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暗闇の虚構  作者: 一宮 沙耶
第3章 洗脳

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8話 発覚

私は、ホテルの自室で朝起きてTVをつけた途端、そこから流れる言葉に凍りつく。

佐々木と楠が殺人等の罪で逮捕されたとアナウンサーが話していた。

きっかけは病院から逃げ出した莉音が警察に逃げ込んだことだという。


自分はいつの間にかドラッグ依存症になったが、自分から手を出してはいないと言う。

その時、一緒にいた柚月という女性に飲まされていたのではないかと話しているらしい。

その後も、柚月からもらった薬で、禁断症状から逃れることができたと話す。

柚月という偽名を使っていて良かった。


しかも、その頃、母親の消息が分からなくなり、柚月に殺されたのではないかと言う。

あなたは、母親の肉を食べて美味しいと笑っていた莉音のあどけない顔が目に浮かぶ。

まだ、あの時食べたトマトスープが母親の肉だとは気づいていないのだと思う。


莉音の発言を受けて、莉音の自宅への警察の捜査が始まる。

そして、お風呂や、キャリーバックをルミノールで調べたところ、大量の血痕が見つかる。

佐々木を問いつめたところ、自分と柚月という女性と共謀して母親を殺したと自供した。


警察に追い込まれれば、そんなことまで自白するんだと驚く。

佐々木は自信に満ち溢れていたけど、実は小心者だったと今更ながらに気づいた。

早く佐々木から離脱しておいて良かったと胸を撫でおろす。


その後、その周辺を捜索すると、次々と犯罪が明るみに出る。

餅を喉につまらせて死んだとされる楠の父親も楠に殺害されたことが分かる。

賄賂のことは、現時点でどこにも出ていない。政治家に揉み消されたのかしら。


現在、警察は柚月という女性を重要参考人として探しているという。

ただ、柚月を写した写真等は発見されておらず、娘の証言からモンタージュが作成された。

その顔は、私とはかなり違っていて、私が逃走するには都合がいい。


TVでは、あれだけ威厳に溢れていた佐々木がパトカーの中でうなだれている。

ジャージを着て、手錠をかけられた佐々木は、悪どい1人の犯罪者でしかなかった。

私は、あんな姿を他人に見せたくない。


早く逃げないと。ホテルをチェックアウトし、新宿の街に走り出す。

大通りでタクシーの乗り込んだとき、警官がラクシーの窓を叩く。どうして警官がここに?


「宮崎 -香、殺人の容疑で逮捕する。」


私の名前を調べ上げている。逃げなければ。

でも、こんな時のために、私は用意していた。

1台でビル1棟を吹き飛ばすだけの威力があるスマホ型爆弾。


私は、ボタンを押して、タクシーの窓からスマホ型爆弾を警官の方に投げる。


「はやく車を出して。」

「でも、警察が・・・」

「今、爆弾を投げたの。早くしないと、ここは大爆発するわよ。」


私は、運転手の首にナイフを突きつける。運転手は観念し、猛スピードで走り出した。

逃げるとは予期していなかった警官は慌てて追いかけようとしたけど、もう遅い。

その場は、眩しい光に包まれる。


ビルは崩れ去り、大勢の人が犠牲になった。

私は、タクシーをビルの陰で停止させ、ドアを開け、前席に乗り込む。

運転手は手が震え、額から滝のような汗が流れている。


「どうか助けてください。お金はいりませんから。あなたのことも何も話しません。」


怯える運転手の首を容赦なくナイフで切り付ける。血がフロントガラスに飛び散った。

こんな所で、情けなんてかけていたら私が捕まる。

そんな冷徹な感情が、これまで私を助けてきた。私はタクシーを降り、再び大通りに出る。


爆破された新宿は大騒ぎとなっているのだと思う。

ここから白い煙が高層ビル群に立ち込め、救急車やパトカーのサイレンが鳴り響く。

現場から1kmぐらいのこの場所でも、人々は巻き込まれないようにと逃げ惑う。


横を走って逃げる人の顔を見ると不思議な感覚に襲われた。

これまで笑っていた人々が恐怖に包まれ、一緒にいた人を押し退け逃げていく。

あなたと一緒にいたいなんて話していたことが嘘のように。


結局、人間なんて、表面だけは相手を思いやっているように見えるけど、結局は自分勝手。

自分が助かれば、周りがどうなっても関係ない。

まあ、私もそうだから、逃げるために人を殺しても、周りと同じことをしているだけ。

何も問題はない。


さあ、この混乱を利用して逃げよう。逃げるなら今しかない。

大通りに出たときにトラックが横を通る。

手を挙げると、そのトラックは止まった。


「おねえさん、大丈夫。血がいっぱいついているけど。」

「さっきの爆破で目の前の人が怪我して血を浴びちゃった。でも、私はなんとか大丈夫みたい。こんな危ない所から早く逃げたいんだけど、乗せてくれない。なんだったら、お金も払うから。」

「分かったけど、どこに行きたいの?」

「逆に、お兄さんは、どこにいくの?」

「練馬だけど。」

「それはちょうどいい。練馬に私の親がいるから、そこに行けば、なんとかなる。今回は、仙台から東京の実家に帰郷してきたところだったのに、こんな事件に巻き込まれてしまった。悪いけど、連れて行って。ごめんなさい。」

「しょうがねえな。まあ、乗れよ。」

「その前に、血を浴びた洋服を着替えたいんだけど、着替えとかない? こんな姿を親がみたら、倒れちゃうでしょう。」

「俺の作業着くらいしかないけど。」

「助かる。じゃあ、2分ぐらいでいいから、後ろの荷物の中で着替えさせて。助けてもらってこんなこと言う立場じゃないけど、着替える所、見ないでね。」

「見るはずないだろう。分かったから、早くしてくれよ。」

「ええ。」


私は、作業着に着替え、5億円の札束が入ったキャリーバックとともに座席に乗り込む。

横には、優しそうな若い男性が混乱する新宿を横目に運転をする。

私が、警察に追われているなんて想像すらせずに。


私は、練馬に行き、トラックから降りる。

銀行のから現金を持ち出した。生きるためのお金はとりあえずある。

当面は、目をつけられないように静かに暮らそう。

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