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CLEAN  作者: 東 守


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5/7

懐かし味と


「飯田様、来週は主張とのことですがお日にちのどうされますか?」

「あーそうでした。じゃぁ月曜日に来てもらえますか?」

「畏まりました」

「教えてくれてありがとう、ご飯駄目にするとこでした」


 本当にいい人。これが専務のお友達だなんて信じれないと田中はお茶を淹れながら考えていた。


「そうだ、アカちゃんにCLEANで実験的にうちのシステム使ってもらってるんだけど田中さん何か聞いてる?」

「??赤ちゃん?ですか?」

「あっ!ごめんなさい、銅田の渾名です。今のはなしで!殺される…」


 ア・カ・ちゃん!あの専務をアカちゃん!!  

 田中はCLEANに入ってこんなに心が晴れ晴れとした瞬間が訪れるとは思って無く、早く事務所に帰ってスキップしながら言いふらしたい気持ちでいっぱいになった。

 そんな田中とは反対に飯田は顔が真っ青だった。何か弱みでも握られているんだろうか。


「ふふっ、畏まりました」

「すいません、小学生の頃からの友達でつい…」

「とても仲がよろしいんですね」

「仲いいのかな?そうだといいけど」

「その…これは内密にしていだけると助かるのですが、」

「大丈夫ですよ。僕のことも秘密にしといてくれるんですし」

「ありがとうございます。その、弊社のスタッフに「友人からの依頼なんだけど入れる?いや、入れ」と押し切っていたのが凄く以外で印象深かったもんですから」

「えっ!もしかして無理言っちゃった?」

「いえ、とんでもないです。通常通りの無理のない勤務に皆つけております」

「そう?銅田なら脅しの材料集めて無理難題言ってそうだから」

「それは…否定できませんね」

「ははっ!会社でもそんななんだ。よく社会人やれてるよ」


 本当に。


「それで「友人」と言うワードにも皆驚いてまして」

「あー、確かに僕以外に友達いなさそう」

「なのでとても仲がいいんだろうなと」

「そっか…うん、仲良しです」


 飯田は何だか懐かしむように微笑んだ。




 ◆




小学生時代


「飯田の父ちゃんって芸人なんだろ?」

「芸能人とか家にくるの?」

「サインちょうだい!」


 学校が嫌いだった。特に毎年のクラス替え時のお決まりのこの会話。極めつけには


「面白いことやって」


子供は無邪気に残酷だ。何故親が芸人だと子供が面白いんだ意味が分からない。    

 しかしそれ以上に嫌いなものがあった。


「チャイム鳴ったでしょー、早く席につきなさい。日直さんお願いします」


 自分の前の席の生徒に号令を呼びかける、甘い声で発情期のメスの目で微笑む先生。子供ながらに悍ましいと毎日気持ち悪かった。


「きりーつ、れい、ちゃくせーき」

「ありがとう銅田くん」


 出席番号1番銅田、2番飯田、彼らは前後の席。飯田は銅田の頭越しに見える獣の顔が大嫌いだった。


 次の休み時間、銅田が標的になっていた。

「銅田くんってあの大きな御屋敷の子なんでしょ?」

「お金もちだ!お父さん何やってる人?」

「地底人」

「はっ?じゃぁお母さんは」

「海底人」

「ははっ!じゃぁいつも迎えに来てる大きい兄ちゃんはなんだよ?宇宙人かよ」

「お前は馬鹿なのか?高木は人間に決まってるだろ」

「はっ?!お前が言い出したことだろ!」


 新学期早々にこれだ。銅田はこの頃から捻くれていた。でも強ち間違ったことは言っていない、彼の両親は地底学者に海底学者なのだ。各々の研究が近年の多発している地震研究に生かされており、世界的にも評価かれている凄い人たち。常に実地調査のため国内だけでなく世界中に出向いているため年に数回しか会わないらしいが。

 言い合いになってる男子を遠くから見ている女子は 


「でもやっぱカッコいいよね」 

「お金持ちで頭も良くってカッコいいなんて最高じゃん」

「性格はちょっとキツイけどそこもいい」


とメスになりかけていた。


 そう、性格は捻くれていたが銅田は顔がいい。圧倒的に。幼少期から女性人気も凄まじかったが、一部の男性からも熱い視線をもらっており一度誘拐されかけた過去もある。そんな事から執事の高木が毎日送迎している。正直私立のお金持ち学校に通えばいいのにと問うと「どこでも同じ年数嫌でも過ごさないと駄目なんだか家から近い方がいいだろ」とのこと。なんとも彼らしい考えに高木と共に苦笑いした。


 銅田と飯田は家が近く、低学年の頃は登下校の班が一緒で仲良くなった。きっかけはよく覚えてないが、今では放課後はうちでよくゲームをしたり夕食もよく高木と一緒に食べている。銅田曰く高木がうちでどう過ごせばいいかあたふたしているのが最高なんだそう。今も母さんの手伝いをしてくれている高木が可哀相だ。 


