう。
僕が軽くヤサグレたのは言うまでもない。
意外とチートなリコ。戦闘はからっきしですが。
次回はイヌやら猫やらが活躍したり、しなかったり。




