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かなしみのあと

作者: 八潮

  

 さざなみ 伊月いつきと、祭屋さいや 真生まお

僕らはいわゆる恋人同士、というものだ。付き合い始めてもう三年になる。

出会いはきっと平凡で、恋をしたきっかけだって平凡で。付き合うようになるまでの過程も、それから今までの時間も、何も特別なことはない。実に平凡に、愛し合っている。

 平凡な僕らは、他の人たちと同じように今日のような(今日は12月25日。クリスマスだ。)イベントを、二人だけで過ごす。特別なことはないけれど、そんな「平凡」はとても幸せだ。

 さて、今まで僕らが平凡であることを繰り返してきたけれど。

実は、たった一つだけ、僕らには他の人たちと少し違うところがある。平凡な僕らの、唯一の非凡。


   

     僕らの会話に、音はない。

 


 今日も僕らは静かな部屋にふたりきりなのだ。


 僕は生まれた時から喋れなかったし、真生は小さいころからずっと吃音だから、話すという行為が苦手で。「周りと違う」ということは苦痛であり引け目であった。辛いことも経験した。

 でもおかげで二人が付き合えたのだからそれでよかったんだ、とかかっこつけてみる。



 まあ、つまりはただの惚気だ。それ以外の何物でもない。僕は、ふたりで映画を見てる途中で寝てしまうような真生が可愛くて仕方がないのだ。

 僕に体重を預けて、気持ちよさそうに寝息をたてる真生の頭を撫でながら、ちらっと時計を見て時間を確認する。


 そろそろ、夕食の時間である。


 真生を抱えて寝室に運び、ベッドに寝かせて毛布をかける。そっと電気を消して、キッチンへ。

少し準備をして、二人で作っておいた料理を温め直し、盛り付け、テーブルへ運ぶ。

匂いにつられて、真生も起きてくるだろう。

リビングの明かりを落としたところで聞こえた足音。ほら、ね。

 真生がドアを開けるまで、さん、に、いち、

 ぜろでスイッチを入れる。

 ドアを開けたまま、そのままの格好で真生は固まった。どうやら成功したようだ。


 暗闇で輝くのは、色とりどりの光。


 我ながら綺麗にできたと思う。真生に近づいて、スマホを見せる。

   「メリークリスマス、真生。」

 そう打っておいた。そしたら真生は、泣きそうな顔をして、小さな両手でスマホごと僕の手を包む。

そして、「伊月、ありがとう」と呟いた。

その言葉はやっぱり吃っていて、聞き取りづらかったけれど。

 

 

 少し抱きしめ合って、名残惜しさを感じながら電気をつけて。

 「特別」から「日常」に、戻る。

 

 さあ、少し冷めてしまったけれど、ご飯を食べて、二人で寝よう。

平凡で幸せな今日を過ごして、平凡で幸せな日常にもどろう。あの、音のない日常に。



 また、君に音が戻る日を待ちながら。




かなしみのあと、ふたりぼっちの君と僕。


そんな感じをイメージしました。


もはや吃音とか失語とか関係ないかもしれぬ。

そして後半の疾走感が……ひどい……。

スランプ中にかくとダメですね。


なにはともあれ、ここまで読んでくださりありがとうございました。

またどこかでお目にかかれたなら幸いです。


              八潮。

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