「アカちゃん、あの先生ヤバくない?大丈夫?そこ左ね」

「まぁ視線はうっとうしいかがまだ害はないからな。いざという時あの手の人間は役に立つし、今はほって置く。あとそのあだ名はやめろ!!」

なんの役に立てるんだ。

「えー、イントネーションの問題?あ↓か↑ちゃんならいい?その絵をタップして」

「何故そうなる!そして何故案内している!さては先に進めたな!」

「ごめんって、父ちゃんのやつ見ちゃったんだよ」

「…親父さん忙しいのにしっかりゲーマーだな」

「それしか楽しいことがないんだから許してあげて」


 飯田のゲームは全部父親のものだ。飯田自身はやるより見るのが好きで、こうやっていつも銅田にやらせている。


「もうこっちはクリアしたのか?」


 そして銅田もしっかりゲーマーであった。銅田は大人になった今でも飯田父と共に画面の向こうの世界を救っている。


「あなた達そろそろ切り上げて食べなさい!」

「はーい。アカちゃんセーブポイントは奥の、」

「たがら誘導するな!そしてその渾名を辞めろっ!!」

「えー、美和ちゃんも喜んでたのに」

「……姉さんの前だけはいい」


 銅田はシスコンであった。6つ歳の離れた姉の美和は親代わりにのような存在で、銅田はそれはそれは大層可愛がれた。


『アカちゃん?!あーん!そうよその通り!あなたは私達のウルトラ可愛いベイビーだもの!なんて素敵な渾名なの!スキップでママとパパに伝えに行くわ!』


 姉のフェアリーの力で海も渡れるんじゃないか?と当時の銅田は考えるくらいにはしっかりとシスコンだった。 


「そいえばお姉さん来週帰って来るんだっけ?」

「!そうだ!高木、空港まで迎えに行くぞ!」

「学校があるので勝代様がお迎えに行くそうですよ」

「なんで大叔母さんが」

「美和お嬢様が帰ったら勝代様の料理が食べたいと仰ったみたいでして、空港近くの市場にそののまま一緒に買い物をされるようです」


 姉の美和は現在イギリスに留学中。1年ぶりの再会に銅田は浮足立っていた矢先にこれだ。銅田の母の味が飯田家の味になるように、美和の母の味は大叔母の味になる。


「勝代さん来るの?じゃぁ私もお邪魔したいなー」


 飯田母は勝代によく料理を教わっていた。つまり銅田と飯田の母の味は勝代の味にもなっていた。







「ごちそうさまでした。煮物美味しかったです!」

「ありがとうございます」

「やっぱり皆さん勝代さんに料理習ってるんですか?」

「私はそうですね。管理栄養士からの指導も受けている者もいます」

「やっぱりそうなんだ。何だか懐かしい味だなって思って」

「勝代さんとも顔見知り何ですか?」

「えぇ。うちの母はよく勝代さんに料理を教えてもらってたんです。なのでお袋味っいうか婆ちゃんの味って感じでほっこりしちゃって」

「じゃぁ今度勝代さんの会いた日があれば調整しておきますね」

「いやいや、態々そんなことは。お気持ちだけで。忙しくしているとは聞いているので」

「そうですか?」

「はい、よろしくお伝え下さい」

「畏まりました」 


 食器を片付けて業務終了。挨拶を済ませお暇する田中。次の依頼先へ向う。 


_ピンポーン


「はーい」

「山緑様、お久しぶりでございます。CLEANの田中と申します」

「えっ!」

「夜分にすみません。今回も抜き打ちでチェックしてほしいとご依頼がありまして」

「あの…明日とかでは」

「…抜き打ちですので」

「…はい」


 ドアが開き中を覗くと、田中はゴミをゴミを見るような目で見ていた。




 翌朝、飯田はエントランスでコーヒーでも飲もうかと部屋を出ると、ゴミを抱えてる山緑とラウンジで遭遇した。


「おはようございます」

「おはようございます」

「片付けてるの?偉いね」

「いやー、ちょっと溜め込んじゃいまして。お恥ずかしい」

「ふふっ、男の子の一人暮らしだもん、そんなもんよ。多かったらコンシェルジュに頼めば?」

「いやー、叔父が契約者なんでコンシェルジュのサービスを使うのが気が引けるっていうか、不相応な感じがして」

「大学生だもんなー」

「昨日CLEANの人から見守りサービス?の抜き打ちチェックされて…今頑張って掃除してます!」

「ははっ!そのままCLEANに頼めば良かったのに。僕週一で使ってるよ」

「先月使って、結局叔父にお金出してもらう形になっちゃったんでそれは避けたくて」

「そっか。学生には少し高いよね」

「バイト代では払えない額でしたね…」

「あっ、定食屋さん行ったよ!美味しかった!また行くね」

「ありがとうございます!是非」


 エントランスに着くと……居た。

先日よりは眼圧は弱めていたが、高身長の高木が直進してくると少し風圧を感じた。


「おはようございます。飯田様、山緑様」

「…おはようございます」

「ふふっ、おはようございます」

「山緑様、お預かりしますね?」

「はい、お願いします…」  


 高木は競歩で去って行った。

 山緑は部屋の片付けをするため部屋に戻り、飯田はエントランスでコーヒーを頼んだ。

 少しすると高木が戻ってきた。


「高木さん、お疲れ様です」

「飯田様、今日はお仕事は?」

「来週主張だから今日を休日にしちゃいました」

「左様でございますか」

「昨日"懐かしい顔"をみたからかな?何だか高木さんに会いたくなっちゃて。コーヒー飲みに来ました」

「…それは」

「大丈夫ですよ。銅田から『びっくりする顔が行くが、別人だから安心しろ』って前もって聞いていたので」

「…申し訳ございません」

「高木さんが謝ることないでしょ。まぁ名前が"美和"って聞いたときはちょっと引きましたけど」

「あの、坊っちゃんは、」

「深くは聞きませんよ…。私が何も知らないことが銅田との約束ですから」 


 それ相応の願いをいくつも叶えてもらっている。それは自分の知りようのない場所で。


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