表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/36

第1話 転生するようです

感想とかありましたらお気軽に。

誤字やら脱字やらありましたら、ご一報のほど。



誤字脱字修正 [4/9]

 その日、小此木(おこのぎ)亮太(りょうた)は死んだ。




 いつもの通勤途中、最寄り駅まで5分の距離を亮太は歩いていた。

 ここの所、すっかり暖かくなった朝の空気は、どうにも心地よく、なけなしのヤル気をゴリゴリと削って行く。


 寝不足のせいで重い頭を抱え、いい加減、通い慣れたアスファルトの道を足取りも重くノロノロと進む。

 朝の通勤時間ということもあり、辺りにはそれなりに人の姿がある。


 何がそんなに楽しいのか、キャッキャッと笑い声を上げる数人の女子中学生や、いつも同じ電車に乗り合わせる疲れた感じの中年サラリーマンに、ヒールをカツカツと鳴らしつつノシ歩く化粧濃い目のキャリアウーマン。


 そんないつもの風景を横目に見つつ、ポケットからスマホを引っ張り出すと、亮太は現実逃避を兼ねて、お気に入りのネット小説を歩き読みする。

 通勤時間をネット小説に費やすのは亮太の習慣になっていた。


(うーあー、ダメだー。寝不足の頭じゃ、内容が全然入ってこない)


 というのも、昨夜に限ってどういう訳か、妙に目が冴えてしまって、いつもなら録り溜めてから、週末に纏めて見ることにしている深夜アニメをリアルタイムで視聴してしまったのだ。

 お陰で、もう眠い眠い。


「ふあああ」


 道端であるにも拘らず、大欠伸を垂れる亮太。


 ――と、その時のことだった。

 突然に上がった悲鳴と、けたたましいブレーキ音。

 亮太は慌てて、後ろを振り向いたものの、時すでに遅し。

 目前にまで迫ったトラックに、亮太はロクな反応も取れないまま、あっさりと轢かれ、トラックと民家のブロック塀にサンドされた。




 あまりに突然のことで、痛みを感じるヒマもなかったのは、不幸中の幸いかもしれない。

 霊体となった亮太は、轢かれてアレな感じに仕上がった自分の肉体を見下ろしていた。


「あー、こりゃダメだー。助からんわ」


 亮太は思わず呻いていた。

 医学の知識に乏しい素人でも、即死なのは一目瞭然だった。

 何せ、亮太の体はコンビニとかでフランクフルトを買ったりすると付いてくる、ケチャップとマスタードの入った容器みたいに、パキッと二つ折りになっていて、中身が盛大にハミ出ていたのだから。


 享年25歳。

 死ぬにはまだまだ若かったし、やりたいことも山ほどあった。


「けど、まぁ。体がこんだけグッチャグチャだと、諦めなしゃーないか?」


 亮太は自分でも驚くほど、すんなりと自分の死を受け入れていた。





「成仏ってどうやってするんだろうなー?」


 とか、思いつつ、亮太は自分の死体をぼんやりと眺めやる。

 亮太は、ふと死ぬ直前に読んでいた小説の内容を思い出し、おもむろに手を合わせた。


「えー・・っと。天に()します、どっかの神よ。もし実在するんなら、今度生まれ変わる時はいっそのこと異世界とかにして下さい」


 思いつくまま、テキトーに、なんかの神様とか、そういうのにお願いしておく。


「最悪の場合、人間は無理でも、せめて哺乳類、それも愛玩動物とか希望!」


 と、ふざけている内に、亮太の存在はどんどん希薄になっていく。

 いつの間にか出だした霧に、辺りが乳白色に沈み――、


「いよいよ、お迎えか?」


 少し緊張する亮太。



 ――と、亮太の見ている先で、霧が突然に逆巻いたかと思うと、突如として一人の少女が現れた。

 その少女は巫女服を思わせる装束の上に西洋風の、青を基調とした、金属製胸当(ブレストアーマー)を身に着け、腰には刀の大小を差しており、足元は脚甲(グリーブ)という和洋折衷な出で立ちをしていた。


 その少女はマロ眉に前髪パッツン、透けるような白い肌と、どことなく日本人を彷彿とさせる顔立ちをしており、その頭にはネコを思わせるミミが生えていた。


「そなたの、その願い、受理されましたー」


 唐突にネコミミ少女がそう言った。


「ええっ! 何が? ――って、異世界転生!? 

 ああっ! 違う! 騙されるな俺っ! ヌカ喜びさせといて『実は愛玩動物の方でしたー!』ってオチだろ!」


「ブブー。外れです。『実は両方でしたー!』が正解です」


 やはり淡々とネコミミ少女が、無表情のまま、顔色1つ変えることなく、そう言い放った。


「――って、何が!? つーか、そもそもアンタ誰?」


「神様ですが、何か?」


 少女が小首を傾げ、無表情のまま、そう言うのを耳の端で聞き、亮太の意識は暗転した。  






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