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暗闇の虚構  作者: 一宮 沙耶
第3章 洗脳

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4話 トマトスープ

「楠の奥様、邪魔なんだけど、そろそろ消してもらおうかと思って。お前、そういうことは得意だろう。」

「まあ、あの女、気に食わなかったし、ずっと暇だったから、ちょうどいい頃ね。そういえば、楠は今週末から、あんたと、海外のセキュリティソフト会社の視察でシリコンバレーに行くのよね。1週間だったっけ。」

「ああ。」

「海外旅行か、いいな。ナパのワインとか楽しそうじゃない。」

「お前が奥様を殺しやすいように、家から楠を連れ出すんだから、そういう言い方をするなよ。まあ、ワインぐらいは毎晩、飲むんだとは思うけど。まあ、それはいいとして、その1週間の間に奥様を消して、楠には失踪したと言えるようにしておいてくれ。」

「任せておいて。それで、あの女は、どういう理由で失踪したと言えばいいの?」

「妻を取り戻そうと必死になると、俺の計画から遠ざかるのも困る。楠には、奥様が命だからな。ただ、この前、2人で言い争っていたから、それで楠を嫌いになって、しばらく距離をおきたいから家を出て行った、自分を探さないでというメッセージを残しているというのがいいかな。」

「分かったわ。」


さて、どう殺そうかしら。

母親の肉を娘の莉音が食べる、そういうのもいい。

お料理作るのは大変そうだけど、私、お料理するのは得意だし。


「娘の莉音はどうする?」

「そうだな。母親がいなくなって大騒ぎされるのも困るし、柚月に任せるよ。」

「じゃあ、そうするわ。莉音のことも、洗脳に使えるように仕組むわね。」

「それはありがたい。」


楠達は、土曜日にサンフランシスコに旅立つ。

私は、奥様に寂しい思いをさせないようにと、この家に1週間いると楠に伝えた。

それはありがたいと楠は快諾をする。海外出張は久しぶりだと楠の声が弾む。

奥様を殺すために家から出されるのだということも知らずに無邪気に楽しそう。


奥様は、騙されないでねと佐々木の顔を不安そうに見つめる。

でも、最後はどうにでもなるという自信も溢れていた。

楠は、奥様にキスをして成田に旅立つ。これが奥様との最後の時間だとも知らずに。


お手伝いさんは、すでに私が飼い慣らしている。

というより、奥様の指示を受けていると言えば、怖がって何も言わない。

この1週間は私が奥様のお世話をするからとお手伝いさんには休みを取らせた。


莉音が学校に出かけると、奥様と私はリビングでくつろぎ、紅茶の上品な香りに包まれる。

そして、奥様がトイレに行っている間に、睡眠薬を紅茶に入れた。

トイレから戻った奥様は、私と楽しそうに会話を続ける。


佐々木のことは疑っていても、女性の私はそこまで悪いことはしないと信じている。

いえ、私を下僕に見て、逆らうなんて微塵も考えていないのだと思う。

5分ぐらいすると、急に睡魔に襲われたと言い始めた。


「どうしたのかしら。すごく眠くて。」

「旦那様の海外出張の準備とか、昨晩は遅くまで大変で寝れていないんじゃないですか。それとも、1週間も旦那様と離れるのが嫌で眠れなかったとか? まだラブラブなんだから。」

「そんなんじゃないわ。でも、ごめんなさいね。」

「生理の関係とか、女性の体は複雑だから、こんなことありますよ。私も、急に睡魔に襲われることもあるし。あまり心配しないで、そんな時は、ぐっすり眠ればいいの。ちょうど、莉音さんも学校に行ったし、お休みしましょう。その間に、私は、この家を掃除して、洗濯物を干しておくから。」

