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暗闇の虚構  作者: 一宮 沙耶
第3章 洗脳

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3話 自供書

俺は、柚月と、重厚なガウンを着て、ブランデーをワイングラスで傾ける。

約束通り、こんな姿でも柚月には一切手を出していない。

柚月は、それよりも利用できる価値があるから。


ただ、豊満に膨らむ胸と、スベスベとした肌には目を離せない。

柔らかくぷっくりとした唇も魅力的だ。

この欲求不満を抑えるのは大変だ。金を使ってどこかの女性で解消しよう。


「投資はまださせていないみたいだけど、上手くいっているの?」

「全て計画通りだ。単純に数億円もらったって意味がないだろう。全て吸い上げないと。」

「だったらいいけど。奥様は警戒心を強ているわよ。少しスピードアップした方がいい。」

「あの奥様は本当に目障りだな。いずれ、柚月に処分してもらうと思う。」

「まあ、いいタイミングが来たら言って。残酷に殺してあげるから。」


俺は、金を巻き上げるためなら情報収集を怠らない。

楠は、父親から譲渡された会社を拡大するために政治家に賄賂を送っている。

全貌はまだ把握できていないが、大臣クラスにまで多額の賄賂を渡しているようだ。


3人の息子達は、父親から経営者としての器があるのか試されて会社を譲渡される。

その会社をどのぐらい成長させるかという試験として。

一番成長させた息子はグループのトップに君臨できる。


それ以外の息子達は、譲渡された1社だけを経営して生計を立てていく。

雄一は長男として、絶対に負けられないと焦るものの、経営者としての器ではない。

次男、三男は、長男は敵ではないと軽視して、2人で必死にしのぎを削っているのだろう。


弟達に支配され、いつも頭を下げ続けるなんてプライドが許さないと顔に出ている。

焦った人を騙すのは簡単。単純な罠にも気づかず、俺の策略にはまってしまう。

まずは賄賂をネタにゆすり、俺の言うことならなんでも聞くようにさせてやる。


最初に、楠のスマホにウィルスを忍び込ませて乗っ取る。

俺を信用して、スマホをテーブルに置きトイレに行くとか、不用心にも程がある。

まあ、そんあ楠だから、俺は何でも仕掛けられる。


その後、定期的に「お前の悪事、政治家への賄賂のことを知っている」と画面に表示する。

楠は、明らかに怯える表情をし始めた。差出人が誰かわからない方が不気味でいいだろう。

爆弾が爆発する画像と音声を出したら、のけぞり、悲鳴をあげている。本当に小心者。


「何かあったのですか? 顔色が悪いですよ。」

「そんなことはないです。」


目は空ろで、明らかに何もないようには見えない。

俺の作戦は効果てきめん。手が震え、ペンもまともに握れない。

足がガクガクと震え、立っていられないのか、ソファーに倒れ掛かる。


「そんなはずないでしょう。何でも相談してみてください。私は、楠さんの事業パートナーなんですから。」

「そうですよね。では、佐々木さんを信用してお話ししますが、実は、過去にしてしまった間違いで脅されているんです。このことは、内密にお願いします。」

「間違いって、なんですか?」

「賄賂です。」


楠は過去の賄賂のことを話し始める。

ただ、個々の賄賂の詳しいことは口が固く、なかなか聞けなかった。


「賄賂ですか。誰でもやっていることじゃないですか。どの政治家も、問題が発覚しないようにもみ消しているだけで、日常的に横行しているんですから、そんなに心配しないでください。分かりました。私のつてで、その件は口封じをしましょう。」

「そんなことができるんですか?」

「私の人脈は広いですから、こんなことを解決する知り合いもいるんです。」

「助かった。このことが父に知られたら、私は楠家を追い出され、無一文になってしまうところだった。これからも、ずっと、私のことを支えて欲しい。」

「当然じゃないですか。もう、私たちは一つなんですから。」


楠は、父親から捨てられることが一番の弱み。そこをつくのが一番いい。

どうして一つなのかなんて言わなくても、私のことをこれっぽっちも疑っていない。

あまりにバカなやつで、可哀想になる。


真っ暗な中で唯一の小さな光を見つけたような、希望を探す顔つきで私を見つめる。

そして、とんでもない俺の提案に乗ってしまう。

わずかに疑問を持っても、もう俺のことを疑う力は残っていない。


「そのために、この紙に、過去に賄賂を送った方のお名前と、日時、金額、依頼事項を記載して、最後にサインと押印をしてください。それを元に、脅迫している悪人を突き止め、口止めをしっかりとさせていただきます。」

「その書類は本当に必要なのか? 過去に、民自党の坂本先生に500万円を渡したということだけではだめかな。賄賂を送った相手にも、秘密だと言われているし。」

「だめです。今回、脅している相手を特定するためにも、必ず必要なものなのです。それがなければ、これからずっと脅され、お父様にも伝わってしまうかもしれませんよ。」

「分かったよ。今晩作成して明日に渡す。」

「いえ、早く進めたほうがいいです。1時間でまとめてください。よろしくお願いします。」

「分かった。すぐに作成する。」


1時間後、30件、累計で4億円の賄賂の内容と署名、押印がある紙を渡される。


「これで本当に全部ですね。」

「全部だよ。」

「絶対ですね。1件でも漏れていたら、お父様に伝わってしまうかもしれませんよ。」

「分かった。分かった。どうしても口止めされていた1件を追加するよ。これで全部だ。」


楠は総理大臣への1億円の賄賂を追記する。

これで、楠が賄賂を自供した証拠が手に入った。しかも、署名と押印付きで。

それにしても、年商10億円の会社のために5億円の賄賂とは驚く。


会社の中で裏金を貯めるためにも、簡単なことではない。

悪事はもっとあるに違いない。

接待費の水増しとかは脱税にもなるし、横領なんて犯罪も社長自らしているかもしれない。


「よかったです。これで、楠さんは安泰です。早速、脅している奴を探します。」


ほっとした楠の顔に笑顔が戻る。

バカなやつだ。さっきより、立場が最悪になっていることに全く気づいていない。

まあ、そんなやつだから、俺は儲かるんだが。


私が楠の部屋を出ていこうとドアを開けると、奥様がいて、私に笑顔でお辞儀をする。

表面では微笑んでいるが、俺のことを睨んでいることが滲み出る。

私は、気づかれないように、さっきの書類を入れたカバンから目をそらした。

奥様は、それを敏感に感じ取り、なにか2人でやったに違いないと舌打ちをする。


奥様は、楠の部屋に入り、何やら、いい争っているような声が聞こえた。

「警戒」という言葉もしばしば聞こえる。

でも、賄賂のことは恐ろしくて奥様には伝えられないはず。

この書類のことは、楠と俺の間だけの秘密にしておける。


俺たちのやりとりをどこで聞きつけたのか、奥さんが楠に釘を刺しているのだろう。

でも、もう遅い。やはり、1時間で作成させたのは良かった。

明朝にしていたら、奥様が止めていただろう。俺には、いつもいざという時に勘が働く。


俺のことを疑い、騙されているのではないかと楠に事あるごとに忠告しているに違いない。

あいつも勘がいい。俺が接近することを許しても、警戒は緩めない。

ただ、自分が楠のことをコントロールできると過信しているところが欠点だ。


いずれにしても邪魔ということには変わりはない。

俺の計画を邪魔する奴は排除しなければならない。

そのためには、柚月に奥様を殺害させよう。柚月はそういうことが得意だから。

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