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スキルアップ  作者: 冠樹
4/4

始動

 三人そろって初戦闘を無事に勝利で飾った後、俺たちはしばらくの間スキルのレベル上げを行った。 そして現在、最初の街への帰り道を駄弁りながら消化中である。


 突然だが、このゲーム…『ネクストゲート』では、所謂スキル制を採用している。


 スキルごとにレベル上げに必要な行動、時間、量等が全く違う。同じ近接職が同じ敵を1体倒したとして、俺とノープとではスキル構成の差から、成長の効率が違ってくるということだ。当然、回復役を買って出たカエデとは、もっと差が出てくる。つまり何が言いたいのかというと…




「レベルが上がらねえ…」


「だ、ダイジョブだよお兄ちゃん!ほ、ほら、武器と防具のマスタリーは私たちと変わらないレベルだし、ね?」


「そ、そうよシー君!たまたま私たちが戦闘系のスキルに偏っていただけで、ほかの部分で結局プラマイゼロに…」


「シー君いうなし。それにお前らは二人だけ先にスキル結晶手に入れて、生産スキルゲットしてたじゃねーか。つーか、後半は俺から離れて範囲攻撃アーツでプチ無双してたから、レベルも差が付いてるだろうし」



 俺の恨みがましい視線から逃げるように先に進む二人。リーチの長い武器で楽しそうにモンスターをジェノサイドしまくり、予定よりも長く狩りを続けてしまったのだ。この後は最初の街で生産スキルの確認をする予定だったが、あまり時間がとれないかもしれない、そう告げると二人が申し訳なさそうな顔をするので慌ててフォローする。


 こうして愚痴ってはいるが、実際の所俺はあまり気にしていなかった。なぜなら俺のアイテム袋には狩りの終盤に手に入れたスキル結晶が入っているからだ。恐らく二人は俺とレベル差が出ることを考えて、新スキル入手の機会を作ろうとしたのだろう、と。


 そう彼女たちに伝えると、ノープはその場でクネクネしだし、カエデの方は「その発想は無かった」みたいな顔をした後に慌てて笑顔で取り繕っている。そういえばこの幼馴染は時折こちらがドン引きするぐらいズボラだったり外道だったりするが昔から矯正しようと頑張った結果「あきらめましょう」と脳内の太っちょおじさまが言ってきたのでこの話はノーカウントで。




 若干パーティーメンバー内の関係に溝ができた気がしたが、ともかく俺たちは無事に街に戻ることができた。そのまま街の中心にある広場に足を向けると、ログインしたときよりもさらに多くの人で混雑しているのが見えた。




「おいおい、すげーことになってんぞ」


「どうする?街の外に出て生産の練習する?」


「ねえ、二人とも、周りの人たち変じゃない?」


「「変?」」




 兄妹で顔を見合わせてから周囲の様子を探ると、確かに皆顔色が悪い。どこかで喧嘩まで始まったのか、怒号まで聞こえてくる。俺は近くにいた集団に声をかけた。




「なあ、ここで何があったんだ?」


「あ、ああ………ログアウト………出来ないんだ………」


「「「は?」」」




 ポカンとする俺たちにその人は淡々と説明してくれた。


 曰く、この広場で休んでいたら突然一部のプレイヤーが「ログアウト出来ない!」と騒ぎだしたので

皆で確認すると確かにログアウト出来ない状態らしい。

 リアルでタイマー付きでログインした人達も、設定時間になってもログアウト出来ないらしい。

 運営に問い合わせをしたいがゲームの外と連絡がとれないらしい。

 街の外で死に戻りをした人がいるので小説のようなデスゲームの確率はかなり低いらしい。

 『らしい』ばかりなのはこの情報が全て又聞きだかららしい。




――――――ぴんぽんぱんぽーん――――――




「「「!?」」」




 突然、気の抜ける音が広場に鳴り響く。


 何事かと辺りを見回すと、広場の中心に集団でプレイヤーが現れる。どうやら広場以外にいた人たちが集められたようだ。動揺する俺たちに、どこからか声が掛けられる。




『あー、皆さんハジメマシテコンニチハ。ワタクシ所謂ハッカーでして、現在では誘拐犯も兼業しております。あ、被害者はもちろん皆さんですのでご安心ください』




 全力で安心出来ないんだが




『えー、現在、皆さんのログアウト機能は私が凍結しており、このゲーム内に閉じ込める形になっています。あー勿論、どこぞの小説のように、ゲームで死んだらリアルでぽっくり…なんてこともアリマセン。何故こんなことをするのか、と疑問に思う方もいらっしゃるでしょうが、うむむ、そうですねー、一言でいえば――――――実験でしょうか』




 周囲のざわめきが大きくなる。




『あー、はい。皆さんのお怒りもごもっともですが、実験の内容は秘密なんですよねー、秘密実験。だってその方が面白い…正確なデータが得られるじゃないですかー』




 うん、こいつ言い直しやがった。なんだ面白いデータって。




『あ、ダイジョーブ。お時間は取らせませんですハイ』




 お、早めに解放してくれるのか?




『皆さんの『ブレインギア』に細工をして、内部の時間を一千倍以上に加速しますので、リアルの時間はそれほどかかりませんよ!やったね皆さん!』


「「「おいやめろ」」」


『ははは、皆さんノリがいいなー。あ、実験はこのゲームを誰かがクリアするまで続けます。といっても、ネトゲにクリアなんて用意されてないのが基本ですし、私の方で勝手に決めちゃいますね』




 む、クリア条件か。無茶なものでなければいいが。




『条件1、用意した全てのボスを討伐する。

 条件2、用意された全てのゲートを解放する。

 この二つの条件を満たすと最終エリア「ネクストゲート」が解放されてエンディング、皆さんもリアルに帰れます。』



 結構時間がかかりそうだな。何日かかるんだ……




『―――なお、私の趣味と独断と偏見と欲望でこの世界に「食事」と「睡眠」の概念を追加しました。それに伴いスキル、アイテム、各街にプライベートルーム及びNPC、メニューに掲示板、ステータスに満腹度が追加されます。あ、説明はめんどいのでメニューのヘルプと後は気合で』




 うお、なんか一気に追加されたな。あー、ダメだ、頭がパニック状態だわ、後で確認しよう。




『ほかに私に何か聞きたい事や要望があったらメニューから連絡を。私も皆さんと一緒に加速してますからご安心を。あと、正確にはこの後午前0時から加速が始まります。皆さんの体はすでに病院が保護しているはずなので万が一のときでも対応できるハズ。アフターフォローばっちりですね!ああ後…』




 そこで今回の事件の元凶は締めの言葉を口にする。




『私のことは今後『GM』とお呼びください。では皆さん、良い冒険を』




 こうして混乱するプレイヤー達は、否応なくこの世界に放り出されたのであった。


 無論、俺たち兄妹+1も………

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