「柚月さんがいて助かったわ。お言葉に甘えて少し寝ることにするわね。」


私は、心配するふりをして奥様を見下ろした。もうぐっすりと寝ている。

さあ、これから殺人タイムね。私は、奥様を背負ってお風呂に連れていく。

そして、湯船の中に奥様の顔を埋めた。


息ができずに苦しかったのか、いきなり目覚め暴れたけど首を両手で抑える。

5分ほどすると、体から力が抜けて動かなくなった。

それから、昔使っていたメスを取り出し、体を切り裂く。


この瞬間がなんとも言えない。これまで人間の形をしていたものが崩れ去っていく。

人間なんて、所詮、カルシウムのフレームと肉が集まったもの。

どんなに権力があっても、横柄でも、こうなったらみんな同じ。

ここまでくれば抵抗もできないから、私の思いのままにできる。


まず、胸を切り裂き、心臓を取り出す。

暖かく、鼓動するこの心臓は神秘な感じがして好き。

抱きしめた後、お風呂の床に放り投げる。そのうち鼓動は止まる。


次にお腹を切り裂き、卵巣と子宮を取り出す。

ユニークな形態で、女性の象徴。

彩葉を女性として操り、動かしてきた張本人。足で踏み潰してやった。


内臓を取り出して切り開き、中に消化しきれていないものがあるから、綺麗に洗う。

胃には酸が入っているから、私の体に触れないように慎重に洗う。

内臓がなくなった体は、魚の内臓を取り除いたような姿で、骨、贅肉と皮だけになる。


後は、腕、足、首を切り離し、それぞれ、骨と肉に分解していく。

電子ノコギリもあるから、1時間もあればバラバラにできる。


頭は面倒くさい。頭蓋骨をハンマーでカチ割り、脳を取り出す。

脳も具材にするから、骨の破片が入らないように慎重に扱う。

この脳に意識があったらどう思うだろう。でも目も耳もないから情報が入ってこないか。


そして一気に顔の皮を剥ぎ、ドクロはハンマーで砕いて粉々にする。

骨は綺麗に洗い、同じ長さに切って、明日のゴミの日に生ゴミで捨てられるようにする。


肉はブロック状にして、脳と細かく切った内臓とともに鍋に放り込む。

大体、こんな感じで素材は揃った。見た目はただの肉。


まずバターでジャガイモ等の野菜とともにお肉とかを焼く。

この肉が焼ける匂いがたまらない。彩葉も美味しく食べられるように育ってきた。

野菜がしんなりしてきたのでホールトマトを入れ、崩しながら全体を調味料でまとめる。


ローリエを入れて3つの鍋を今から煮込めば、莉音が帰ってくるまで7時間は煮込める。

私は、鼻歌を歌いながら、10分ごとに鍋をかき混ぜ、水を足していく。

4時ぐらいには、調味料で味の調整をして、それなりの味になっているはず。


あ、目玉が浮かんでいる。さすがに、目玉があると莉音も気づくから取り除いた。

他にないかしら。舌もあるけど、これはスライスしておけば、肉が入っているといえる。

髪の毛はすでに処分したし、注意して調べたけど、そのぐらいだと思う。


私は、あんな卑しい女の肉なんて、気持ち悪くて味見はしない。

だけど、お料理は得意だから、こんな感じなら大丈夫だという自信がある。

味見は莉音にさせればいい。きっと、美味しいと言うに違いない。

18時に莉音が帰宅して、お料理を出す。


「今日はね、トマトスープなの。とっても美味しくできたから食べてみて。」

「お母様はどこ?」

「今日は、どこか外出するって。どこかは聞いていないけど、お母様からは、あなたへの夕食を作っておいてくださいと言われているだけ。莉音さん、さあ食べて。」

「普段は、あまり外出とかしないけど、お父さんがいなくて、柚月さんがいるからかしら。じゃあ、今夜は羽を伸ばして、ゲームざんまいかな。あ、お母様には言わないでね。」

「もちろんよ。じゃあ、楽しい夜を過ごしてね。」

「そうする。ところで、このスープ、白子も入っているのね。珍しい。でも、これって美味しいわ。柚月さんは、お料理がお上手なのね。」

「ありがとう。」


莉音は美味しい、美味しいと食べて、そのままお風呂にいく。

母親の肉を食べているなんて、全く思うこともなく。

私は、莉音が食べている間も、ずっと煮込みつづける。

莉音は食べ終わり、自分の部屋に戻っていく。


夜の22時になると、水分が少なくなったスープに入った肉と骨をビニール袋に入れる。

そして、冷蔵庫に保存しておく。


翌朝、莉音が学校に出かけると、冷蔵庫のビニール袋を2つのキャリーケースに納める。

それを持って、車で10kmぐらい先にある公園に運ぶ。陽の光が眩しい。

老人、カップル、家族、いろいろな人が池の周りを散歩し、和やかな雰囲気が溢れる。

笑い声が響き渡る。


とても穏やかな公園でキャリーケースを公園のトイレに運ぶ。

そして、和式の便器に放り入れ、水で流す。

10回も立て続けに流したら不審がられるから、奥で誰も周りにいない公園を選んだ。

そう、あの女は汚物でしかない。

見た目は、ドス黒い肉の塊だけど、トマトソースの美味しそうな匂いが漂う。


それを2回続けて、ビニール袋もゴミ箱に捨て、全ての証拠を流し去った。

身軽になり、気分は爽快。でも、もう一つやることがある。

莉音をドラッグで薬漬けにすること。いえ、昨晩からすでに着手している。

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