日常 2
よろしくお願いします。
普段は寝過ごしてよく注意事項などを聞き逃しては雪鳴に聞いたりしているけど、今日の俺は違った。ちゃんとホームルームで礼をするときには起きていられた。
ホームルームでは当たり障りの無いことばかりつらつらと言われ続けた。
学内で美人と言われる美幸先生もほとんど棒読みと化している声を聞いていれば普通のレベルまで下がる。それ以外だったら凛としていてかっこよく見えるのだけど。
「はあ……」
今日も他愛の無い授業が始まる。そう想うだけでも一瞬で期待する心なんて砕けてしまうものだ。
幸福とは何か? 運命とは何か? なんて哲学じみたことなんて考えることも無い。そんなことを考えていたら余計につまらなくなる。
「はあ……」
もう一度溜息を吐き出し、先生の声を聞いてみる。
……そろそろ終わりそうだ。目の前に座っている俺の幼馴染は必死に何かをメモしている。
「――最後に、切花冬葉は帰りのホームルームが終わったら先生のところに来てください、以上」
「えっ?」
一瞬なんのことだかわからなかった。
それからホームルームは終わり、クラスメイトたちは授業の準備をしだした。
呆然としている俺に、雪鳴が後ろを向いて顔を覗いてきた。
「なんか悪いことでもしたの~?」
そのニヤニヤが嫌だが、今はそんなのを気にしていなかった。
特に素行が悪いということは無い。至って普通だと想うのだが。
「いや、特に悪いことはしてない。頼みごとか何かだろ」
「でもしょっちゅうホームルームのとき寝てるじゃん。今日は奇跡と言っても許されると思うんだよ!!」
「……反論は出来ない」
確かによくは寝てるが、大抵はお前が原因だからな? 精神的疲労を感じさせているのはお前だからな?
「まあどっちにしろ行ってからのお楽しみということだ」
俺も席を立って一時間目の授業の準備をするためにロッカーに向かった。
それからチャイムの音が学校中に鳴り響いた。
急いで席に戻る奴もいればゆっくりとマイペースに歩く奴もいる中、僕は後者だった。
チャイム鳴ったとしてもすぐに先生が来ないことの方が多いし、それに小走りというのはなんだかんだで地味に疲れる。
そんな感じで席に戻って不意に前を見ると、そこにはキラキラとした目でこっちを見ていた雪鳴が。
「……なんだ」
「あ、あのねえ~?」
「無視」
教科書を仕舞おうとしてガシッ、と腕を掴まれた。
「……なんだよ」
すると雪鳴は頭を下げ、何かを祈るかのように合掌し、
「一生のお願いです!! 教科書見せてください!! 忘れたんです!! このとおり~~」
「……しょうがないなあ……」
とバックに手を突っ込んでから、
「……というかどうやって見るんだよ。ずっと後ろ向いている訳にはいかないし」
「じゃあ要所だけ見せてよ!」
「今度は俺が見れなくなるだろそれ……」
そう話しているうちに、英作文担当の先生が来て授業が始まり、俺は何度か教科書を雪鳴に奪われながらも授業を受ける。
まだ隣の席は空いていた。